【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ

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1話「神が消えた日」

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【本日付けで神を辞めることにした】




王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。

二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。

フラワーシャワーを巻き、王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。

王太子は突然現れた不吉な文字に動揺を隠せない。

王太子妃は「せっかくの結婚式が台無しよ」と言い眉をひそめた。

次の瞬間轟音ごうおんとともに教会にあった竜神ウィルペアトの像が壊れ、周囲は騒然となった。

竜神ウィルペアトの像の倒壊は教会だけにとどまらず、王宮・王都の広場・貴族の館などに設置されたモニュメントやレリーフ、各家々の軒先に設置された小さな像にいたるまで、竜神ウィルペアトと名のつくすべての物が音を立てて崩れ落ちた。

竜神ウィルペアト……二百年前、荒れた大地が続き凶悪なモンスターが闊歩かっぽし、飢えとモンスターの襲撃におびえて暮らしていた当時のシュトース国を救った竜人。

人々はウィルペアトは竜神として崇め、この地に留まることを望んだ。

竜神ウィルペアトは民の願いを聞き届け、シュトース国に留まることを決めた。

竜神ウィルペアトは国境に壁を築きモンスターの侵入を防いだ、壁は結界の役目を果たしており、国内にいたモンスターは弱体化した。

さらにウィルペアトは干からびて作物の育たない土地に雨を降らせ、大地を潤し、豊穣ほうじょうをもたらした。

そしてか弱い人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた。

それによりシュトース国の民は剣を簡単に扱えるようになり、高度な魔法を扱えるようになった。

畑には小麦が実り、果樹園には桃やりんごや梨などの果物がたわわに実った。

国民は平民に至るまで三食食事をとることが普通となった。

またシュトース国で取れた野菜や果物は味がよく、高値で売れた。

シュトース国の畑で育てた薬草は、高い効果を発揮することを知られ、薬草は高額で取引された。

シュトース国の川や泉の水さえ、その水で調合すると薬の効能が上がるとされ高値がついた。

体強化の効果により、木こりはたやすく木を切り倒せるようになり、猟師はモンスターや動物をた簡単に狩れるようになった。

竜神ウィルペアトの加護を受け、シュトース国は見違えるように豊かになり、民は安寧な生活を手に入れた。

荒れ果てた大地にモンスターが闊歩かっぽし、痩せた大地がどこまでも続き、ひえやあわを主食とし、モンスターにおびえながらぼそぼそと暮らしていたシュトース国は過去のものとなり、人々の竜神ウィルペアトへの信仰心と感謝の心は徐々に薄れていった……。









二百年に渡りシュトース国に数々の恩恵をもたらしてきた竜神ウィルペアト。

その竜神ウィルペアトが長きに渡る沈黙を破り、【本日付けで神を辞めることにした】と全国民にメッセージを発した。

しかもこの国の未来を担う王太子と、現役聖女であり竜神ウィルペアトに特別から加護を受けた【竜の愛し子】であるカーラ・ノルデンとの結婚式の直後にだ。

国民の動揺は計り知れない。

「皆のもの落ち着け! これは先代の聖女ブルーナの嫌がらせに違いない! ブルーナはカーラの異母姉でありながら長年に渡りカーラを虐げてきた! あの悪女ならこのぐらいの嫌がらせを平気でするだろう! あの女には投獄するだけでは罰が足りなかったようだ! 俺の手で諸悪の根源であるブルーナの首をねる! なので皆、安心してくれ!」

王太子が列席者に向けて芝居がかった口調で話したが、人々は落ち着きを取り戻すどころか、余計に混乱するだけだった。




【追伸、私は神を辞め愛に生きることにした、私の愛した相手は先代の聖女のブルーナだ。

ブルーナほど美しい心を持った女性に私は出会ったことがない。

そう、君たちが偽聖女の汚名を着せ罵倒し石を投げつけ投獄したあのブルーナだよ。

彼女は本物の【竜の愛し子】だったのに……誰も気づかなかったね、君たちがブルーナをいらないというのなら私がもらうよ】




王太子の言葉はまたもや壁や窓に映し出された文字によって打ち消された。

シュトース国では魔力の高い女性を選び、竜神ウィルペアトに祈りをささげる聖女とする習わしがある。

聖女の中でも背中に竜の模様が浮かび上がった者は【竜の愛し子】と呼ばれ、竜神ウィルペアトの加護を強く受けていると言われ、人々の畏敬いけいの対象だった。

三カ月前カーラは背に竜の模様が浮かび上がったことで、【竜の愛し子】と認定され、王太子の婚約者の地位を得た。

ブルーナは【竜の愛し子】であるカーラを虐げていた罪で、王太子に婚約破棄され偽者の聖女として断罪された。

なのに壁に映し出された謎の文字には、竜神ウィルペアトが加護を与えた本物の【竜の愛し子】は、王太子が偽聖女として断罪したブルーナだ記されている。

その事実は人々を戦慄せんりつさせるのに充分な効果を発揮した。

人々はこれからどうしたらいいんだと不安を漏らし、一人一人の呟きは初めは小さなものだったが、やがてさざめきとなって広がり、教会は騒然となった。

王太子が「こんなものはまやかしだ!」と喚くが、誰も聞く耳を持たない。

王太子の結婚式に招かれた貴族たちは、王太子が三カ月前のパーティーで本物の【竜の愛し子】であるブルーナにしたことを思い出し、顔を青ざめさせた。

「嘘っ、お姉様が竜神と一緒だなんて……そんなの……ずるいわ!」

人々が青ざめるなか、カーラだけは眉間にシワを寄せ異母姉への恨み言を吐いていた。

『こんなときまで姉がずるいだなんだの言っているのか? 今は竜神ウィルペアトの加護が消えた一大事だというのに! 元はといえばカーラがブルーナの悪口を俺に吹き込んだから……!』

王太子は自身の隣で姉を呪う言葉を吐き続けるカーラに辟易へきえきし、婚約者選びを間違ったことを後悔していた。

王太子と王太子妃のパレードを見るために大通りに集まっていた民衆は、先日偽聖女として素足で連行されていくブルーナに、石を投げたことを激しく悔やんでいた。

「まさかあの方が【竜の愛し子】様だったなんて……! 俺たちはなんてことをしてしまったんだ……!」

人々はそう漏らし、その場で膝をつき竜神ウィルペアトに許しを請うが、神からの返信はなかった。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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【書籍化のお知らせ】
この度、下記作品が書籍化されることになりました。

「彼女を愛することはない 王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」
著者 / まほりろ 
イラスト / 晴
販売元 / レジーナブックス
発売日 / 2025年01月31日
販売形態 / 電子書籍、紙の書籍両方 

こちらもよろしくお願いします。


https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804



2025年1月16日投稿の新作中編もよろしくお願いします!
「拾った仔犬が王子様!? 未来視のせいで男性不信になった伯爵令嬢は獣耳王子に溺愛される」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233933527

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