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2章
15話「終焉の影、約束の光」
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砦の会議室は、いつになく張り詰めていた。
北方の魔力異常の報告から一夜、私は連絡官たちの前で地図を広げ、現状の全てを語った。
「……魔素流の変動は、すでに辺境だけの問題じゃありません。セレスタも王都も結界の維持が限界に近い。もはや“小手先の封印”では追いつかないわ」
私の言葉に、王都の術士もセレスタの使節も黙り込む。
レオナートが一歩前へ出て、静かに口を開いた。
「ノクティアさん、私たちはどんな役割でもお受けします。セレスタの術士団も総動員で対応にあたります」
「ありがとう、レオナートさん。あなたたちの力が必要よ」
私は頷き、砦の窓から外を眺めた。兵士たちが忙しく結界の強化作業を進めている。
カイラスが隣で腕を組みながら言う。
「決断はお前に任せる。だが無理だけはするな」
「わかってるわ、カイラス」
エイミーが心配そうに私を見ている。私は微笑みかけて、「ありがとう、エイミー」と声をかけた。
* * *
その日の午後、現地調査のため再び北の森へ向かう。
エイミー、レオナート、王都術士班、数名の兵士――結界用の荷馬車も連れていく。
森は重苦しい霧に包まれ、土の匂いさえ鈍い。
地面に転がる黒い結晶、木々の根元に絡む奇妙な魔素の流れ。
「……魔素流が、何かに引き寄せられているみたいです」
エイミーが測定板を手に小声で言う。
「このままじゃ、もっと広がるわ。中心を探して結界を張り直す」
私は先頭に立ち、森の奥へ。やがて、魔力が最も濃く歪む場所にたどり着く。そこには、複雑な魔法陣と、脈動する黒い結晶。
私は杖を構えた。「この“核”を、完全に封じない限り、被害は止まらない……!」
「ノクティアさん、危険です! 私も一緒に……」
「エイミー、あなたは後衛で結界の補強をお願い」
「……わかりました!」
私は全身の魔力を集中させ、詠唱を始めた。
「《律動解放・封印環》!」
光の帯が結晶を包み、黒い魔素が空へと噴き出す。
だがその直後、闇の中から風が巻き起こる。思わず身を引くと、木々の間からレヴィアが現れた。
* * *
「――また会ったな、ノクティア」
レヴィアは黒いローブを揺らし、鋭い眼差しでこちらを見据えていた。
その顔には、敵意と焦りと、わずかな憐憫が交じっている。
「どういうつもり? あなたが“核”をばら撒いているの?」
私の問いに、レヴィアは静かに首を振る。
「私ではない。だが、この混乱を止めたいなら――お前自身が“選択”しなければならない」
「選択?」
「“守る者”か、“壊す者”かだ。アムネリスは、お前の答えを見ている」
その名を聞いて、私は思わず身を強張らせた。
「アムネリスは何を望んでいるの?」
「……私にもすべては読めない。ただ一つ言えるのは、“誰かの正義”で世界を塗り替えても、痛みは必ず残るということだ」
レヴィアの声は、いつになく低く苦しげだった。
「ノクティア、私はお前に勝ってほしいと思っている。同時に……お前が壊れていく姿は見たくない」
「ならば――あなたも私と一緒に戦って!」
レヴィアは一瞬だけ寂しげに目を伏せ、次の瞬間には木々の奥へ消えていった。
* * *
「ノクティアさん、大丈夫ですか?」
エイミーが駆け寄る。その背後でレオナートが剣を抜いたまま周囲を警戒している。
「ええ……でも、ただの魔獣や魔素災害だけじゃない。“人の意思”が働いてる。油断しないで」
「はい!」
私は砦への帰還を即断した。
* * *
砦に戻ると、予想よりはるかに早く追加の報せが届いた。
「ノクティア殿、王都の魔術局から新たな指示です! “セフィラ本流の情報を開示せよ”と……。さらに、王都とセレスタ合同の“魔導緊急会議”が召集されるそうです!」
兵士の声は、緊迫と戸惑いに満ちている。
私は地図を広げ、決意を新たにした。
「これからは私たちの戦いが、全ての未来に直結する。エイミー、レオナートさん――力を貸して」
「もちろんです、ノクティアさん!」
「セレスタ術士団も全力で支援します」
皆の言葉を受け、私は小さく頷いた。
* * *
その夜、私は自室の窓辺に立ち、暗闇を見つめていた。
風の音に混じって、どこか遠くで鐘の音が鳴ったような気がした。
自分の意志で扉を開けて、歩みを進めなければならない。
そのとき、扉の向こうでカイラスの声がした。
「ノクティア。――会議の準備はいいか」
「すぐ行くわ」
私は深呼吸し、最後に空を見上げた。
曇り空の向こう、まだ誰も知らない未来が待っている。
新たな戦いの扉が、今まさに開かれようとしていた。
北方の魔力異常の報告から一夜、私は連絡官たちの前で地図を広げ、現状の全てを語った。
「……魔素流の変動は、すでに辺境だけの問題じゃありません。セレスタも王都も結界の維持が限界に近い。もはや“小手先の封印”では追いつかないわ」
私の言葉に、王都の術士もセレスタの使節も黙り込む。
レオナートが一歩前へ出て、静かに口を開いた。
「ノクティアさん、私たちはどんな役割でもお受けします。セレスタの術士団も総動員で対応にあたります」
「ありがとう、レオナートさん。あなたたちの力が必要よ」
私は頷き、砦の窓から外を眺めた。兵士たちが忙しく結界の強化作業を進めている。
カイラスが隣で腕を組みながら言う。
「決断はお前に任せる。だが無理だけはするな」
「わかってるわ、カイラス」
エイミーが心配そうに私を見ている。私は微笑みかけて、「ありがとう、エイミー」と声をかけた。
* * *
その日の午後、現地調査のため再び北の森へ向かう。
エイミー、レオナート、王都術士班、数名の兵士――結界用の荷馬車も連れていく。
森は重苦しい霧に包まれ、土の匂いさえ鈍い。
地面に転がる黒い結晶、木々の根元に絡む奇妙な魔素の流れ。
「……魔素流が、何かに引き寄せられているみたいです」
エイミーが測定板を手に小声で言う。
「このままじゃ、もっと広がるわ。中心を探して結界を張り直す」
私は先頭に立ち、森の奥へ。やがて、魔力が最も濃く歪む場所にたどり着く。そこには、複雑な魔法陣と、脈動する黒い結晶。
私は杖を構えた。「この“核”を、完全に封じない限り、被害は止まらない……!」
「ノクティアさん、危険です! 私も一緒に……」
「エイミー、あなたは後衛で結界の補強をお願い」
「……わかりました!」
私は全身の魔力を集中させ、詠唱を始めた。
「《律動解放・封印環》!」
光の帯が結晶を包み、黒い魔素が空へと噴き出す。
だがその直後、闇の中から風が巻き起こる。思わず身を引くと、木々の間からレヴィアが現れた。
* * *
「――また会ったな、ノクティア」
レヴィアは黒いローブを揺らし、鋭い眼差しでこちらを見据えていた。
その顔には、敵意と焦りと、わずかな憐憫が交じっている。
「どういうつもり? あなたが“核”をばら撒いているの?」
私の問いに、レヴィアは静かに首を振る。
「私ではない。だが、この混乱を止めたいなら――お前自身が“選択”しなければならない」
「選択?」
「“守る者”か、“壊す者”かだ。アムネリスは、お前の答えを見ている」
その名を聞いて、私は思わず身を強張らせた。
「アムネリスは何を望んでいるの?」
「……私にもすべては読めない。ただ一つ言えるのは、“誰かの正義”で世界を塗り替えても、痛みは必ず残るということだ」
レヴィアの声は、いつになく低く苦しげだった。
「ノクティア、私はお前に勝ってほしいと思っている。同時に……お前が壊れていく姿は見たくない」
「ならば――あなたも私と一緒に戦って!」
レヴィアは一瞬だけ寂しげに目を伏せ、次の瞬間には木々の奥へ消えていった。
* * *
「ノクティアさん、大丈夫ですか?」
エイミーが駆け寄る。その背後でレオナートが剣を抜いたまま周囲を警戒している。
「ええ……でも、ただの魔獣や魔素災害だけじゃない。“人の意思”が働いてる。油断しないで」
「はい!」
私は砦への帰還を即断した。
* * *
砦に戻ると、予想よりはるかに早く追加の報せが届いた。
「ノクティア殿、王都の魔術局から新たな指示です! “セフィラ本流の情報を開示せよ”と……。さらに、王都とセレスタ合同の“魔導緊急会議”が召集されるそうです!」
兵士の声は、緊迫と戸惑いに満ちている。
私は地図を広げ、決意を新たにした。
「これからは私たちの戦いが、全ての未来に直結する。エイミー、レオナートさん――力を貸して」
「もちろんです、ノクティアさん!」
「セレスタ術士団も全力で支援します」
皆の言葉を受け、私は小さく頷いた。
* * *
その夜、私は自室の窓辺に立ち、暗闇を見つめていた。
風の音に混じって、どこか遠くで鐘の音が鳴ったような気がした。
自分の意志で扉を開けて、歩みを進めなければならない。
そのとき、扉の向こうでカイラスの声がした。
「ノクティア。――会議の準備はいいか」
「すぐ行くわ」
私は深呼吸し、最後に空を見上げた。
曇り空の向こう、まだ誰も知らない未来が待っている。
新たな戦いの扉が、今まさに開かれようとしていた。
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