1 / 7
1話「偶然の出逢い」
しおりを挟む僕と彼女の出逢いは偶然だった。
街にお忍びで遊びに来ていた僕は護衛とはぐれてしまった。
道を横断しようとして馬車にひかれそうになった僕を、助けてくれたのが彼女だった。
「急に飛び出したら危ないでしょう! 死にたいの!」
と言って本気で怒ってくれた彼女に僕の胸はときめいた。
「道を横断する時は左右を確認する! 子供でも知ってることだよ!」
彼女は眉間にしわを作りそう言った。
「すまない。いつもは護衛が前後左右の確認をするので道を横断するとき左右を確認するという習慣がなかった」
王太子である僕にはいつも護衛がついていた。
僕が道を歩く時は護衛が左右を確認してくれた。
「はぁ? 何それ? 本気で言ってるの? だとしたらあなた相当いいところのおぼっちゃまだね」
そう言って呆れたように笑う彼女の横顔に胸がキュンとなった。
彼女は食堂で働いている平民の少女でラーラといった。
ラーラは栗皮色の髪に琥珀色の瞳、すっと通った鼻筋、形の良い唇、折れそうな細い腰、華奢な体躯、笑顔が可愛い可憐な少女だった。
僕はお礼を兼ねて彼女を食事に誘った。
「こんな服で高級レストランに入れない」という彼女にドレスとアクセサリーと靴をプレゼントした。
レストランで出される料理全てに「美味しい!」と言って顔を綻ばせる彼女を好ましく思った。
くるくると表情の変わるラーラは見ていて飽きなかった。
その後も僕は何度もラーラに会いに行った。
ラーラは僕に下町を案内してくれたんだ。
見るもの聞くもの全てが新鮮で、ラーラと一緒に過ごす間、終始僕の胸は高鳴っていた。
ラーラとずっと一緒にいられたら……だが僕には親が決めた婚約者がいる。
クロル公爵家の令嬢ナディアだ。
ナディアは銀色の髪にラベンダー色の瞳の同い年の少女。
ナディアは美人だと思う。しかし僕はナディアに対し心が華やぐような感情を抱いたことがない。
ナディアとは月に一度婚約者の公爵家を訪れ、一定時間一緒にお茶を飲むだけの関係だ。
ナディアの方は僕に惚れているようだが、僕はナディアに興味がない。
いつも笑顔を浮かべて僕の話にコクコクと頷くだけの綺麗なだけのお人形、それが僕のナディアに対する評価だ。
このまま行けば卒業後すぐにナディアと結婚することになる。
決められたレールの上を進むのが嫌で、僕はラーラにプロポーズした。
「ラーラ僕と結婚して欲しい。
僕は王太子だから親の決めた婚約者と結婚しなくてはいけない。
君は平民だから側室にはできないけど妾として囲うよ。
一生暮らしに不自由はさせない。
身分の差が邪魔して君を正室にできないのは口惜しいけど僕の心は君だけのものだ。
君だけを永遠に愛するよ!」
愛するものを妾として側に置き正室より寵愛する、それが僕の精一杯の反抗だった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
2022年10月3日、アルファポリスに新作小説を5本投稿します。
※5作品とも女性向け、完結保証、最終話まで予約投稿済みです。
※4作品は異世界が舞台の恋愛小説、1作品は現代が舞台のミステリー小説です。
よろしくお願いします!
【連載】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」異世界恋愛
【連載】「ループ三回目の悪役令嬢は過去世の恨みを込めて王太子をぶん殴る!」異世界恋愛
【連載】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」異世界恋愛
【連載】「王太子だった俺がドキドキする理由」異世界恋愛
【連載】「また異世界誘拐が流行り始めたんだってよ!」現代/ミステリー
60
あなたにおすすめの小説
【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。
姉にざまぁされた愚妹ですが何か?
リオール
恋愛
公爵令嬢エルシーには姉のイリアが居る。
地味な姉に対して美しい美貌をもつエルシーは考えた。
(お姉様は王太子と婚約してるけど……王太子に相応しいのは私じゃないかしら?)
そう考えたエルシーは、自らの勝利を確信しながら動き出す。それが破滅への道とも知らずに……
=====
性懲りもなくありがちな話。だって好きだから(•‿•)
10話完結。※書き終わってます
最初の方は結構ギャグテイストですがラストはシリアスに終わってます。
設定は緩いので何でも許せる方向けです。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!!
婚約破棄から幸せになる物語です。
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
あなたをずっと、愛していたのに 〜氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~
柴野
恋愛
「アナベル・メリーエ。君との婚約を破棄するッ!」
王子を一途に想い続けていた公爵令嬢アナベルは、冤罪による婚約破棄宣言を受けて、全てを諦めた。
――だってあなたといられない世界だなんて、私には必要ありませんから。
愛していた人に裏切られ、氷に身を閉ざした公爵令嬢。
王子が深く後悔し、泣いて謝罪したところで止まった彼女の時が再び動き出すことはない。
アナベルの氷はいかにして溶けるのか。王子の贖罪の物語。
※オールハッピーエンドというわけではありませんが、作者的にはハピエンです。
※小説家になろうにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる