備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

文字の大きさ
17 / 69
第1章 ココどこですか?

驚き過ぎると、人は無になる?!(結局…暗転?!)

しおりを挟む
『まぁ、せっかく作った酒とツマミだ。
この後は食べながら話そう。』と話しかけながら、テーブルの上に品々を並べる。
この際、試食も兼ねて貰いたい。
お酒の試飲は、子供達には頼めないからな。

『そりゃ願ってもない申し出だ。
ラッセルさんに食べさせたいんじゃないのかい?』
少しニヤついた顔にやっぱり好青年とはソリが合わないと思いながらも信楽焼風の湯のみに入れた焼酎を差し出した。

『自慢の1品だ。まぁ、飲んでみてからその先を聞こうか。』

本当に酒造りはかなり苦労した。
酒を飲まない人間が、酒造りするんだから当たり前か。酒造りで失敗を繰り返しながら、杜氏の皆さんを心から尊敬した。
しかし、味見もなしに飲ませてるせいか、ちょっと緊張気味に好青年を伺い見る。



あれ?目を閉じて動かない。

チクタク、チクタク。

腕時計の針は5分経過したが、動かない。

。。。まさかの【毒】?!
密造酒が毒になったニュースをインドか何処かで見た気がする。

黒装束はもう消えていない。今こそ、ここに現れて欲しいのに。
あぁ、どうすれば良いのか。。

そうだ!!

【特万能薬】

あれを使うしかないか。
沢山採れた薬草を色々煮込んだり、干したりしていたら偶然出来た産物だ。

丸く黒い粒(ちょっと正露丸ぽい)を取り出して好青年に駆け寄って気づいた。

震えてる。
しかもかなり顔が赤い。

そんな度数が高いお酒じゃ無いはずだ。
やっぱり、【毒】なのか。

側に近寄ったその時!!

突然、好青年の両目がカッと見開き、俺の両手を掴んでブンブンと振り回し始めた。怪力なのか凄い勢いで振り回すので目が回る。

『おい、おいってば!!彼を振り回し過ぎて目が回っているぞ!!』
好青年を押さえ込み助けてくれたのは、意外にも黒装束。
やっぱり居たのか(忍者っぽい気がするんだけどな。)

『あっ、これは申し訳ない。あまりの感激に茫然自失となっておりました。
本当にこれは凄いお酒です。サラリとした軽さの中に深みがあって。芳醇な香りも今までにないものです。』

何処かのグルメリポーターか!!
ツッコミたくなる程饒舌になった好青年が
喋る喋る…。

こんなに褒めて貰えたから自信はついたけど、これからの話をする予定はどうした?

『久しぶりに力が充満します。もう、失われたと思っていたのに。』
泣き上戸だったのか?

ブツブツ言いながら涙ぐんだり忙しそうだ。こうなりゃ交渉相手は素面に限る。

『にん…黒装束の人。こんなになっちゃ話も聞けない。あんたが話を進めてくれないか?』

わっ!!やっぱり俺の背後にいた。
敵にしなくて良かった。

『分かった。詳細は明日にでもジルから聞いてくれ。

まず第1に国として敵対する気は無い。
大前提としてそれだけは信じて欲しい。
ま、私が言っては嘘臭いだけだがな。

次にこちらの希望は二つ。
一つ目は、品物を出来るだけ沢山一刻も早く購買したい。
二つ目は、貴方に首都に行き王様にお会いして貰いたい。

ただ、これも強制する事は無い。神狼様の加護を賜った者を人間如きが何か出来る筈もないからな。』

黒装束のままか。
素顔のない交渉相手はイマイチ信頼に欠けるが、にん…諜報部隊なら仕方ないか。

『答えは両方決まっている。
一つ目の答えは、引き受ける一択だ。
細かな打ち合わせが必要だが明日以降で良いと思う。
ここで一つ条件をつけさせて貰いたい。
ラッセルさんが全ての窓口だ。』

長年、遠方のこの村を尋ねてくれる唯一の行商人だと村長は言った。
その意味は、ラッセルさんがこの村の恩人であると言うことだ。

村長の恩人は、俺の恩人でもある(現在進行形で居候しているしな。)

『それは了解した。ただ、権限はジルにあるので確実な答えはこれも明日に。』

『では、もう1つの答えだ。
それは出来ない。首都には行かない。』

はっきり言い切った。
ある程度ぼかすのも交渉手段としてあるが、全く受け入れられない条件はキッパリ断るのが後日揉め事を無くす方法だと思って仕事をしてきた。

それはここでも適用される。

黒装束から珍しく感情が伝わる。
非常に困っているのだな。
上の命令に従うのが、宮仕えの定めだ。
非常に理解出来るが、これは譲れない。

『そ、それは』言い淀んだその時。

ピカッ!!!

酔っ払いとなっていた好青年が光った。

と、思ったら、消えた?!

『あぁ、本当に久しぶりに〚装身〛が使えた。
もう、二度と使えないと思っていたのに。
これは、奇跡の酒だ!!』

またもやお褒めの言葉で嬉しいんだが、好青年、いったい、何処にいるんだ?!

やっぱり彼も忍者の仲間なのか?

『ジル!!まさか使える様になったのか?』
『そうだ。あの時全て使い果たしたと思っていたのだが。』
『。。良かった。。本当に。』

『いや、盛り上がっている所申し訳ないが、
黒装束さんとお話しているジルさんが見えなくて。諜報部隊さんの技か何かですか?』

『えっ?』『えっ??』
2つの声が重なった後、俺の目の前の空間がうっすらと色づいてゆく。

その色はまるで虹のように、多彩な色が揺らめいて、暫くすると緑色のジルさんがいた。

えっ??呪いなのか??

『呪いなどではありません。村長さんの獣の姿を見ているのでご存知とばかり。
これは〚装身〛と言う技です。この国にはごく少数ですが今も〚装身〛を使える人々がいるのです。』

大混乱中の俺の目の前で、ジルさんが元の姿に戻った。

『私の〚装身〛は身体の色を変えられるものです。矢作様、全ては貴方の〚焼酎〛のおかげです。このご恩は我が身命をもって必ずお返し致します。』

好青年は重いな。 

それよりも驚いたのは、なんと

村長は熊じゃない!!

〚装身〛よりもその事に驚きを隠せないでいたら何を思ったのか、黒装束が急に動き出した。

『私も〚装身〛を解こう。信頼を得るためにも見て欲しい。これが私の本当の姿だ。』

人は驚き過ぎると、かえって落ち着くのかもしれない。

俺は今、無になっている。

だから

目の前に金髪碧眼の美人が居ても別に平気だ。

嘘でした。
痩せ我慢は限界を超えた。

後は明日に。

久しぶりの暗転は少し慌てる2人の声を聞きながら深い闇の中へ。




〚装身〛に気づいたか。
では、次の一手を考えなければ…

闇の中で何か声が聞こえた気がするけれど
その意味は何も残らなかった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

異世界おっさん一人飯

SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
 サラリーマンのおっさんが事故に遭って異世界転生。  秀でた才能もチートもないが、出世欲もなく虚栄心もない。安全第一で冒険者として過ごし生き残る日々。  それは前世からの唯一の趣味である、美味しい食事を異世界でも食べ歩くためだった。  

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

社畜生活に疲れた俺が転生先で拾ったのは喋る古代ゴーレムだった。のんびり修理屋を開店したら、なぜか伝説の職人だと勘違いされている件

☆ほしい
ファンタジー
過労の末に命を落とした俺、相田巧(アイダタクミ)が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界だった。神様から授かったスキルは「分解」と「再構築」という、戦闘には向かない地味なもの。 もうあくせく働くのはごめんだと、静かな生活を求めて森を彷徨っていると、一体の小さなゴーレムを発見する。古代文明の遺物らしいそのゴーレムは、俺のスキルで修理すると「マスター」と喋りだした。 俺はタマと名付けたゴーレムと一緒に、街で小さな修理屋を開業する。壊れた農具から始まり、動かなくなった魔道具まで、スキルを駆使して直していく日々。ただのんびり暮らしたいだけなのに、俺の仕事が完璧すぎるせいで、いつの間にか「どんなものでも蘇らせる伝説の職人」だと噂が広まってしまい……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

処理中です...