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6話「ラーラの最後」
しおりを挟む翌日、ラーラは遺体で発見された。
ラーラの隣には二枚目と評判の吟遊詩人の死体も転がっていた。
二人のバッグから金目のものがなくなっていたことから、地元の騎士団は物取りと判断した。
騎士団の話では吟遊詩人はラーラの浮気相手で、ラーラは吟遊詩人と駆け落ちしようとしていたらしい。
そして駆け落ち当日、運悪く強盗に遭遇し殺された……。
妻が殺されたことで夫である僕も疑われたが、騎士団の奴らは僕が国王の第一子であると知ると掌を返した。
そして王族の体裁を考えてかラーラの死は事故として処理され、ラーラと吟遊詩人の関係も、ラーラの妊娠も公にはされなかった。
王位継承権を捨てて結婚した女が死んだのに、不思議と悲しくはなかった。
男爵領に来てからのラーラの態度が酷すぎて、僕のラーラに対する愛情も関心も薄れていた。
今ならなぜラーラに惹かれたのかわかる……珍しかったんだ。
ラーラは王太子だった頃の僕の周りにはいないタイプの人間だった。
珍しいものに触れた好奇心を愛と勘違いしていた。
下町にいけば、ラーラのような女は掃いて捨てるほどいるというのに。
ラーラが死んだいま男爵領にいる意味はない。
しかし父との約束で男爵領から出ることも再婚することも許されていない。
残りの人生を一人寂しく過ごすのかと思ったら、胸がズキリと痛んだ。
ラーラの葬式に父や母が来てくれないかと期待した。
両親に今までの行動を誠心誠意侘びて、王都に戻してもらおうと思ったからだ。
しかし父も母もラーラの葬儀に来ることはなかった。
ラーラの葬儀に参列したのは屋敷の使用人だけだった。
ラーラは領民に好かれていなかったので、葬式に領民の姿はない。
そんな中、僕の学生時代の友人が葬儀に参列してくれた。
ルイス・ニクラス伯爵令息、いや卒業後家督を継いだから今は伯爵か。
僕が王太子だった頃、クラスメイトのよしみで派閥に入れてやった地方出身の貧乏伯爵家のルイスが、今は僕より高い身分にいるのかと思うと複雑な気分だった。
ルイスの治める伯爵領と僕の統治する男爵領は隣同士。
彼がラーラの葬儀に参列してくれたのは旧友としてのよしみというより、隣の領地を治める伯爵としての義理だろう。
ルイスは商売をやっていてよく王都に行くらしい。パーティーで弟と会話することもあるという。
幼い頃から僕の側近を務めていた公爵令息や侯爵令息に比べて財産が少ないというだけで、ニクラス伯爵家は貧乏ではなかった。
少なくとも今の僕の何倍もお金を持っている。
他に王都のことを聞ける相手もいないので、ルイスに王都のことを尋ねた。
「なぜ父上と母上はラーラの葬儀に参列しないのか?」と。
ルイスは心底呆れた様子でこう答えた、
「王位継承権を剥奪した息子の嫁、しかもかつて平民だった女の葬儀に陛下や王妃様が参列なさるはずがないでしょう」と。
「僕は自ら王位継承権を放棄したんだ、剥奪されたわけじゃない」
僕がそう反論すると、ルイスは王都でのことを教えてくれた。
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