19 / 55
改稿前
18話「独占欲かもしれませんが……」
しおりを挟む「……っ!」
これがいわゆるプロポーズというものなのでしょうか?
へーウィット様と婚約したときは、国王陛下と父が勝手に決めてしまったので、プロポーズも愛の告白もありませんでした。
政略的な婚約で、へーウィット様と結婚しても白い結婚生活になるのかしら……と子供心に思ったものです。
「えっと……あの」
何か言わなくては。
アルドリック様が捨てられた子犬のような目で正視される。
十年前の夏の終わり、帝国に帰っていくアルドリック様を思い出してしまいました。
あの日のアルドリック様もこのような目をしておりました。
遠ざかっていく馬車を見送り、胸が締め付けられたのを思い出します。
あのときは来年もまた会えると思っていました。
ですがアルドリック様と再会出来たのは十年後でした。
私は……アルドリック様のことをどう思っているのでしょう?
アルドリック様は大切なお友達です。
でもそれ以上に、もっと特別な何かがあるとしたら……?
へーウィット様が妹のミラと一緒にいても、へーウィット様に婚約破棄されても、何も感じませんでした。
アルドリック様が他の方と仲むつまじくしていたら? 腕を組んで歩いたり、抱き合ったりしていたら?
想像しただけで胸がズキズキと痛みます。
「私は……アルドリック様が他の方と仲良くするのは……嫌です」
「それはどういう意味だ?」
私がやっと絞り出した言葉を聞いたアルドリック様が小首をかしげる。
「恋とか愛とかよく分からないのです、でも……アルドリック様が他の方と腕を組んで歩いていたり抱き合っていたら……嫌だなと思いました」
「それはつまり……!」
アルドリック様が期待のこもった瞳で私を見る。
「子供っぽい独占欲かもしれません、アルドリック様が他の方と仲良くしている姿を想像するだけでもやもやするんです。こんなはっきりしない気持ちで、曖昧な答えしか出せませんが……私、アルドリック様のお側にいたいです。それでもよろしいですか……?」
アルドリック様の手に自身の手を重ねる。
「もちろんだ! それで充分だ! ありがとう! リーゼロッテ!」
アルドリック様が満面の笑みを浮かべる。
アルドリック様が私の腰を掴み抱き上げる。
「ひゃっ……!」
「今日は人生で最良の日だ!」
くるくると回り始めました。
「皇太子殿下、はしゃぎすぎです。ぎりぎり合格点の返事をもらってよくそこまではしゃげますね」
カイル様がやれやれと言って肩をすくめる。
「これから満点にしていくさ!」
アルドリック様が花が綻ぶように笑う。
「アルドリック様……目が回ります」
何度もくるくると回転されて、私は完全に目を回していた。
「すまない」
アルドリック様が回転するのをやめ、床に下ろして下さった。
「ふわっ……!」
足元がおぼつかないわたしをアルドリック様が支えて下さる。
「ふふっ」
至近距離にアルドリック様の顔があって、お互いの顔を見合わせて思わず笑ってしまいました。
「アルドリック様、これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む、リーゼロッテが倒れないように全力で支える」
ほほ笑み合う私達を見て。
「たわむれ合うのもほどほどにして下さい、先ほどからお二人のいちゃいちゃを見せつけられて、こっちはお腹いっぱいなんですから」
カイル様が苦笑いを浮かべ小声で呟いた。
348
あなたにおすすめの小説
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~
京月
恋愛
それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」
(完結)モブ令嬢の婚約破棄
あかる
恋愛
ヒロイン様によると、私はモブらしいです。…モブって何でしょう?
攻略対象は全てヒロイン様のものらしいです?そんな酷い設定、どんなロマンス小説にもありませんわ。
お兄様のように思っていた婚約者様はもう要りません。私は別の方と幸せを掴みます!
緩い設定なので、貴族の常識とか拘らず、さらっと読んで頂きたいです。
完結してます。適当に投稿していきます。
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる