備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第2章 矢作、村を出る?!

女の子は最強?!***草薙視点***

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迷子です。
いや、マジで異世界怖い。

日暮れが迫るけど、明らかに場違いな場所にいます。

先輩と2人きりで。。。なんでこうなった??


今から3日前は確か…。

***3日前***


異世界の大門。

噂通りだ。
首都の周りを囲む壁は、石垣ながら首が痛くなる程の高さがある。

合金鋼とはいかないくても、金属製の大門の迫力はかなりのものだ。そして…。

検問待ちの列がやたら長い。
なんと、列の途中にテントまで見える。
マジか。。

『ててちょうさん、この列はあとどのくらい?』マッチョなのに、優しい目の村長さんは俺にとって聞きやすさNo.1なのだ。

『そうですね。私もあまり詳しくないのです。ラッセルさん、どのくらいでしょう?』

話を振られたラッセルさんは、通行手形の確認に忙しそうな手を止めて考え込むように顎に手を当てて暫く止まった。

えっ?この質問そんなに難しいの?

『あと3日くらいですかね。今回はかなり空いているので。』ニッコリ。

いや、ニッコリとかしてる場合?!
そんなの長すぎるよ。青ざめている俺に追い討ちがかかる。

『大丈夫です。そのうち、首都名物弁当屋が来ますよ。ま、我々には必要ないですけど。』
ラッセルさんのズレた回答に、さっきから目線を合わせられない人物が反応した。

『3日。。。』

こわっ!
右隣から、冷気が流れてきたじゃん。
諦めの悪いのも先輩らしいけど、先輩の暗さはえげつない。

ほら、馬車の中は静まりかえったよ。
盛り上げようとしてした質問の結末はコレだよ。

コスプレしてからの先輩の顔は直視厳禁。
無理無理無理。

あーー、もうこんな空気3日も耐えられないよ。

あっ!!
『そうだ、ジルさん。貴族さんだから早く大丈夫ね?』名案思いついたよ。
ジルさんは、イケメンの上に貴族さまとか。モブの敵のような人だけど、こういう時は頼りになるな。

俺の問いかけに、1番前方で見張りをしていたジルさんが振り向いた。
おぉ、相変わらずイケメンのオーラすげっ。

『草薙殿。私のツテを使えば必ず我が家に捕まりますがよろしいですか?良い家族ではありますが何せ忠誠心の塊でして、息子のために匿うとか辞書にないと思います。
間違いなく、王様に私を含めて売り払われます。絶対オススメ出来ませんね。
まあ、ここでゆっくりして英気を養いましょう。』

貴族、怖っ。

『せめて、その間だけでもコスプレ止められないのか?!』
先輩、本当に限界みたいですね。
まぁ!3日もたない気持ちは俺も同じかも。

女性って本当にすげー。
肌がぜんっぜん、息してない。
顔、固まっちゃうよ、コレ。

スカートとかは、逆に足元がスースーして落ち着かないし。

『先程から、何度もこちらを伺うもの達が近づいております。今はこのままの方が安全です。』

ジルさんに言われて先輩は撃沈した。
これまでの旅で、幾度も先輩も俺も狙われた。油断大敵らしいけど、無理だよ。

安心安全の日本から来たんだよ!!

そんな、油断しても仕方ないじゃん。
朝、外でするトイレをちょっと離れた所にしたかっただけじゃん。
なのに、間一髪とか言われたんだ。
ジルさんがいなければ、俺はそのまま攫われてた…らしい。

『分かった。』
しょんぼりした先輩にジルさんがいつもの様に自爆した。

『そんなガッカリした顔しないで下さい。美人が台無しですよ。本当はこのままさらってお嫁さんにしたいくら…』

やめとけって。
先輩は硬派なんだから、冗談とか通じないよ。ま、ジルさんの場合本気モードっぽい所が怖いけど。

あっ!

ほら、先輩が化粧した鬼瓦になったじゃん。どうする、この空気。

。。と思ってたら救世主が!!

ナイス高尾ちゃん。

た、助かったよ。
空気を全く読まない高尾ちゃんが『腹減った』と呟いてくれたから先輩が動いた。

どうも高尾ちゃんに対して父性が爆発してるらしく、高尾ちゃんのご飯用意は絶対に人に譲らない。

『こんな馬車の中だから、今日はこれな。』
出た。

干物シリーズ。

干し柿、っぽいモノ。でも旨い。
甘さ控えめな干し柿とか最高だよな。数少ない備蓄も高尾ちゃんのためならサッと出す。マジで父性爆発中。


色々あったけど、なんとか3日後。

我々の番がきた!!

『ここからは皆様手筈通りにお願いします。』いつもより厳しい顔のラッセルさんが我々に言い含めて、門番さんに申告するために馬車の外に出た。

『ふむ。お前たちゴラン商会だな?書類はここに記入漏れがあるぞ。あ!!これは何だ?!』
ちゃんと絡んでる(袖の下用に絡むのは定番らしい。)
正式に絡んで、かなり高額たかってる。

ここまでは、予想通りだった。
だけど、やっぱり予想通りにはいかないのが世の常だ。

急に別室にラッセルさんが連行された。
大柄な門番に両腕を拘束されて拉致。

その瞬間、馬車の中に大勢の兵隊が踏み込んできた。ジルさんと村長は臨戦状態。
ルフさんが我々の前に陣取る。

鍛冶屋2人は、別働隊中。
もし、我々全員が拘束された時の保険。

いや、保険って払い出ししないから良いんだよ。これは不味いって。

先輩と2人、狭い馬車の中で大勢に囲まれて手を取り合う以外方法なし。先輩は肝が座ってるけどちょっと震えてた。

あ、俺の震えが移ったかな。
逮捕とかされるのかな。
それとも、本格的に攫われる??

『お前たち、異世界人をどこへやった!!』
1番大柄な男が、ジルさんの胸ぐらを掴んで凄む。でも悪役だな。髭もじゃで目つきも悪い。長年異世界モノ読んできたオタクを舐めるな。
間違いないな。

迫力はあるけど、きっとジルさんの敵じゃない。本当の力を出せば一瞬だ。
でも、多分俺たちに影響を及ぼさないように黙ってるんだな。

『あの…』
へっ?
まさかのここで先輩登場?!

『女!!貴様らは黙ってろ。後で取り調べるからな!!』
先程の髭もじゃの男が先輩に凄む。
や、や、止めた方が。

『私たち、長い列に困ってるのを途中から乗せて貰っただけなんです。無関係なので先に通っても良いですか?』
鋼だ。

前から思ってたけど【鋼の心臓】だ。
いや、【オリハルコンの心臓】かも。

震えて涙目の演技までした、先輩のうるうる目に何故かこっちがドキドキする。
不味い、後でシメられるかも。。

『お前たち、乗せてやった恩はどこいったんだ!!』
乗ったよ。ジルさんが先輩の演技に参加。

まさか、こんなクサイ芝居に騙される人間なんていな…『よし、女たちは行け!』

いた。
いました。
ここに馬鹿がいます。でもマジで馬鹿万歳。


『くーちゃん、早く鹿目亭に行きましょう。門番さんたちご苦労さまです。』
ぶりっ子する先輩に目が点になってたら、知ってる名前発見。

【鹿目亭】今夜の宿屋。

なるほど。ジルさん達に先に行くって伝えた訳か。さすが、先輩。

まだカタコトの俺は涙目で頷いて『うん』のみ。俺からバレたら先輩にどつかれる。
必死の演技にコロッと騙された門番達は、先輩の肩を抱いて馬車を降りるためのエスコート。

不思議に疑われない我々は、その場を後にした。もしかしたら泳がせてるだけかも。

そんな事を思ったりしながら先を急ぐ。

早歩きにならないように気をつけて、前から聞いてた街の地図を頭に入れた先輩の後をついて行く。

ついて行って大丈夫か?やたら、、曲がってばかりだけど本当に鹿目亭に着く?

『センパイ、あってる?』
『紐付き、ヤバい。』

紐付き?
うーん、何だろ。案件の時に、紐付き使ってたな。そうだ、別企業が裏側にいる時の暗号だ。

身体がピキっと固まった。
【つけられてる】って意味だな。

門番は見逃したんじゃない、やっぱり泳がせたんだ。


そうだと分かっても打つ手がない。
見知らぬ土地で、追い詰められてるのに逃げるしか方法がない。

もしかして、このまま捕まる?!
あーダメだ。嫌な予感ばかり過ぎる。

意識を振り払っても、先輩の手が汗ばんできていくから不安が増してくる。更に道は細くなって暗い路地にどんどん向かってる気もする。

追い込まれたな。
いや、ここに誘導されたのか。


緊張が身体を、走る。
この世界は日本と違う。全て命懸けだ。


その時!!

『あ、お姉ちゃん!!探したよ。
良かった、こっちこっち。』と目の前で先輩の手を取る人が現れた。
いや、人というより女の子か。
ニコニコした可愛い小学生くらいの女の子に手を引かれる先輩。

そして、あっという間に俺たちは明るい大通りに戻った。

『ほら、予約してくれたでしょ。【跳馬亭】にようこそ。久しぶりに来てくれて嬉しいよ!』

怒涛の展開。さすが異世界と言いたいけど、自分に起こるのは別!!
何故か気がつけば何故かボロボロの宿屋【跳馬亭】に泊まる予定になってる。

どこココ?
見張りは??
この女の子は??


『おばさん、ちゃんと客引きしたからお駄賃頂戴。』
おぉ、銀貨1枚とは客引き儲かるな。
しかしこの子は客引きだったのか。
小さいけど、しっかりしてるよ。ホント凄技過ぎる。

駄賃を受けとった途端、先輩の方に振り返ると手を差し出してきた。

『ふふふ。ちゃんと追って巻いたんだからお駄賃弾んでね。銀貨3枚は欲しいな。』

さすがに目が点の先輩は、それでも銀貨3枚を相手に渡す時に値切ってた。 

『値切るなら、あのおじさんにこの場所教えようかな。。ふふふ
あっ、銀貨10枚ありがとうございます。口止め料込みで頂きます。』


先輩の1枚上手。

女の子って怖い!!!











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