備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第2章 矢作、村を出る?!

村長の決意?!

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高い土壁を一瞬で積み上げる

矢作さんならではギフトだ。

だが、それも今は風前の灯になっていると聞いた。

尽力する事はないかと考え続けて出た結論はコレだったのだ。

【矢作様護衛決定戦】

召喚の儀を行った後遺症だとキョウ様は申された。
召喚されたのは、矢作さんの故郷の方だ。

『帰してやりたい』矢作さんの願いを叶える希望は

王都と南の国ノナ、にあるらしい。

だとすれば、護衛付きでなければ旅など不可能なのがこの世界なのだ。
矢作さんの考える旅とは全く違う。

それは実際に経験しないと伝わらない。
だからこそ、護衛は最重要だと思ったのだ。

しかし、ジル殿がいる。
だとすれば、私の考えなど一笑にふされるかもしれない。

コンコン。
強い決意と共に、ジル殿が使っている一室の扉を叩いた。

『ベンです。今少し宜しいですか?』
『どうぞ。』
穏やかなジル殿の声。
普段は、とても諜報部隊の隊長だと思えない穏やかでのんびりした方に見えるのだ。

『実は矢作さんの旅の護衛について聞きたいのですが。』

意外そうな顔だ。
自分の分野に、何故私が尋ねるのかと疑問に思われたようだが、丁寧な説明をしてくれた。

『今も護衛の選抜をしていた所だ。
矢作様と共にするのは少人数での同行で、それとは別に影ながら支える影部隊も考えている。こちらは交代制にして万全を期したいと思う。』
やはりだ。
ジル殿なら、既にほぼ選抜は終わっているのだろう。


『ジル様、護衛は諜報部隊のみとするおつもりですか?』
『あぁ、無論そうするつもりだ。』

『それには反対します。』

『なぜ?』

楯突く私に驚きと少しの苛立ちを滲ませるジル様の圧力も私の決意は揺るがない。

『護衛希望者は多数います。諜報部隊よりも適任者もいるかと。』

『ほう、それは自分だと言いたいのか、村長殿。諜報部隊よりも強いつもりなのか?!』

低い声は威力が増して更に圧力が強まる。
息かしずらい程に、怒りの波動が伝わるが負ける訳にはいかない。

『矢作さんの希望する旅路は、陸路。この世界を見回りながらクサナギ様の帰路を探したいとの意向から察するに必要なのは、旅慣れし野営に長けた者かと。更には地理や他国の情報収集能力等も必要です。だとすれば武力以外にも必要なモノは多い。
しかも、この村に今住むもの達の中には、矢作さんへの深い恩義から希望者は多数。
せめて、護衛選抜会を開いて欲しいのです!!』

ふぅ、何とか言いきったぞ。しかし、ジル殿の反応は…と探っていると予想外の所から声がかかる。

『そうだな。矢作の付き人ならば、第一番目は矢作に慣れる事か。ヤツはとんでもない事を平気でやるからな。』

『『キョウ様!!』』

いつの間にか、話し合いのテーブルの上にキョウ様のお姿があった。
思いもよらぬ最強の仲介者の出現に一筋の希望が見える。

『そうね。精霊達の中にも同行希望がいるはずだしね。』なんとハク様まで。

お2人の意見に黙り込むジル殿。
ヌーヤ帝国の諜報部隊。
それは帝国の最大戦力だと言われている。

入隊出来るのも稀だが、訓練に耐えられる者こそ更に稀だと。
だからこそ、ヌーヤ帝国最強を誇る戦闘力なのだ。
そしてその隊長ともなれば実力は如何程なのか。
しかもジル殿は【仁】のご子息。
まさに王様の懐刀、と聞いている。

厳しい表情のジル殿に緊張が高まる。
神獣様方の助言でも無理なのか。
そう諦めかけたその時、

『そうですね。矢作様にとっての最善の人員選びをしましょう。
ただし!!
審査員は私とキョウ様ハク様の3名。
宜しいですか?』

『はい!!』
願ってはいたが、可能性は極めて低いと思っていたせいか思わず大きな声が出た。
良かった…これならば。

『矢作様は急がれる様子。
極秘に告示をして、開催は3日後。出発は1週間後。選出されたもの達は、私の訓練を受ける事が条件です。
さあ、村長。急ぎ希望者を募ってください。』とジル殿。


密かに準備はしてきたのだ。
矢作さんが以前、村の中に作ってくれた訓練所がピッタリだと狙いは定めてあった。

『あ、規模を間違えた。』
これは、作った後の矢作さんの言葉。
その通りだった。
訓練所と言うよりは、巨大コロシアム。
しかも、周囲を高い土壁で囲まれている。
矢作さんの目の届かない場所の確保はこれでOKだ。告知も妻に頼んである。

妻の持つ女性の連絡経路は最強だ。
ただ、私でも詳しくは知らないし、知ろうとしてはいけない。

女性の秘密は暴いてはいけない。
(過去の教訓である。。)


告示から1日。
あっという間に希望者は名乗りを上げた。
村中が希望したのかという大人数。

移動村のもの達は、更に多い。

意外な名前も見つけてギョッとするも、【出自・性別・年齢は問わない】と条件は付けたのだ。

波乱万丈しか予想出来ない【護衛決定戦】は既に明日に迫っていた。

いよいよ、大本命だ。
護衛になる為に、私の決意を告げ許可を得なければならない相手がもう1人。
実はジル殿よりもこちらの方が、勝算は低いし恐ろしい。

でも、もう時は無い。

意を決して私が妻に声をかけようとした、その時。
妻がこちらを急に振り向いて私の目をまっすぐ見つめた。

『村長代理につきます。ベノンを補佐にすると話はしてあります。
この村は大丈夫です。どうか矢作さんの護衛を勝ち取って下さい。』


。。。
やっぱり勝てない。
最初から勝算などないのだ。

妻が最強だ。


明日、私は必ず護衛を掴む。
そして、守人の村を守って下さった恩人に報いるのだ。

妻を抱きしめながらそう誓ったが、妻の身体は少し震えていた。
背中を撫でながら小声で『矢作様と共に必ずココに戻ってくるから。愛してるよ。』と。

必ず…と心に誓って。





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