備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

文字の大きさ
52 / 70
第2章 矢作、村を出る?!

それぞれの思惑…そして罠

しおりを挟む

閑古鳥

いま、ラッセル商店の店にいるのは店員と閑古鳥だけ。

ちょっとの誤算どころじゃない。

第1弾として売り出したのは、薬。
オープン前には様々なチラシも配った。
ここでも印刷技術は大活躍だ

きちんと並んだショーケース。
薬は分かりやすく絵付きで並べてある。
張り切るラッセルさんが、馴染みのお客さんに必死の客引きをしている。

やっぱり閑古鳥。

これはこの世界の風習が関係している。
庶民にとって、薬はもちろん薬草さえも買う習慣はない。

薬は高価で、薬草を扱うのは専門の人間でなければ無理だと考えられているからだ。

もちろん、薬には絶対の自信があるし適正価格だと断言出来る。庶民にも手が届く価格であると、ラッセルさんも太鼓判を押してくれたいる。

風習とは厄介なものだ。
本当に困った。が、それだけで止まってる訳にはいかない。

次の手を打たなくては。

『ジルさん、第2弾いきます。』
実は失敗の場合の想定もした。

次は【抱き合わせ商法】だ!!

第2弾の商売は石鹸だ。
これは前から決まってた。
石鹸の在庫はあまりないから、後から売る予定だったのだ(北区の住民とギルドが買いすぎたせいだ。。)

実はその石鹸の売り方に秘策はある!!

買った人は、全員ガラポンで福引をするチャンスをゲットする。

当たりは
1等  (金の玉)  コルバ作包丁  おひとり様
2等  (銀の玉)  タライ  洗濯板
3等  (紫の玉)  お野菜詰め合わせ

ハズレはのど飴

そう、お分かりの方はハズレこそ狙い目だとお気づきだろう。もちろん、のど飴はこの世界にはない。

実はコレ、咳止めの薬草を少し混ぜたかなりの本格派。
これで薬草への興味とその効果が本格的な事を理解して貰う作戦だ。

ラッセルさんから『いくら何でも1等が豪華過ぎます!!』とクレームが出た。
すると当の本人からは『鍛冶屋はな、使って貰ってなんぼなのよ。飾ってばかりの特権階級なんぞには本当は俺の作品を売りたかない。師匠が言わなきゃ…』『長いです』

暴走しかけたコルバをグーナンが止める。いつもの風景に笑いがもれる。

『有難く使わせて貰います。』と俺。

そして、この広告に乗り出してくれたのがジルだ。と、言うかその顔、今こそ役に立てる時だろう。

イケメンは、客寄せパンダなのだ。

男性方面は、草薙にやらせた。俺は断固として女装は断った。

その代わり何故か【似顔絵屋】を今、店の前でやってる。まあ、、とにかく客寄せ出来ればそれが正解なのだ!!


ま、結果を言うと大正解だった。
いやそれどころじゃない。現在社蓄真っ青の大忙し中だ。

石鹸のハズレ【のど飴】から売れ出した薬の評判は更に広がり、首都に近い村や街から買い付けが続々と。
嬉しい悲鳴だが、全員が疲労困憊だ。

すると、ジルさんが突然『明日は休みにしましょう。』と言い切った。
珍しい。こちらの思惑を常に読んで行動するのに強引な感じにただ頷いた。

まあ、疲れてるし定休日は誰にも必要だ。


***ジル視点***

『お前らしくないな。王が許している間に何とかするべきだったのだ。今更遅いぞ。』

深夜、寝静まったラッセル商店の一室に
ソイツはやってきた。
王の懐刀。

宰相補佐  ゼル

『ふふふ。私らしくないとは珍しい言葉だな。いきなり拘束するのがやり方だろう。キセら諜報部隊が外でズラリと並んでいるではないか。』

数日前から気配が変わった。
ラッセル商店の開店初日からと言うのが正解か。

やはりあの【薬】はヤバかったか。
それでも。

『王もボケたな。彼を敵に!!!』
そこまで言った途端、キセが俺の首を押さえ込みゼルの剣先が喉元に突き刺ささる。食いこんだ首元から、一筋の血が流れた。

『不敬もそこまでにしろ!!俺にお前を殺させるつもりか!!』

怒鳴りながらに睨むゼルに笑いが込み上げる。やはり分かってないのか。
いや、私が変わったのかもしれないな。

『矢作様は神獣に召喚された異世界人だ。
これまでの歴史を知らぬのか?彼らに手を出せば滅びるぞ。それとも我が王だけは違うとでも。』

『それを承知で隊長として矢作様に接触されたのは、ジル様でしょう。架け橋になるはずのジル様が、何故ここに来て王への反逆とも言える行動を取るのです?!』
感情的になったキセの言葉に、僅かに身体が動いて更に剣先が食い込む。

あと僅かに動けば、取り返しはつかないだろう。それでも。

キセが感情的になる。それが彼女にとってどれほど大切な事か知っているだけに目だけキセへと向けた。

『分かっている。だが矢作様を知ってしまったからこそだ。彼の歩むその先を見てみたい。いや、出来ればその一助になれればこの身など。
そう、最早我が忠誠心は王の元にない。』

キセの絶望的な顔がチラッ見える。
ゼルが決心したように、剣先に力を込めようとしたその時。

『コンコン、ジル寝てるか?俺、またアイデアが浮かんだから聞いて欲しいんだけど
、今大丈夫か?』

『大丈夫です。今開けますね。それにしてもこんな夜遅く珍しいですね。』

寝巻き姿の矢作様は、何気なく俺の部屋を見回す。

『どうしたんです?』
『うーん。何となくキョウの気配を感じたんだよ。ほら、アイツ少し臭うだろ?』

クククク。
やっぱり矢作様は唯一の方だ。どこまで斜め上の発想で予想不可。
だからこそ。

***キセ***

びっくりした。
気配を読むことにかけては、自信があったのに何故。矢作様の気配は時折全く読めない。

ゼル様を、小脇に抱えて屋根の上を飛び越えつつ隊員達の体制も整える。

ゼル様は矢作様の登場の瞬間に体制を入れ替えたジル様に鳩尾に鋭い拳を突き上げた攻撃で現在気絶中だ。
いや、ジル様が本気ならゼル様が入室した時点で命すら無かっただろう。ゼル様は計略や作戦に長けているが荒事で、ジル様に叶うはずもない。

矢作様の存在とジル様の立ち位置を王へ報告させる為に泳がされた。。と、言うところか。

それにしても、あの一瞬に感じた異様な気配は何だったのだろうか。


***ある市民の男***

ラッセル商店の喉飴。

それは今や誰もが羨望の商品だ。
石鹸を買えばガラポンという謎の装置で当たりが出なれけば手に入る。

そう聞いて、少ない稼ぎを握りしめてようやくラッセル商店へとやってきた。

なのに…。

当たってしまった。【タライと洗濯板】
2等と言われた。


欲しかった【のど飴】は手に入らなかった。
明日の食事も我慢して買った石鹸が憎らしい。

『残念でしたね。実は私は何回も石鹸を買ったのでのど飴がいくつもあるんですよ。
良ければそのタライと交換しますよ。』
ガッカリして歩いていた男は、飛びつくように顔を上げた。

片眼鏡の賢そうな男だった。

『た、頼む。是非ともその【のど飴】と交換してくれ!!』

『ええ、是非。』
にっこり笑った男はのど飴を渡してその場から去った。

不気味な笑いとと共に何処とへともなく消えた。


男は喜んだ。
今、旨くて喉が凄く楽になる魔法の薬【のど飴】を手に入れたのだ!!

包みを開けて喜び勇んで飴を口に入れた。

途端…男はその場で泡を拭いて倒れた。


その時一陣の風が吹いた。
森の香りのする風が。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界おっさん一人飯

SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
 サラリーマンのおっさんが事故に遭って異世界転生。  秀でた才能もチートもないが、出世欲もなく虚栄心もない。安全第一で冒険者として過ごし生き残る日々。  それは前世からの唯一の趣味である、美味しい食事を異世界でも食べ歩くためだった。  

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...