【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ

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第24話 #真実の投稿

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 夜の校舎。
 窓の外には街の灯りが点々と並び、
 グラウンドはもう真っ暗だった。

 部活帰りの声も、どこか遠い。
 俺は教室に一人で残っていた。
 机の上に置いたスマホが、静かに光っている。

 ――#秘密の恋人
 ――#七瀬ひより二股疑惑

 どちらのタグも、まだトレンド上位に居座っている。
 誰かが面白半分で作った投稿。
 けど、放っておけば“真実”になるのがこの世界だ。

 沈黙してたら、ひよりが一人で傷つく。
 だから、もう黙らない。

 指が勝手に動いた。
 StarChatの投稿画面を開く。
 画面の白が、やけに眩しい。

【真嶋蒼汰@2-B】
「噂は全部、誤解だ。
七瀬は何も悪くない。
俺が勝手に、好きになっただけだ。」

 ――送信。

 一瞬の静寂。
 次の瞬間、通知が爆発したように鳴り続けた。

───────────────────────
StarChat #真実の投稿
【校内ウォッチ】
「真嶋、ついに“好き”を明言!」
コメント:
・「#男前すぎる」
・「#公式告白」
・「#誤解から始まる恋の真実」
───────────────────────

「……バカだな、俺」
 でも、少しだけ肩の力が抜けた。
 ひよりを守るとか、正すとか、そんな大げさなことじゃない。
 ただ――“好き”を自分の言葉で言いたかっただけだ。

 翌朝。
 登校すると、教室が妙に静かだった。
 その中心に、ひよりが立っていた。
 両手でスケッチブックを抱えて。

「……見ました」
「……ああ、見たか」
「ありがとうございます」
「礼はいい。迷惑じゃなかったか?」
「迷惑だったら、今ここにいません」

 そう言って、ひよりはスケッチブックを開いた。
 そこには、昨日描いた絵――
 “二人の影が重なりそうで重ならない”あの絵が、
 少しだけ変わっていた。

 今度は、
 影がほんの少し重なっていた。

「修正しました」
「……直すの早ぇな」
「だって、昨日“真実”が届いたので」

 ひよりの笑顔が、
 本当に“届いた”って感じがした。

 昼休み。
 悠真が机に肘をついて笑う。
「お前、完全に主人公じゃん」
「誰がラブコメの台本書いたんだよ」
「現実が台本越えてるんだよ」
「うるせぇ」
「にしても、“好きになっただけ”ってセリフ、
 シンプルすぎて逆に刺さったわ」
「……狙ってねぇよ」

 ひよりがこちらを見て、
 静かに手を振った。
 その仕草が、“誤解”も“炎上”も全部溶かしていくようで。

 放課後。
 StarChatを開くと、トレンドの一番上には新しい投稿があった。

───────────────────────
StarChat #真実の投稿
【桜井先生@担任】
「“誤解”を恐れて沈黙するより、
 “真実”で傷つくほうが、人は優しくなれる。
 今日の授業は、青春。」
コメント:
・「#先生の授業受けたい」
・「#沈黙より真実を」
───────────────────────

「……先生、また完璧にまとめてきたな」
「先生の締めコメント、いつもラストっぽいですね」ひよりが笑う。
「俺たち、まだ続いてんだけどな」
「はい。誤解の物語、更新中です」

 ひよりの笑顔。
 そのすぐ隣にいるだけで、
 “誤解でもいい”じゃなく――
 “本当でいたい”と思えた。
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