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第1章 ココどこですか?
目標は決まった!!
しおりを挟む『村長、ではこの価格で了承で宜しいですね。』
憧れのログハウスに住む村長のご厚意で
居候させて貰っていた。
3階建ての2階部分が客間とは、虚弱体質の村長は意外にやり手だ。
2階部分だけで、5部屋ある。
その一室が、今は俺の住処だ。
『この村に落ち着くつもりなのか?』
最初、キョウの問いかけに答えられなかった。
流される様にこの場にいるが、俺は何処へ向かっているのか。
あの場所から脱出する。
ひとまずの目標は達成した。
しかし、あまりの状況の変化に見失っていた。、
俺は〚元の場所へ戻りたい〛のだ。
当面、〚ウィンドリア行き片道切符〛の事を調べたい。
それには、情報だ。
仕事をする時に、必ず必要なのは情報だ。
リサーチを徹底的にするのは、自分なりの仕事のルール。
例え時間をかけても、手を抜かない。
それには…。
この村に来てから1週間が経ったある日、俺はキョウに改めて問うた。
『俺はココに拠点を作って、まずはこの世界の情報を得たい。協力して貰えるのか?』
そう、第1段階は拠点作りだ。
まだ、力不足だというキョウの姿は今も耳の中だ。顔が見えない交渉はやりにくい。
『無論だ。とにかくお前は指示通りにやれば良いんだ。こんな辺鄙な場所でなく首都へ向かえ!!いいな。』
ふぅ。
偉そうなのと、頭が良いのは別の事だな。
『キョウ。常識なしと俺を何度も罵った癖にそんな奴が突然、人の多い首都に行って何が出来る?捕まるのがオチだ。』
『やってみなければ分からないだろう!!』
青木課長の口癖。
(やってみなきゃ分からん。)
もう、キョウのヤツは青木課長と呼んでいいか。何でもこの台詞を言えば良いと思ってるのがそっくりだ。
やってみるのは、成功確率がせめて50%超えてる時だろう。
ふぅ。やっぱり協力を求めるのは村長に限るか。
『お前、、失礼な事ばかり考えているな。
まあ、お前如きが怖がるのも無理ないか。
良いだろう。
暫くはこの場所で試行錯誤すると良い。』
『助かる。キョウ、これからもよろしくお願いします。』
しっかり頭を下げて頼んだ。
まあ、相手は耳の中だが気は心だ。
『おぉ、ちゃんとした態度は殊勝で良いな。任せておけ!!』
チョロい。
しかし、言質は取った。
本当なら契約書が欲しいが、ここまでは成功した。次は村長だな。
さて、交渉するには知識が必要だ。
1週間、遊んでいた訳ではない。
村長や村長の奥さんから色々学んだ。
その中でも最も重要なお金の価値!!
1ザザ 1円
ザザ以外の貨幣単位はない。
小銅貨1枚 10ザザ(円)
銅貨1枚 100ザザ(円)
銀貨1枚 1000ザザ(円)
金貨1枚 100000ザザ(円)
金貨から一気に10万円となる。平民の暮らしは1ヶ月だいたい2000円くらいだから金貨は平民は使わない。
では平民と言われるのなら、偉い人もいる。身分制度での頂点は王様。
次は仁。
義・礼・智・信と続く。
言葉は異国なのに、不思議なこともあるものだ。
『先日の商品に値段をつけたいのですが、この村だけでは全てお支払いする能力はありません。まずはそれぞれの値段をご確認下さい。』
食べられる草木
バナナ 10000金貨(10億)
小松菜 10金貨(100万)
セロリ 20金貨(200万)
薬草
高麗人参 値段つかず
鬱金(ターメリック) 値段つかず
たんぽぽ 15金貨(150万)
茶器や堆肥はそもそも、この世界にないらしく価格交渉以前だった。
そして自信作の紙の値段は
『紙は安価で取引されています。ですでの
15銅貨(1500ザザ)くらいかと』と言われた。
正直、高く売れた品々の喜びよりショックが大きくて崩れ落ちた。
あんなに苦労したのに、まさかの最安値。
崩れ落ちた俺に驚いた村長が、慌てて側に寄ってきて『大丈夫ですか?私が高く買わせて頂きます。銀貨10枚…いや銀貨20枚ではいかがですか?』
村長。
俺の中で生涯良い人認定に、させて貰うよ。今、「まんぷくパン」のおばちゃんを超えたよ。
破格の値段だが、村長の好意に甘える訳にはいかない。交渉はココからだから。
『取り乱して申し訳ない。紙については少し考えさせて欲しい。しかし、ここまで高額の値段がつくとは思わなかった。この村で買取出来ない高額の商品は何処で売れは良いのだろうか?』
立ち直った俺にホッとした様子の村長は
1ヶ月に1度行商人が来ると教えてくれた。
しかも、その行商人は首都で最も大きな店からやって来るのだとか。
これなら、必ず売れるな。
『もちろん、大喜びで買取すると思いますが少し時間がかかるかもしれません。それに…』言いにくそうに続ける
『少し騒ぎになるかもしれません。使者様が現れたとなれば。』
最後の方は小声で聞こえない。
『何か?』『い、いいえ。特に…』
村長の挙動不審は今に始まったことでは無いのでスルーに限る。
では、交渉も最終段階に進もう。
『村長。行商人が買取して下さるのを待たず、後払いの形で村長に売って頂きたいものが2つあります。
1つは土地です。
もう1つは職人さんをお願いしたい。』
『はっ?!土地とは何の事でしょう?
そして、職人を買いたいとは奴隷として買取たいとの意でしょうか?』
しまった。言い方を間違えた。
『違う。いや、全く違います。
私はこの村に家を建てたいのです。それでその為の土地と家を建ててくれる職人を雇いたいと思っておりまして。』
蒼白になりかけた村長の顔色は、元に戻った。それどころか、喜びいっぱいになって
『もちろんです。どこの土地でもお好きにお使い下さい。この村の全ては貴方様のモノです。』
村長。
良い人すぎて、言葉を間違えてるな。
でも、交渉成立だな。
『では、村ハズレ森の入り口近くに村長の家の2倍の広さの土地を金貨100枚で購入します。職人への支払いは1人あたり日当金貨1枚。完成の暁には金貨10枚でお願いします。』
『馬鹿か、お前。貨幣価値を暴落させるつもりか!!』
『はっ???そんなの金額が大きすぎて無理です!!』
キョウと村長の2人の叫び声が同時に響く。
耳が痛い。
でも、大事なのは相手に納得させる事だ。
例えそれが破格の高額提示でも。
『村長。私がこれからお売りする商品はまだ沢山あります。それはこの村に大きな負担となる可能性が高い。余所者の私を受け入れてくれたこの村にせめて貢献して恩返ししたいのです。』
破格の商品の取り扱いは非常に難しいのだ。しかも、俺が住み着くとなれば。
キョウも村長も無言だ。
そして…(冒頭のセリフ)
結果は、交渉成立となる。
始まりはこれからだ。
『ウィンドリア帰り片道切符』を手に入れる。その日まで突き進むのみ。
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