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13話「冒険者ギルドへの登録。どこの国にも柄の悪い冒険者はいるものだ」
しおりを挟む私達はサルーン・ドアを押し、冒険者ギルドに足を踏み入れた。
冒険者ギルドには厳つい顔で筋肉ムキムキで、髪の毛を逆立てた屈強そうな男性しかいないと思っていた。
だけど中は思ったよりもずっと清潔で、私と同じ年ぐらいの魔法使いや僧侶と思われる女性や、剣を持った若い男性や、子供の姿まであって……拍子抜けしてしまった。
レストランや宿屋と客層は大して変わらないように見えた。
なんだ、気負って損したわ。
受付には若くて美人なお姉さんが何人か立ち、愛想よく冒険者に対応していた。
受付の人も優しそう。これなら登録もスムーズにいきそうね。
クヴェルは私の手を引き、空いている受付へ向かった。
「僕たち二人とも冒険者ギルドに来るの初めてなんだけど、登録できるかな?」
「あら、可愛らしい坊や。
あなたが登録するの?」
ポニーテールが似合う色白の受付嬢が、クヴェルたんに微笑みかける。
クヴェルたんは、ここでも年上のお姉さんキラーの能力を余すことなく発揮していた。
「そうだよ。
僕と一緒にいるこの子と一緒にね」
クヴェルは私の腕に自分の腕を絡めた。
「あら、仲良しなのね」
受付のお姉さんは私達を見て微笑んでいた。
「今入ってきた金髪の女の子。凄く綺麗だな」
「この当たりじゃ見かけない顔だな。俺もあんな美人とパーティを組みたいぜ」
近くにいた二人組の男性が、こちらを見てヒソヒソと話している。私達が新人だから値踏みされているのかしら?
クヴェルたんが二人組の男性を睨むと、彼らは慌てた様子で視線を逸らした。
「アデリナにはすぐ悪い虫が付くから、虫よけをするのが大変だよ」
やれやれといった表情で、クヴェルがため息をついた。
清潔そうな空間に見えるけど虫がいるのかしら?
「初めてのご登録ですね。
ではこちらの書類に記入してください」
受付嬢から渡された書類に、必要事項を記入していく。
名前は……本名でいいか。
先ほどクヴェルが私のことを「アデリナ」と呼んだのに、別の名前を書くのも変だしね。
私が記入を終えるのとほぼ同時に、クヴェルも記入を終えたようだ。
書類を受付嬢に手渡す。
「これで冒険者ギルドへの登録は完了しました。
冒険者はFからSSランクに別れています。
A級以上の冒険者は、王家から要請があったとき騎士と共に戦争や魔物討伐に駆り出されます。
その分報酬は破格です。
一般の冒険者では立ち入れない場所への、立ち入り許可も許可されています。
冒険者からは羨望の目を向けられ、
希望すれば爵位も与えられます」
A級以上の冒険者になると責任が増えるのね。王家からの招集とか面倒くさいとしか思えない。
でも特別な遺跡の調査とかしたい人や、貴族の身分が欲しい人はA級を目指すのかもしれない。
「A級冒険者は全体の三パーセント、S級は一パーセントです。
A級冒険者には、二十年以上冒険者を続けたベテランでもなるのが難しいと言われています。
B級冒険者になるのにも十年以上の経験を、お客様方にはまだこんな話をしても仕方ありませんね。
まずはFランクの依頼からこなしていただき徐々にランクを……」
B級冒険者になるには、私達が想定した以上の年月が必要なようだ。
早ければ半年ぐらいでB級冒険者になれるという考えは甘かったかもしれない。
「そのことなんだけど、僕たち今すぐB級になりたいんだ」
クヴェルたんが受付嬢の言葉を遮り、己の要求を伝えた。
受付嬢が目をパチクリさせている。
「坊や、私の説明聞いてた?
焦る気持ちはわかるけど、まずはF級冒険者から始めようね。
依頼内容は猫探しや、民家の草むしり、お年寄りの買い物のお手伝いなど、街の中で出来る安全なものばかりだから」
受付嬢がクヴェルを諭すように話した。
「それが終わったらE級に昇格して薬草集め。
それが終わってようやくD級になれるのよ。
D級になってようやく街の外に出てモンスターを狩れるんだから。
D級やC級になって沢山強いモンスターをたおして、ようやくB級になれるのよ」
そこまで説明すると、受付嬢は一度言葉を区切った。
「だから今すぐB級になるなんて無理なの。
地道に努力しようね」
受付嬢がにっこりと微笑み、クヴェルを諭す。
「わかった」
「そう、理解してもらえて嬉しいわ」
「沢山モンスターを倒せばB級になれるんだよね?
じゃあ、今まで倒したモンスターの素材と魔石を見せればいい?」
「えっ?」
受付嬢が目を点にしていた。
そんな受付嬢をよそ目に、クヴェルはアイテムボックスから素材と魔石を取り出した。
「僕たちが討伐したオークとオークキングから回収した素材の一部と、ワームから回収した魔石の一部だよ」
大量の素材と魔石を前に、受付嬢がポカンと口を開けている。
「これで足りないならもっと出そうか?
最も、これ以上素材や魔石を出すとカウンターからこぼれそうだけどね。
僕らが集めたモンスターの素材と魔石を全部出すなら、もっと広い場所を用意してもらわないとね」
クヴェルたんは受付嬢の目を見てクールに告げた。
受付嬢が額に汗を浮かべ目をしばたたかせる。
「こ、こんなことは初めてなので、ギ、ギルド長に聞いてきます!
し、しばらくお待ち下さい!」
受付嬢は慌てた様子でギルドの奥へと消えていった。
「まじか! あのガキと華奢な姉ちゃんであの数のモンスターを倒したのかよ?」
「人は見かけによらないのねぇ……!」
「あの坊や、もしかして超強いのかしら?」
ギルド内がざわつき始めた。ギルドの職員と冒険者の視線が私達に集まる。その視線には好奇と驚きが混じっていた。
「昇級を急ぐあまり悪目立ちしちゃったかな?
こんなことなら大人の姿でくればよかった」
クヴェルたんが面倒そうに顔を顰め、そう呟く。
クヴェルたんが大人の姿で来たとしても、ギルド内はざわついたと思う。
冒険者登録した日に、こんなに大量の素材や魔石を持ち込む人は稀だと思うから。
その時ギルドに、ドスン、ドスン……という音が響いた。
音がした方に目を向けると、こちらに向かって歩いてくる巨漢の男達が見えた。
身長二メートルはありそうな男が三人。三人とも顔や腕に傷があり筋肉ムキムキだった。
私が最初に想像していた冒険者のイメージそのものだった。いや、想像より数倍厳つい外見をしている。
彼らが奥まったところにいた為、ギルドに来た時には目に入らなかったようだ。
「C級冒険者のドクラン、ランザー、イグニスの三人組だ!」
「あの三人に目を付けられたら終わりだ……!」
「あの新人、運がないな……!」
どうやらこちらに向かってくる三人は、他の冒険者に恐れられているようだ。
彼らは私とクヴェルの前に来ると足を止めた。男達は厳つい顔を顰め、鋭い目つきでこちらを睨んでくる。
クヴェルが私を庇うように前に立った。子供の姿でも男の子。
クヴェルたんの勇ましさに胸がキュンと音を立てた。
「おい、坊主!
その素材と魔石をどうやって手に入れた?
正直に話せ!」
「素直に話さないと痛い目を見るぜ!」
男達がクヴェルに問いかける。
「どうって……。
僕とアデリナの二人で倒したんだよ」
クヴェルたんは彼らに怯えることなく、クールな表情で淡々と答えた。
「馬鹿言うな!
それだけの数のモンスターを倒すのは、C級冒険者の俺達でも骨が折れる!」
「年端もいかないガキと、見るからにひ弱そうな女で倒せるもんか!」
男達はクヴェルの回答が気に入らなかったようで、眉を吊り上げ、目を剣のように光らせる。
「じゃあ、答えは簡単だ。
僕らがC級冒険者以上の実力があるってだけの話だよね」
クヴェルたんは彼らにおののくことなく冷静に返答した。
クヴェルの態度が気に入らなかったのか、クヴェルが自分達より強いと言ったことに憤ったのか、男達は目を血走らせ額に怒りマークを浮かべていた。
「クソガキが!
調子に乗るなよ!
俺達は五年かけてC級に昇格し、それからさらに五年かけてもB級に慣れずにいるんだ!
どう見てもひ弱なガキと女が、俺達より強いとかあり得ないんだよ!
大方、その素材も魔石もどこかで買ってきたんだろう!」
「たまにいるんだよな!
金持ちが道楽で冒険者登録して、
金で買った素材と魔石をちらつかせ、
いきなりB級に昇級しようといんちきする野郎が!」
「お前たちもその口だろ!
正直に言いやがれ!」
男達は目を吊り上げ、クヴェルたんに喰ってかかる。
「あのさ、他人が自分と同じ能力しか持ってないと思い込まない方がいいよ。
君たちが十年かけて成し遂げられなかったことを、
僕たちが数日で成し遂げたとしたら、
それは才能と実力に大きな差があるってことじゃない?」
クヴェルがクールに答えると、C級冒険者の三人は目を血走らせ頭から湯気を出していた。
「言わせておけば!!
このクソガキが!
もう許さねぇ!
野郎ども、畳んじまえ!!」
リーダーらしき一人が掛け声を上げると、男三人が一斉にクヴェルに襲いかかってきた!
「クヴェルたん!」
「シールドサークル」
私が叫び声を上げた時には、クヴェルが冷静に魔法を唱えていた。
次の瞬間には、彼と私を包むように半球体の光の壁が現れた。
クヴェルに飛びかかった三人は光の壁に激突し、「ひでぶっ……!」とうめき声を上げ床に倒れた。
「一つ忠告しておくけど、
喧嘩を売るなら相手を選んだ方がいいよ」
クヴェルが光の壁の中から冷淡な声で言い放つ。
「まだやるなら僕は別に構わないけど。
全員外に出てくれるかな?
君たちを倒すのに建物や家具に傷をつけたくないんだ。
ギルドから損害賠償金を請求されてしまうからね。
僕は君たちの為に無駄にお金を使いたくないんだよ」
男達を見下すクヴェルたんの目は氷のように冷たくて……。彼に睨まれた男達は体をビクリと震わせていた。
「くっそぅ!
覚えてろよ!!」
捨てゼリフを残し、男達は逃げるようにギルドから出ていった。
彼らが建物から出たのを確認し、クヴェルたんは光の壁を消した。
「C級冒険者のドクラン、ランザー、イグニスの三人をあっさりと倒すなんて……!」
「凄い少年だ!」
「百年に一人の逸材かもしれない!!」
その場にいた人達が、羨望と好奇心の混じった目でこちらを見ている。
C級冒険者三人のせいで余計に目立ってしまった。
「クヴェルたん凄いね。
あんな魔法も使えたんだ」
「あとでアデリナにも教えるね。
攻撃呪文だけでなく、補助呪文が必要になることもあるだろうし」
「うん、お願い」
新しい呪文を覚えられるのは嬉しい。
そうこうしている間に、受付嬢が中年の男性を連れて戻ってきた。
あの人がギルド長かな?
ギルド長は話が分かる人だといいなぁ。
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