第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ

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改稿版

改12話「リアーナは船内で大人気」

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「オレの足の怪我を見てくれ! 骨折してるんだ!」
「わしは腰痛がひどくてのう……!」
「私の火傷の治療も治して!」
「うちの娘には、顔に深い切り傷があるの!」
「オレの孫には、背中に大きな火傷の痕があるんだ!」
 甲板で魚に襲われた船員さんを治療したことが話題になり、私の部屋に人が押し寄せてきた。
 部屋に知らない人をいれることはできない。
 それに客室で治療していたら、周りの部屋の人に迷惑をかけてしまう。
 事情を察したドミニクさんが、船員さんに頼んで治療用の部屋を用意してくれた。
「横入りするなよ。
 ちゃんと並ぶんだぜ」
「治療は順番だからね」
 ドミニクさんとゲルダさんが、押し寄せる患者さんの整理をしている。
 皆さん事情を聞くと、聖女を頼り、ハルシュタイン王国へ行ったそうだ。
 船に乗り、海を越えて、大金を払って回復魔法をかけてもらったのに、思ったほど効果を得られなかったそうだ。
 お金と時間をかけてハルシュタイン王国に来てくださったのに、治療の効果がなかったなんて……。
 元最高聖女として責任を感じる。
 何人かの口から「ミラ」の名前が上がった。
 ミラの回復魔法は大した効果がない上に、治療費が高いようです。
 ミラの姉として、妹が不完全な治療を施した人たちを放置できない。
 私は彼らを無償で治療することにした。

「おいそこっ! 割り込むな!
 治療をしてほしいなら順番を守るんだ!」
 十人ほど治療したとき、廊下からドミニクさんの怒鳴り声が聞こえた。
 何事かと部屋の外に出てみると、廊下には長蛇の列ができていて、順番待ちをしていた患者さんの一人が横入りしたようだった。
「そうは言っても聖女様の魔力にだって限りがあるんだろ?
最大マクシムム・回復《ベッセルング》』は最上級の回復魔法だ。
 一日に何回も使える魔法じゃない」 確かに、「最大マクシムム・回復《ベッセルング》」は、初級魔法の「回復《ベッセルング》」よりは魔力を使います。
「あの少女が治療できるのは、せいぜい一日十人か二十人程度だろう?
 俺の順番が来る前に彼女の魔力が尽きてしまう!」
 横入りした男性は、私の魔力切れを心配していたのですね。
「この船は五日もすればルーデンドルフ帝国に着いちまう!
 そうなれば俺達は治療は受けられない!
 俺は飾り職人なんだ!
 それなのに、手に大怪我をして以来指が動かせない!
 治療してもらわないと、商売上がったりなんだよ!
 家にはかみさんと小さな子供がいるんだ……!」
 男性は腕を押さえ苦悩の表情を浮かべる。
「そんなこと言ったらあたしの娘はどうなるんだい!?
 顔に大きな火傷の痕があるんだよ!
 まだ十歳なのに……!
 このままでは、大人になっても嫁ぎ先がみつからないよ!」
 三十代ぐらいの女性が瞳に涙を浮かべ、顔に包帯をした少女を抱きしめた。
「わしの足の怪我を治すのが先じゃ!!
 運搬業をやってるのに荷物の上げ下げもできん!」
 五十代ぐらいの足にギブスを付けた男性が、松葉杖で床にドンとついた。
 どうやら、治療の順番を巡って争っているようだ。
 ドミニクさんとゲルダさんが、順番を守るように説得しているが、あまり効果はないようだ。
「あの、皆さん私の魔力量が無くなることを心配をしているようですが、その心配いりませんよ」
 私が声をかけると、皆が一斉にこちらを向いた。
「一日千人までなら治療できます。
 だから順番を守ってください?
 一晩休めば魔力は回復しますので、千人を超えた場合は、次の日治療しますから」
 争っている人たちの声はもう聞こえない。
 皆がキョトンとした顔で私を見ている。
「一日千人、治療できるっていうのか……?」
 手に火傷を負ったという男性が尋ねてきた。
「はい」
「今日中に治療できなかった方は、明日必ず治療します。
 船が港に着くまでには、治療を希望する人全員を治すと約束します。
 だから横入りはやめてください」
 この船に何人乗っているかはわからない。
 船がブルーメ大陸につくまでに五日程かかる。
 それだけ時間があれば全員を治療できるはずだ。
「リアーナ、この船には千人も乗ってない。
 船員も入れてせいぜい五百人ってところだ」
「まぁ、そうだったのですか?」
 ドミニクさんに説明されて、船に何人乗っているか初めて知った。
「そ……そういうことなら、横入りする必要はなさそうだな……」
「大人なんだから順番を守らないとな……」
「おじいさん、腰が痛そうですね。
 順番を譲りますわ。
 お先にどうぞ」
「これはすまんのう」 
 先程まで順番を争っていた人たちが、順番を守り出した。
 お年寄りに順番を譲る人まで現れた。
「皆さんがルールを守ってくれて嬉しいです」
 廊下に列を作っていた人たちから、苛立ちや、焦り、悲しみの色が消えていた。
 彼らは未来に希望を持っているかのような、希望に満ちた目をしていた。
「リアーナ、あんたにそんなに魔力量が多かったのかい?」
「最上級回復魔法の最大マクシムム・回復《ベッセルング》が使えるだけでもすげぇのに……。
 一日千人治療できるとか、あんたは規格外だな」
 ドミニクさんとゲルダさんが感嘆の息を漏らす。
 私の魔力量は普通の人の二十倍から百倍程度。
 私が最大マクシムム・回復《ベッセルング》を習得したのは七歳のときだ。
 私以外の聖女は、「最大マクシムム・回復《ベッセルング》」を覚えていなかったのかしら?
 王宮の奥で一人ひっそりと暮していて、他の聖女と接点がなかったのでよく分からない。
 
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