【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ

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1章

6話「呼び覚まされる血、激突の魔夜」

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警鐘の響きが砦全体を震わせる中、私は息を整えながら外へと飛び出した。薄い月明かりに照らされた林地は、風が枝葉を揺らし、不穏な音を立てていた。

「ノクティア!」

背後から鋭い声が響く。振り返ると、カイラス司令官が真剣な面持ちで追いかけてきた。

「一人で行くつもりか? 相手は普通の魔獣ではないぞ!」

「はい、存じております。しかし、この魔力は私と同じ源を持つものです。私が行かなければ、防ぐことは難しいでしょう」

彼は短く舌打ちしたが、私の決意を察したのか、それ以上の制止はなかった。

「なら俺も行く。お前を一人で行かせるほど甘くはない」

彼の瞳には強固な意志が宿っていた。私は静かに頷き、二人で北門を抜け、深い闇の中を進んだ。

森を進むにつれ、空気中の魔素が濃密になっていく。やがて開けた場所に出ると、その中心には巨大な魔法陣が広がっていた。その中央で歪な黒い結晶が脈動し、不気味な光を放っている。

「あれは……セフィラの中核魔導石?」

私の呟きにカイラスが怪訝な顔をする。

「中核魔導石?」

「はい。我が一族が使うセフィラ・ラグナレウムは、あの魔導石を媒介にして発動するものです。ただ、あの石は封印されていたはずなのですが……」

その瞬間、結晶が鋭く共鳴し、強力な魔力の波動が私たちを襲った。

『ようやく来たな、我が血族よ』

鋭い声と共に、黒いローブを纏った人影が姿を現した。

「あなたは……?」

「我はレヴィア。セフィラを極めし者にして、お前と同じ血を引く者だ」

フードの奥から覗く瞳は暗く鋭く、静かな自信と強烈な敵意に満ちていた。

「私を待っていたのですか?」

「当然だ。真のセフィラを解き放つためには、お前の血が必要となる」

レヴィアの言葉に背筋が冷たくなる。この場は明らかに罠だ。

「ノクティア、下がれ!」

カイラスが剣を抜き、一歩前へ出た。だが、その瞬間、レヴィアがわずかに手を動かすだけで彼は激しい魔力の波動に吹き飛ばされてしまった。

「カイラス様!」

倒れた彼へ駆け寄ろうとするが、強固な結界が私の前に立ちはだかる。

「来るがいい、ノクティア。その秘めた力、私に見せてみろ!」

レヴィアが両腕を広げ、挑戦的な笑みを浮かべる。私は震える手を握りしめ、静かに彼女を見据えた。

(逃げられない。ここで戦うしか……)

深呼吸をし、自らの内に眠る力を呼び起こした。鼓動が速まり、魔力が体を満たしていく。

「――《律動解放・セフィラ・ラグナレウム》!」

黄金色の魔法陣が足元に広がり、強烈な閃光が辺りを包み込む。

「いいぞ! それが我々一族の真の姿だ!」

レヴィアが歓喜に満ちた声を上げる。魔力が増大し、木々が激しく揺れ動く。

しかし、私は落ち着いていた。

「違います。私の力は誰かを傷つけるためのものではありません……この力は、守るためにこそ使います」

私が指を伸ばした瞬間、金色の光が放たれた。だが、レヴィアはその光を平然と受け止める。

「……これは、あの連中か。追手が早いな。仕方ない、今日のところは退くとしよう。また会おう、ノクティア」

レヴィアが周囲の気配を感じ取ったように眉をひそめると、黒い結晶と共に瞬時に闇に溶けるように消え去った。

結界が消えた途端、私は倒れたカイラスの元へと急いだ。

「カイラス様、大丈夫ですか?」

彼はゆっくりと目を開け、微かに笑った。

「……お前は、本当に最強の魔導士だな」

私は静かに微笑んだ。

「いいえ、まだまだです。でも、もう二度と“無能”とは呼ばせません」

夜明けの光が私たちを照らし、私は新たな決意を胸に刻んでいた。

――これから始まる真の戦いに、私は私の意志で立ち向かう。
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