【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ

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1章

10話「輝ける覚醒、王都にて」

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 闇と光がぶつかる遺跡の奥、空気が張り詰め、石壁が魔力の余波できしみを上げていた。レヴィアは黒い結晶を手にし、狂気とも呼べる熱を帯びた瞳で私を見つめる。

 「お前にその資格があるのか――この力を、本当に制御できるのか、ノクティア!」

 彼女の叫びとともに、黒い魔力が蛇のようにうねり襲いかかる。私は恐れず、正面から杖を突き立てる。

 「あなたとは違う。私は、誰も支配しない。誰にも踏みにじらせない。私の力は“守る”ためにある!」

 《律動解放・セフィラ・ラグナレウム》――黄金の魔法陣が床一面に広がり、私の魔力が渦を巻く。
 黒と金が正面衝突する。遺跡全体がうなるほどの轟音と閃光。

 「ッ……まだだ! お前の“甘さ”など、世界では生き残れない――!」

 レヴィアの魔力がさらに激しさを増すが、私は自分の心に問いかける。
 (私は、もう“弱い自分”には戻らない)

 両手で杖を強く握り締め、今まで誰にも言えなかった思いを叫ぶ。

 「私は――“無能”じゃない。私は私自身の価値を、ここで証明する!」

 光がさらに強く輝き、黒い結晶を包み込む。

 「……なぜ、そこまで――!」

 レヴィアの叫びに、私ははっきりと答えた。

 「あなたも、本当は分かっているはずです。力は、誰かを救うために使える。あなたにだって、過去に“守りたいもの”があったでしょう?」

 一瞬、レヴィアの顔が苦悩に歪む。

 「私は――っ……!」

 光と闇が大きくうねり、やがて黒い魔力がかき消された。遺跡の天井が崩れ始め、瓦礫が降り注ぐ。
 私はとっさに守護障壁を展開し、レヴィアの前にも魔力の壁を張る。

 「……なぜ、助ける?」

 「誰であっても、私は見捨てません。それが私の“選んだ道”だから」

 しばしの沈黙――
 レヴィアは、深い息を吐き、黒い結晶を懐にしまい込む。

 「……今は退く。だが忘れるな、ノクティア。お前が道を誤った時、私は必ず現れる。私たちはもう、対等な“魔導士”同士だ」

 そして、レヴィアは崩れかけた遺跡の闇に身を溶かすように姿を消した。

 辺境の空に夜明けの光が差し込む。
 私は自分の鼓動が、確かな誇りと解放感で満ちているのを感じていた。

 (これで、私も前に進める……)

 遺跡の出口に向かうと、遠くから王都の伝令が馬を駆ってやってくるのが見えた。
 「ノクティア・エルヴァーン! 王都より召喚状!」

 ――そして、物語は新たな舞台へと続いていく。

* * *

 王都からの伝令が去った後、私は静かに砦へ戻った。
 戦いの余波は辺境の空気すら変えたのか、砦の兵たちは私の顔を見るなり、息を飲んで敬意と畏怖を込めた眼差しを向けてきた。

 「ノクティア様……本当に、ご無事で……」

 「遺跡が、まるで浄化されたみたいだと皆、噂しています」

 その言葉に、私はただ微笑み返すだけだった。
 かつて“無能”と陰口を叩いていた彼らの声が、今では感嘆と信頼に変わっている――その変化が、何より心に沁みた。

 やがて、カイラスが私のもとに現れる。
 「伝令を見た。王都からの呼び出し……避けては通れないな」

 「ええ。……でも、今の私は怖くありません」

 彼は小さく頷き、そっと私の肩に手を置いた。

 「お前の帰りを、ここで待っている」

 「ありがとう、カイラス」

 すぐに旅支度が整えられ、私は監察官として再び現れたリュゼルとともに、王都への馬車に揺られた。

* * *

 王都――かつて私が息苦しさと疎外感しか感じられなかった白亜の城壁が、今はまるで異国の景色のように見えた。
 馬車の窓越しに広がる石畳と、王宮の尖塔。街の人々は私の存在に気付き、さまざまな思惑の目を向けてくる。

 「辺境で“覚醒”した魔女が帰ってきたらしい」

 「無能だったはずが、今や王都でも語り草よ……」

 かつての蔑みの声が、混じり気のある敬意と恐れへと変わっている。

 審問会が開かれる玉座の間は、いつにも増して重い空気で満ちていた。
 王族、魔導士長、貴族、そして王都の有力者たち――全員が、私を「疑い」と「不安」の目で見下ろしている。

 「ノクティア・エルヴァーン。辺境にて発生した魔力異常と、貴殿の魔導行使の事実について、本日ここに正式に問う」

 王都魔導士長の厳しい声が響く。

 私は、堂々と壇上に進み出た。

 「異論はありません。私の全てを、ここでお見せします」

 魔導士長が命じる。「《セフィラ・ラグナレウム》をここで発動しろ。ただし、制御できなければ、その時点で資格を失う」

 私は迷いなく杖を掲げる。

 「《律動解放・セフィラ・ラグナレウム》」

 空間がきらめく黄金色の魔法陣で包まれ、空気が一変する。
 会場の誰もが圧倒され、誰ひとり声を出す者もいない。

 (これが、私の歩んできた道、今の私の全て――)

 魔法を見事に収束させると、場内は水を打ったような静けさに包まれた。
 ようやく、老齢の審問官が声を搾り出す。

 「これほどの力……。まさか、あの“無能”と呼ばれた娘が……」

 貴族のひとりが低く呟く。「どれほど我々が見下していたか、思い知らされたな……」

 第二王子リュゼルは、私の方をしっかりと見据え、初めて素直な声で告げた。

 「ノクティア……君は、王都にとって誇るべき存在だ。私は間違っていた」

 私はその言葉を静かに受け止め、微笑んで答える。

 「ありがとう、殿下。でも、私は誰のためでもなく、自分自身のためにここまで来ました」

 やがて審問会は結論を下す。
 「ノクティア・エルヴァーン。貴殿は王都に危害を加える意志なきこと、並びに魔導士として唯一無二の資質を有することを認める」

 帰り道、私は馬車の窓から王都の空を見上げる。
 かつてこの街で“無能”と囁かれていた自分が、今や最強の魔導士として認められた。

 (これが、私の選び取った“答え”――)

 私の新しい旅路が、ここからまた始まる。
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