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運命?
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※さくちゃんとかっきーが付き合い始めてからのショートストーリーです。
※付き合い始めるまでの物語は『さくらと遥香』46時間TV編をお読み下さい。
今日は、毎年夏になると恒例の音楽番組の生放送。
リハ着で振り付けや立ち位置の確認を終えて、あとは21時台になったら本番の衣装でパフォーマンスするだけだ。
私は、本番用の衣装がずらっと並んでハンガーにかかっている光景を前に、ひそかに喜びを噛みしめていた。
なぜなら…
(えへへ……今日の衣装、かっきーとお揃いなんて嬉しいなぁ…これってもしかして、運命ってやつ…?)
今日披露する曲は、私たちが加入する前に先輩たちがレコード大賞を授賞したこともある、代表曲の一つだ。
これまで数々のステージで披露されてきた曲ということもあって、衣装もたくさん作られてきた。
その数、なんと10パターン。
今夜のステージでは10パターン全ての衣装が登場するのが最大の注目ポイントになっている。
ステージに立つメンバーは17人だから、同じパターンの衣装を着るペアが何組が出来上がる。
その一つが、私とかっきーのペアだ。
誰が決めてくれたのかは分からないけど、私とかっきーに同じ衣装を割り当ててくれた誰かに心の中で感謝していた。
するとそこへ……
「ん、、?え?さく?」
「ん…?あっ、レイ、どうしたの?」
同期のレイが近くを通りかかって、少し驚いたような顔で声をかけてきた。
「さく、今、一人で笑ってなかった…?」
「え?!うそっ?」
「うん……なんか、珍しいね?良いことでもあった?」
完全に無意識だった。
(かっきーとお揃いで嬉しいのが顔に出ちゃってたのかな…?気を付けないと…)
私とかっきーが付き合ってることはみんなには秘密にしておかないといけない。
「いや、うーん、ほら、今日の衣装、わたし結構気に入ってるんだよね。それで、かな?」
「そういえばさくとかっきーはお揃いなんだよね~。良いなぁ、私は誰ともお揃いじゃないからちょっと寂しいよぉ…」
「え~?レイの赤い衣装もすっごく似合っててキレイだよ?」
お世辞ではなかった。
レイの衣装はたしかに誰ともお揃いではないけど、言い換えれば今日のステージ上で唯一無二の衣装だ。
それが、レイにはよく似合っていると思う。
「ふふっ、さく、ありがと」
今日も、太陽みたいな笑顔。
そんな調子で談笑していると……
「さくとかっきーって、なんだか運命的だよねぇ…」
「えっ?!」
レイの唐突な発言に、思わず声を上げて驚いてしまう。
「だって、同期で同い年で、2人ともずっと一緒に選抜で。それで今日の衣装もお揃いなんてさ。もうなんか運命みたいじゃん!」
(…運命……)
さっき私が一人で考えていたことをそのまんま言い当てられたみたいで、恥ずかしさで何も言えなくなってしまう。
しかもそこへ、噂をしていたかっきーもやって来た。
タイミングが良いのか悪いのか……
「あっ、さくちゃんとレイちゃんだー」
「かっきー、あのね、今さくにと話してたんだけど…」
レイがかっきーに説明を始める。
ついさっき私に話した、運命の話。
レイの話を聞きながら、たまに私のほうをチラチラと見るかっきー。
(かっきーは……どう思うんだろう…?)
私は嬉しかったけど、かっきーも同じ気持ちなのかな…
そうだったら、すごく嬉しいけど…
レイの話をすぐに理解したかっきーは、照れる様子もなく私に向かってイタズラっぽい笑みを向けてきた。
かっきーが何か思い付いた時の顔、のような気がする。
そのまま近付いてくると、私の腕に自分の腕を絡めてきて手をつないできた。
(えっ…??)
そして、恋人つなぎにした私たちの手をレイに見せつけながら、得意気な顔を向ける。
「ふふふ…さくちゃんとお揃いの衣装、いいでしょ~?運命みたいでしょ~?」
「か、かっきー……?!」
動揺で声が裏返ってしまう。
(そんな、堂々と…いいの…?!)
私たちが付き合ってるのはメンバーにも秘密、というのはかっきーも分かってるはずなのに。
「うっわ!かっきー、めっちゃドヤ顔!!なんか腹立つ!!もー、写真撮ってグループのLINEに投稿してやる!」
「あはは!さくちゃん、一緒に逃げよう!」
私の手を引いて、衣装部屋から走り出すかっきー。
…………
適当なところまで走り、レイが追ってきてないことを確認する。
少し息を切らしたかっきーが、私に笑いかけてきた。
してやったり、という顔だ。
「もぉ~…かっきー……」
「ん?なぁに?」
「私たちのこと疑われるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ~……あと、恥ずかしいし…」
「だいじょーぶだよ。ああいう時って、下手に隠すより相手の話に乗っかったほうがバレにくいと思うんだよね」
「そうかなぁ…」
かっきーの言うことは半信半疑だったけど、たしかにレイには変な目では見られなかった、かもしれない。
「それに…さ…」
「ん?」
「嬉しいじゃん…?さくちゃんと私の関係が運命みたいだなんて言われたら…」
「それは……うん…私も嬉しかった…」
「でしょ?だから、さくちゃんもレイちゃんに向かってドヤ顔して見せればよかったんだよ~」
「え~?私は無理だよ~、あんな顔…」
「ちょっ…さくちゃん、『あんな顔』ってひどくない…?」
「えっ、ちがうちがう!かっきーのドヤ顔が変だったとか、そういう意味じゃなくて…!」
大袈裟に落ち込んだ顔を見せてくるかっきーを必死にフォローする。
それでも結局、最後は2人でたくさん笑い合った。
こんな幸せな時間がいつまでも続く。
私とかっきーに、そんな運命が待ってますように。
~おしまい~
※付き合い始めるまでの物語は『さくらと遥香』46時間TV編をお読み下さい。
今日は、毎年夏になると恒例の音楽番組の生放送。
リハ着で振り付けや立ち位置の確認を終えて、あとは21時台になったら本番の衣装でパフォーマンスするだけだ。
私は、本番用の衣装がずらっと並んでハンガーにかかっている光景を前に、ひそかに喜びを噛みしめていた。
なぜなら…
(えへへ……今日の衣装、かっきーとお揃いなんて嬉しいなぁ…これってもしかして、運命ってやつ…?)
今日披露する曲は、私たちが加入する前に先輩たちがレコード大賞を授賞したこともある、代表曲の一つだ。
これまで数々のステージで披露されてきた曲ということもあって、衣装もたくさん作られてきた。
その数、なんと10パターン。
今夜のステージでは10パターン全ての衣装が登場するのが最大の注目ポイントになっている。
ステージに立つメンバーは17人だから、同じパターンの衣装を着るペアが何組が出来上がる。
その一つが、私とかっきーのペアだ。
誰が決めてくれたのかは分からないけど、私とかっきーに同じ衣装を割り当ててくれた誰かに心の中で感謝していた。
するとそこへ……
「ん、、?え?さく?」
「ん…?あっ、レイ、どうしたの?」
同期のレイが近くを通りかかって、少し驚いたような顔で声をかけてきた。
「さく、今、一人で笑ってなかった…?」
「え?!うそっ?」
「うん……なんか、珍しいね?良いことでもあった?」
完全に無意識だった。
(かっきーとお揃いで嬉しいのが顔に出ちゃってたのかな…?気を付けないと…)
私とかっきーが付き合ってることはみんなには秘密にしておかないといけない。
「いや、うーん、ほら、今日の衣装、わたし結構気に入ってるんだよね。それで、かな?」
「そういえばさくとかっきーはお揃いなんだよね~。良いなぁ、私は誰ともお揃いじゃないからちょっと寂しいよぉ…」
「え~?レイの赤い衣装もすっごく似合っててキレイだよ?」
お世辞ではなかった。
レイの衣装はたしかに誰ともお揃いではないけど、言い換えれば今日のステージ上で唯一無二の衣装だ。
それが、レイにはよく似合っていると思う。
「ふふっ、さく、ありがと」
今日も、太陽みたいな笑顔。
そんな調子で談笑していると……
「さくとかっきーって、なんだか運命的だよねぇ…」
「えっ?!」
レイの唐突な発言に、思わず声を上げて驚いてしまう。
「だって、同期で同い年で、2人ともずっと一緒に選抜で。それで今日の衣装もお揃いなんてさ。もうなんか運命みたいじゃん!」
(…運命……)
さっき私が一人で考えていたことをそのまんま言い当てられたみたいで、恥ずかしさで何も言えなくなってしまう。
しかもそこへ、噂をしていたかっきーもやって来た。
タイミングが良いのか悪いのか……
「あっ、さくちゃんとレイちゃんだー」
「かっきー、あのね、今さくにと話してたんだけど…」
レイがかっきーに説明を始める。
ついさっき私に話した、運命の話。
レイの話を聞きながら、たまに私のほうをチラチラと見るかっきー。
(かっきーは……どう思うんだろう…?)
私は嬉しかったけど、かっきーも同じ気持ちなのかな…
そうだったら、すごく嬉しいけど…
レイの話をすぐに理解したかっきーは、照れる様子もなく私に向かってイタズラっぽい笑みを向けてきた。
かっきーが何か思い付いた時の顔、のような気がする。
そのまま近付いてくると、私の腕に自分の腕を絡めてきて手をつないできた。
(えっ…??)
そして、恋人つなぎにした私たちの手をレイに見せつけながら、得意気な顔を向ける。
「ふふふ…さくちゃんとお揃いの衣装、いいでしょ~?運命みたいでしょ~?」
「か、かっきー……?!」
動揺で声が裏返ってしまう。
(そんな、堂々と…いいの…?!)
私たちが付き合ってるのはメンバーにも秘密、というのはかっきーも分かってるはずなのに。
「うっわ!かっきー、めっちゃドヤ顔!!なんか腹立つ!!もー、写真撮ってグループのLINEに投稿してやる!」
「あはは!さくちゃん、一緒に逃げよう!」
私の手を引いて、衣装部屋から走り出すかっきー。
…………
適当なところまで走り、レイが追ってきてないことを確認する。
少し息を切らしたかっきーが、私に笑いかけてきた。
してやったり、という顔だ。
「もぉ~…かっきー……」
「ん?なぁに?」
「私たちのこと疑われるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ~……あと、恥ずかしいし…」
「だいじょーぶだよ。ああいう時って、下手に隠すより相手の話に乗っかったほうがバレにくいと思うんだよね」
「そうかなぁ…」
かっきーの言うことは半信半疑だったけど、たしかにレイには変な目では見られなかった、かもしれない。
「それに…さ…」
「ん?」
「嬉しいじゃん…?さくちゃんと私の関係が運命みたいだなんて言われたら…」
「それは……うん…私も嬉しかった…」
「でしょ?だから、さくちゃんもレイちゃんに向かってドヤ顔して見せればよかったんだよ~」
「え~?私は無理だよ~、あんな顔…」
「ちょっ…さくちゃん、『あんな顔』ってひどくない…?」
「えっ、ちがうちがう!かっきーのドヤ顔が変だったとか、そういう意味じゃなくて…!」
大袈裟に落ち込んだ顔を見せてくるかっきーを必死にフォローする。
それでも結局、最後は2人でたくさん笑い合った。
こんな幸せな時間がいつまでも続く。
私とかっきーに、そんな運命が待ってますように。
~おしまい~
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