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第18話 #君の名前を呼ぶ練習
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昼下がりの屋上。
冬の風が、校舎の隙間を抜けていく。
文化祭の後片づけも終わって、学校全体が一息ついたような静けさだった。
手すりにもたれながら、俺は空を見上げる。
雲がゆっくり流れていくのを、ただぼんやりと。
そこに、足音。
振り向かなくても、誰か分かった。
「やっぱり、ここにいましたね」
「……探偵か」
「観察眼です」
ひよりが、少し息を弾ませて笑った。
その笑顔を見た瞬間、昨日の“練習”が頭をよぎった。
あのあと、夜になっても、ずっと。
「今日の練習、テーマを変えましょうか」
「またかよ」
「“名前を呼ぶ練習”です」
「……お前、どこまで練習好きなんだ」
「だって、昨日のはすごく良かったから」
「褒めるな。恥ずかしいから」
「じゃあ、照れる練習でもします?」
「それはもうできてるからいい」
ひよりがくすっと笑った。
そのまま、柵の向こうの空を見上げる。
「ねえ、真嶋くん」
「ん?」
「どうして、私のこと“七瀬”って呼ぶんですか?」
「いや、それ以外に呼び方あるか?」
「“ひより”って、呼んでくれたら嬉しいです」
「……急にそう言われても」
「じゃあ、練習しましょう」
「お前、練習万能説か」
笑いながら、心臓が変に跳ねてる。
名前ひとつ呼ぶだけで、こんなに息が詰まるのか。
「……ひより」
言葉にした瞬間、空気が変わった。
風の音が止まったように感じた。
ひよりは、驚いたように目を丸くして――そして、
ゆっくり笑った。
「はい、100点満点です」
「採点すんな」
「でも、“ちゃんと届いた”感じがしました」
「そりゃ……名前だからな」
「ううん。気持ちがです」
そう言って、ひよりが少しだけ顔を赤くした。
たぶん、俺も同じ顔をしていた。
───────────────────────
StarChat #君の名前を呼ぶ練習
【校内ウォッチ】
「屋上で名前呼びの練習をする二人。
風よりも静かな距離がそこにあった。」
コメント:
・「#名前呼び破壊力」
・「#空気が甘すぎる」
───────────────────────
「……誰だよ、撮ってんの」
「きっと悠真くんですね」
「アイツ、文化祭後も張り込みかよ」
「でも、悪くないです」
「なんでだ」
「だって、“誤解”って、
見られることで、少しずつ本当になる気がします」
ひよりの言葉に、思わず笑ってしまった。
「お前、やっぱ変わってんな」
「真嶋くんがそう言うと、褒め言葉に聞こえます」
「……お前な」
沈黙。
風がまた吹いて、
ひよりの髪が頬に触れた。
「……ひより」
「はい?」
「もう、練習じゃなくてもいいかもな」
「え?」
「名前、ちゃんと呼ぶの」
ひよりの目が、一瞬だけ潤んだ。
「……嬉しいです」
「そうか」
「じゃあ、私も」
ひよりが、ほんの少し照れた顔で口を開いた。
「蒼汰くん」
その呼び方が、風よりやわらかく響いた。
放課後。
スマホを開くと、トレンドの一番上に見慣れたタグがあった。
───────────────────────
StarChat #君の名前を呼ぶ練習
【桜井先生@担任】
「名前を呼ぶということは、
心のドアをノックすること。
開ける勇気があるなら、もう恋は始まっている。」
コメント:
・「#先生の詩が止まらない」
・「#名前呼びから始まる恋」
───────────────────────
「……先生、完全にまとめ役だな」
「いいまとめです」ひよりが笑う。
「お前、また見てたのか」
「はい。
だって、“ひより”って呼ばれるたびに嬉しくて、
それをもう一回見たくなるんです」
笑いながら、
俺は空を見上げた。
名前を呼ぶだけで、
こんなにも世界が変わるなんて――知らなかった。
冬の風が、校舎の隙間を抜けていく。
文化祭の後片づけも終わって、学校全体が一息ついたような静けさだった。
手すりにもたれながら、俺は空を見上げる。
雲がゆっくり流れていくのを、ただぼんやりと。
そこに、足音。
振り向かなくても、誰か分かった。
「やっぱり、ここにいましたね」
「……探偵か」
「観察眼です」
ひよりが、少し息を弾ませて笑った。
その笑顔を見た瞬間、昨日の“練習”が頭をよぎった。
あのあと、夜になっても、ずっと。
「今日の練習、テーマを変えましょうか」
「またかよ」
「“名前を呼ぶ練習”です」
「……お前、どこまで練習好きなんだ」
「だって、昨日のはすごく良かったから」
「褒めるな。恥ずかしいから」
「じゃあ、照れる練習でもします?」
「それはもうできてるからいい」
ひよりがくすっと笑った。
そのまま、柵の向こうの空を見上げる。
「ねえ、真嶋くん」
「ん?」
「どうして、私のこと“七瀬”って呼ぶんですか?」
「いや、それ以外に呼び方あるか?」
「“ひより”って、呼んでくれたら嬉しいです」
「……急にそう言われても」
「じゃあ、練習しましょう」
「お前、練習万能説か」
笑いながら、心臓が変に跳ねてる。
名前ひとつ呼ぶだけで、こんなに息が詰まるのか。
「……ひより」
言葉にした瞬間、空気が変わった。
風の音が止まったように感じた。
ひよりは、驚いたように目を丸くして――そして、
ゆっくり笑った。
「はい、100点満点です」
「採点すんな」
「でも、“ちゃんと届いた”感じがしました」
「そりゃ……名前だからな」
「ううん。気持ちがです」
そう言って、ひよりが少しだけ顔を赤くした。
たぶん、俺も同じ顔をしていた。
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StarChat #君の名前を呼ぶ練習
【校内ウォッチ】
「屋上で名前呼びの練習をする二人。
風よりも静かな距離がそこにあった。」
コメント:
・「#名前呼び破壊力」
・「#空気が甘すぎる」
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「……誰だよ、撮ってんの」
「きっと悠真くんですね」
「アイツ、文化祭後も張り込みかよ」
「でも、悪くないです」
「なんでだ」
「だって、“誤解”って、
見られることで、少しずつ本当になる気がします」
ひよりの言葉に、思わず笑ってしまった。
「お前、やっぱ変わってんな」
「真嶋くんがそう言うと、褒め言葉に聞こえます」
「……お前な」
沈黙。
風がまた吹いて、
ひよりの髪が頬に触れた。
「……ひより」
「はい?」
「もう、練習じゃなくてもいいかもな」
「え?」
「名前、ちゃんと呼ぶの」
ひよりの目が、一瞬だけ潤んだ。
「……嬉しいです」
「そうか」
「じゃあ、私も」
ひよりが、ほんの少し照れた顔で口を開いた。
「蒼汰くん」
その呼び方が、風よりやわらかく響いた。
放課後。
スマホを開くと、トレンドの一番上に見慣れたタグがあった。
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StarChat #君の名前を呼ぶ練習
【桜井先生@担任】
「名前を呼ぶということは、
心のドアをノックすること。
開ける勇気があるなら、もう恋は始まっている。」
コメント:
・「#先生の詩が止まらない」
・「#名前呼びから始まる恋」
───────────────────────
「……先生、完全にまとめ役だな」
「いいまとめです」ひよりが笑う。
「お前、また見てたのか」
「はい。
だって、“ひより”って呼ばれるたびに嬉しくて、
それをもう一回見たくなるんです」
笑いながら、
俺は空を見上げた。
名前を呼ぶだけで、
こんなにも世界が変わるなんて――知らなかった。
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