26 / 44
正体
しおりを挟む
青年はすっくと立ち上がると、あっけにとられているジャンティーに手をさしのべた。
そんな些細な仕草すら、とても美しい。
サファイアのようにキラキラした青い瞳、夏の太陽のように光り輝く金髪、陶器のように白い肌。
「ジャンティー、ありがとう。お前のおかげで長くかかっていた魔法がとけた」
青年が手を差し伸べたまま、にっこり微笑みかける。
「どういうことなんです?あなたはどこの誰です?ウォルター様は、いったいどこに?」
「わたしがウォルターだよ。さっきまで、お前の腕の中にいた。そして、お前はわたしのために涙を流してくれた。とても嬉しいよ」
「信じられません。いったい、どうしてこんなことが……」
ジャンティーは困惑するばかりだった。
「そうだね。ちゃんと話すから聞いておくれ、わたしの身の上話を」
青年はジャンティーに目線を合わせるようにして、その場に座り込んだ。
「そもそもは人間の世界の醜さを嘆いたがために、あんな醜い野獣に変わってしまったわたしだが、いつしかわたしは、こんな姿のまま生きることが辛くなり始めていた。だから、また神に祈った。「身勝手だとはわかっています、人間の姿に戻してください」と祈った」
「祈って……それで、どうしたのです?」
やや興奮気味に話す青年に対して、いまだに話が見えてこないジャンティーは、その続きが気になった。
「ひたすら祈って祈り続けて、その祈りはもう届かないのだと諦めたときだった。神はわたしに応えてくださったんだ。ある啓示をしてくれたんだ」
「啓示って、何をです?」
ジャンティーは、ドキドキしながら尋ねた。
神はいったい、この青年に何を告げたのだろう。
「神はおっしゃった。いつかこの世で本当に美しいもの。本当に、心の底から信じられるものに巡り会ったとき、わたしは人間の姿に戻る機会を与えられる。その日まで待つのだと」
青年がさらに続けた。
「お前がこの城にやって来たとき、わたしはついにそのときが来たのだと考えた。お前こそが本当に美しく、心の底から信じられるものを与えてくれる。いや、それそのものなのだと……」
「お前の父親の病気を知ったとき、わたしは賭けてみようと思った。ほんの少しの間だけ、お前を家族のもとへ帰らせて、その上でお前がまたこちらに帰ってきてくれるのかどうかを…もし、もしお前に裏切られたら、わたしは人間に戻れなかった。そればかりか、命まで失うところだったんだ。しかし、この命がどうなろうと、わたしは賭けてみた。お前の誠意に賭けてみたんだ」
青年は敢えて「愛に」とは言わなかった。
──万が一ぼくが戻らなかったら、ウォルター様は死んでいたってことか……
そんなことを考えたジャンティーは今さらになってゾッとして、戦慄のあまり冷や汗をかいた。
汗はジャンティーの背中を伝っていき、かつて青年が野獣だった頃にくれた上等な服に吸い込まれていく。
しかし、そんな戦慄もあっという間に消え失せて、いまは美しい青年へと戻った野獣を、ジャンティーはうっとりと見つめた。
そんな些細な仕草すら、とても美しい。
サファイアのようにキラキラした青い瞳、夏の太陽のように光り輝く金髪、陶器のように白い肌。
「ジャンティー、ありがとう。お前のおかげで長くかかっていた魔法がとけた」
青年が手を差し伸べたまま、にっこり微笑みかける。
「どういうことなんです?あなたはどこの誰です?ウォルター様は、いったいどこに?」
「わたしがウォルターだよ。さっきまで、お前の腕の中にいた。そして、お前はわたしのために涙を流してくれた。とても嬉しいよ」
「信じられません。いったい、どうしてこんなことが……」
ジャンティーは困惑するばかりだった。
「そうだね。ちゃんと話すから聞いておくれ、わたしの身の上話を」
青年はジャンティーに目線を合わせるようにして、その場に座り込んだ。
「そもそもは人間の世界の醜さを嘆いたがために、あんな醜い野獣に変わってしまったわたしだが、いつしかわたしは、こんな姿のまま生きることが辛くなり始めていた。だから、また神に祈った。「身勝手だとはわかっています、人間の姿に戻してください」と祈った」
「祈って……それで、どうしたのです?」
やや興奮気味に話す青年に対して、いまだに話が見えてこないジャンティーは、その続きが気になった。
「ひたすら祈って祈り続けて、その祈りはもう届かないのだと諦めたときだった。神はわたしに応えてくださったんだ。ある啓示をしてくれたんだ」
「啓示って、何をです?」
ジャンティーは、ドキドキしながら尋ねた。
神はいったい、この青年に何を告げたのだろう。
「神はおっしゃった。いつかこの世で本当に美しいもの。本当に、心の底から信じられるものに巡り会ったとき、わたしは人間の姿に戻る機会を与えられる。その日まで待つのだと」
青年がさらに続けた。
「お前がこの城にやって来たとき、わたしはついにそのときが来たのだと考えた。お前こそが本当に美しく、心の底から信じられるものを与えてくれる。いや、それそのものなのだと……」
「お前の父親の病気を知ったとき、わたしは賭けてみようと思った。ほんの少しの間だけ、お前を家族のもとへ帰らせて、その上でお前がまたこちらに帰ってきてくれるのかどうかを…もし、もしお前に裏切られたら、わたしは人間に戻れなかった。そればかりか、命まで失うところだったんだ。しかし、この命がどうなろうと、わたしは賭けてみた。お前の誠意に賭けてみたんだ」
青年は敢えて「愛に」とは言わなかった。
──万が一ぼくが戻らなかったら、ウォルター様は死んでいたってことか……
そんなことを考えたジャンティーは今さらになってゾッとして、戦慄のあまり冷や汗をかいた。
汗はジャンティーの背中を伝っていき、かつて青年が野獣だった頃にくれた上等な服に吸い込まれていく。
しかし、そんな戦慄もあっという間に消え失せて、いまは美しい青年へと戻った野獣を、ジャンティーはうっとりと見つめた。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
ルティとトトの動画を作りました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
本編、両親にごあいさつ編、完結しました!
おまけのお話を、時々更新しています。
本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。です!
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
【8話完結】俺は推しじゃない!ただの冒険者だ!
キノア9g
BL
ごく普通の中堅冒険者・イーサン。
今日もほどほどのクエストを探しにギルドを訪れたところ、見慣れない美形の冒険者・アシュレイと出くわす。
最初は「珍しい奴がいるな」程度だった。
だが次の瞬間──
「あなたは僕の推しです!」
そう叫びながら抱きついてきたかと思えば、つきまとう、語りかける、迫ってくる。
挙句、自宅の前で待ち伏せまで!?
「金なんかねぇぞ!」
「大丈夫です! 僕が、稼ぎますから!」
平穏な日常をこよなく愛するイーサンと、
“推しの幸せ”のためなら迷惑も距離感も超えていく超ポジティブ転生者・アシュレイ。
愛とは、追うものか、追われるものか。
差し出される支援、注がれる好意、止まらぬ猛アプローチ。
ふたりの距離が縮まる日はくるのか!?
強くて貢ぎ癖のあるイケメン転生者 × 弱めで普通な中堅冒険者。
異世界で始まる、ドタバタ&ちょっぴり胸キュンなBLコメディ、ここに開幕!
全8話
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる