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6章
81話「約束の剣」
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王都の空が昼なお薄暗いのは、春の嵐が近づいているせいだった。
祭りの喧騒が残る城下町も、どこかざわめきと不安に包まれている。
「王都守備隊、本部より報告! 北門外に魔物の群れ、発生!」
緊急の鐘が打ち鳴らされ、衛兵と魔導士たちが一斉に駆け出す。
王都の人々も、久しぶりの“魔物襲撃”にざわついていた。
* * *
ノクティアは、王都魔導士会で事件資料を整理していた。
最近、リュゼルやカイラスとの想いのすれ違いに心が揺れていたが、
その手はしっかりと自分にできることを探し続けている。
そのとき、使いの少年が駆け込んできた。
「ノクティア様! 北門に魔物が現れました。守備隊が危険です!」
ノクティアはすぐに立ち上がる。
「リュゼル殿下は?」「現地指揮です!」
心臓が高鳴る。迷っている暇などない。
* * *
北門外、石畳の広場には魔物たちがうねるように押し寄せていた。
黒い毛並みの大狼、巨大なサソリ、異形の魔獣が次々と城壁に襲いかかる。
「魔導士隊、前へ! 弓兵、援護しろ!」
リュゼルは、威厳ある指揮官の顔で戦場に立っていた。
従者たちが彼のそばで慌ただしく動く。
ノクティアが駆けつけたとき、城門付近はすでに修羅場だった。
「ノクティア、来てくれたか!」
「リュゼル殿下、ご無事ですか?」
「……ああ、大丈夫だ。だが状況は最悪だ。守備隊は分断され、王都からの増援も遅れている。
今は俺たちだけでここを守るしかない!」
* * *
ノクティアとリュゼルは、即席の指揮を取り合いながら前線へ出る。
ノクティアは高台から広範囲魔法で魔物の進撃を遅らせ、
リュゼルは騎士剣と魔導剣を巧みに操って味方を鼓舞した。
「君の魔法は相変わらず見事だ」
「殿下の剣さばきも頼もしいです。……でも、無理はなさらないで」
ふたりは背中を預け合いながら、矢のように押し寄せる魔物の群れに立ち向かった。
* * *
だが、嵐のような戦いのさなか、敵の巨大な魔獣――
“黒水牛”が突進し、ノクティアとリュゼルは城壁際へと弾き飛ばされた。
「くっ……!」「ノクティア、下がれ!」
気づけば、周囲は魔物の包囲。援軍も届かず、二人きり。
ノクティアは歯を食いしばって立ち上がった。
「リュゼル、私が前に出るわ――」
「駄目だ!」
リュゼルが叫ぶ。
魔獣の一撃がノクティアを襲うその瞬間、リュゼルは彼女を庇い、全身で攻撃を受け止めた。
「リュゼル!?」
盾も剣も吹き飛び、リュゼルの肩口が大きく裂ける。
だが彼は、なおもノクティアの前に立ち塞がる。
「俺は――もう、お前のことを“無能”なんて、誰にも言わせない。
……お前を、二度と傷つけさせない!」
ノクティアの瞳に、熱い涙が滲む。
「リュゼル……」
リュゼルは歯を食いしばり、血に染まった剣を強く握り直す。
「ノクティア、俺はお前を信じてる。……昔、弱さを見せる君が許せなかった。でも、今は違う。
“強くなった君”も、“迷いながら生きている君”も、全部……俺の誇りだ」
* * *
ノクティアは、涙とともに魔力を練り上げた。
「ありがとう、リュゼル。私、今ならもう――怖くない」
ふたりの心が響き合ったとき、ノクティアの魔法陣が輝きを増した。
「王都を、みんなを、絶対に守る! “約束の剣”よ、私たちに力を――!」
光が爆発し、守備隊の背後に勇気を与える。
リュゼルは再び剣を取り、ノクティアとともに魔獣の群れに切り込んでいく。
ふたりの共闘は守備隊全体に伝播し、士気は限界まで高まった。
* * *
激戦の末――
魔物の群れはようやく退けられ、夜明けとともに王都に平和が戻る。
ノクティアは倒れかけたリュゼルを支え、静かに微笑んだ。
「ありがとう、リュゼル。あなたがいてくれてよかった」
リュゼルも、弱く微笑み返す。
「ノクティア、お前を信じて戦えたことが……俺の誇りだ」
ふたりは、深く心で繋がったような気がした。
* * *
その様子を遠くから見つめていたカイラスは、胸に淡い焦りを覚えながらも、
ノクティアの幸せを願わずにはいられなかった。
* * *
戦いの夜明け。
王都の空には新しい光が差し込み、
ノクティアとリュゼルの“信頼”と“誓い”は、確かに次の未来へと繋がっていく――。
祭りの喧騒が残る城下町も、どこかざわめきと不安に包まれている。
「王都守備隊、本部より報告! 北門外に魔物の群れ、発生!」
緊急の鐘が打ち鳴らされ、衛兵と魔導士たちが一斉に駆け出す。
王都の人々も、久しぶりの“魔物襲撃”にざわついていた。
* * *
ノクティアは、王都魔導士会で事件資料を整理していた。
最近、リュゼルやカイラスとの想いのすれ違いに心が揺れていたが、
その手はしっかりと自分にできることを探し続けている。
そのとき、使いの少年が駆け込んできた。
「ノクティア様! 北門に魔物が現れました。守備隊が危険です!」
ノクティアはすぐに立ち上がる。
「リュゼル殿下は?」「現地指揮です!」
心臓が高鳴る。迷っている暇などない。
* * *
北門外、石畳の広場には魔物たちがうねるように押し寄せていた。
黒い毛並みの大狼、巨大なサソリ、異形の魔獣が次々と城壁に襲いかかる。
「魔導士隊、前へ! 弓兵、援護しろ!」
リュゼルは、威厳ある指揮官の顔で戦場に立っていた。
従者たちが彼のそばで慌ただしく動く。
ノクティアが駆けつけたとき、城門付近はすでに修羅場だった。
「ノクティア、来てくれたか!」
「リュゼル殿下、ご無事ですか?」
「……ああ、大丈夫だ。だが状況は最悪だ。守備隊は分断され、王都からの増援も遅れている。
今は俺たちだけでここを守るしかない!」
* * *
ノクティアとリュゼルは、即席の指揮を取り合いながら前線へ出る。
ノクティアは高台から広範囲魔法で魔物の進撃を遅らせ、
リュゼルは騎士剣と魔導剣を巧みに操って味方を鼓舞した。
「君の魔法は相変わらず見事だ」
「殿下の剣さばきも頼もしいです。……でも、無理はなさらないで」
ふたりは背中を預け合いながら、矢のように押し寄せる魔物の群れに立ち向かった。
* * *
だが、嵐のような戦いのさなか、敵の巨大な魔獣――
“黒水牛”が突進し、ノクティアとリュゼルは城壁際へと弾き飛ばされた。
「くっ……!」「ノクティア、下がれ!」
気づけば、周囲は魔物の包囲。援軍も届かず、二人きり。
ノクティアは歯を食いしばって立ち上がった。
「リュゼル、私が前に出るわ――」
「駄目だ!」
リュゼルが叫ぶ。
魔獣の一撃がノクティアを襲うその瞬間、リュゼルは彼女を庇い、全身で攻撃を受け止めた。
「リュゼル!?」
盾も剣も吹き飛び、リュゼルの肩口が大きく裂ける。
だが彼は、なおもノクティアの前に立ち塞がる。
「俺は――もう、お前のことを“無能”なんて、誰にも言わせない。
……お前を、二度と傷つけさせない!」
ノクティアの瞳に、熱い涙が滲む。
「リュゼル……」
リュゼルは歯を食いしばり、血に染まった剣を強く握り直す。
「ノクティア、俺はお前を信じてる。……昔、弱さを見せる君が許せなかった。でも、今は違う。
“強くなった君”も、“迷いながら生きている君”も、全部……俺の誇りだ」
* * *
ノクティアは、涙とともに魔力を練り上げた。
「ありがとう、リュゼル。私、今ならもう――怖くない」
ふたりの心が響き合ったとき、ノクティアの魔法陣が輝きを増した。
「王都を、みんなを、絶対に守る! “約束の剣”よ、私たちに力を――!」
光が爆発し、守備隊の背後に勇気を与える。
リュゼルは再び剣を取り、ノクティアとともに魔獣の群れに切り込んでいく。
ふたりの共闘は守備隊全体に伝播し、士気は限界まで高まった。
* * *
激戦の末――
魔物の群れはようやく退けられ、夜明けとともに王都に平和が戻る。
ノクティアは倒れかけたリュゼルを支え、静かに微笑んだ。
「ありがとう、リュゼル。あなたがいてくれてよかった」
リュゼルも、弱く微笑み返す。
「ノクティア、お前を信じて戦えたことが……俺の誇りだ」
ふたりは、深く心で繋がったような気がした。
* * *
その様子を遠くから見つめていたカイラスは、胸に淡い焦りを覚えながらも、
ノクティアの幸せを願わずにはいられなかった。
* * *
戦いの夜明け。
王都の空には新しい光が差し込み、
ノクティアとリュゼルの“信頼”と“誓い”は、確かに次の未来へと繋がっていく――。
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