「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版

まほりろ

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31話「私にできることがあるなら心を込めて全力を尽くしたい! アデリナの決意」

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「頭を上げてよ。
 言ったでしょう?
 僕は冒険者としてここに来てるって。
 一介の冒険者に過ぎない僕に、国王が頭を下げたらおかしいでしょう?」

「ではどうすれば……」

国王は頭を上げ、期待の籠もった目でクヴェルを見つめた。

「僕は冒険者として国王の依頼を受けるだけだよ」

「おお、御依頼を仰せつかりますか!」

国王が歓喜に顔をほころばせる。

「ただし、条件がある」

クヴェルが眉をひそめる。

 「はい、何なりとお申し付けくださいますよう、謹んで承ります」  

「一つ目、リスベルンの国王と冒険者クヴェルとして依頼を受ける。そのための契約書を作ること」

 「はい、畏まりました」  

「二つ目、水竜がこの地を訪れたことはない。国王が謁見の間で話したことには箝口令を敷くこと」

「勿論です。何卒、ご指示のままに」  

「まあ、人の口に戸はたてられないから今さらだけど……。
 最後に三つ目、これが一番大事だ」

クヴェルがそう言って一度言葉を区切る。

「この一件に片が付いたら、アデリナの願いを何でも一つ叶えること」

「承知いたしました」

えっ? 私の願い事? クヴェルたんのじゃなくて?

しかも今じゃなくて、ミドガルズオルムの件が片付いてからなの?

「クヴェルたん、どうしてそんな条件を出したの?」

私はクヴェルに体を寄せ、彼の耳元で囁いた。

「アデリナにもいずれわかるよ」

クヴェルはどこか切なそうな悲しそうな顔をしていた。

クヴェルは私にまだ何かを隠しているのかな?

「それから国王、最初に言っておくけど、ミドガルズオルムを退治するのは無理だ」

ええっ!? ここまで条件を出しておいて退治するのは無理なの……!?

国王は青い顔で目を見開いている。私よりショックを受けているようだ。

それはショックだよね。ミドガルズオルムを放置したらこの国は滅んでしまうものね。

「クヴェルたん、それはあんまりじゃない」

「アデリナ、話は最後まで聞いて。
 ミドガルズオルムは生きてる間、毒を出し続け周りを汚染する。
 だけどそんなものは彼の死後の被害に比べたら生易しい」

「えっ……?」

猛毒を出して大地や水を汚染するのが生易しいって、どういうこと?

「一番厄介なのは彼らが死ぬときだ」

「ミドガルズオルムが死ぬとき……?」

「そう、ミドガルズオルムが死を迎えたとき。
 大陸中にミドガルズオルムの毒素が広がり、辺り一面草木一本生えない死の大地とかす。 そうなったら最後、その大陸には数百年、もしかしたら数千年は人は愚か虫すら生息出来ないだろう」

「そんな……!」

ミドガルズオルムがそんなに恐ろしい魔物だったなんて……!

「おそらく、ミドガルズオルムはどこかの大陸から追い払われてこの大陸に逃げて来たんじゃないかな?
 逃げている途中でこの国が気に入って永住しようと思ったのか、
 しばらく休んでるだけなのか僕にはわからないけど」

クヴェルの説明を聞いて国王は真っ白な顔をしていた。呼吸も浅いみたいだし、今にも倒れそうだわ。

「というわけで、ミドガルズオルムを倒せない。
 というより奴を倒すのは悪手だから倒さないと言った方が正確かな」

「クヴェルたん、それじゃあどうするの?
 ミドガルズオルムを別の大陸に移動させるの?」

「それだと他の大陸の生態系に迷惑をかけることになる。
 だから、それも得策じゃない」

「そうよね」

この大陸の人が助かっても、他の大陸が甚大な被害を被ってしまう。

ミドガルズオルムは思ってたよりもずっと厄介な相手のようね。

「クヴェル殿、我らは如何にすべきでしょうか?」

国王の声は震えていた。彼の顔色は白を通り越し土気色だった。

国王が心臓発作を起こして倒れないか心配だわ。

「倒せないなら浄化するしかないよね」

クヴェルたんが目を細め不敵な笑みを浮かべる。

浄化! そうだわ! その手があった!

ラグ魔除けソーンの魔石を刻んだ魔石をミドガルズオルムの周りを囲むように配置し、奴を結界の中に閉じ込める。
 その後、ミドガルズオルムの体内にラグのルーンを刻んだ大量の魔石を流し込めば、奴を浄化できるはずだ」

かなりの荒業な気がするけど、やってみるだけの価値はありそうだわ。

国王の顔を見ると僅かに血色が良くなっていた。先程まで絶望に染まり泣きそうな顔をしていたが、今は瞳に希望が宿っている。

「作戦を実行に移すには大量の魔石が必要だ。
 国王は国中にある魔石を城に集めてほしい。
 それから万が一に備え、周辺の町や村の人を王都に避難させるんだ」

「承知いたしました!
 速やかに取り掛かります!」

国王は席を立つと侍従長と騎士団長を呼び、それぞれに指示を出していた。

「それから僕とアデリナが作業できる場所と、魔石にルーンを彫るのに必要な彫刻刀などの道具を揃えてほしい」

「かしこまりました!
 すぐにご用意いたします!」

国王は侍従長に部屋と道具の用意をするように言いつけていた。

「最低でもラグ魔除けソーンを刻んだ結界用の魔石が五百個。
 ラグの魔石を刻んだ浄化用の魔石が五百個は必要だからね。
 少しでも早く完成させるために、作業環境は快適な方がいい」

ギルドの会議室には、職人が使うような机や椅子がなかったので少しやりにくそうに見えた。

「千個の魔石にルーンを刻むのにかなり時間が必要よね?
 一つ五分としても不眠不休で取り掛かっても、約三日と十一時間かかるわ」

睡眠時間と休憩時間を挟んだらもっと多くの時間を要する。全部の魔石にルーンを刻むのに一週間か十日はかかってしまう。

その間にもミドガルズオルムの汚染は広がり続ける。ミドガルズオルムの討伐に向かった王太子たちの安否も気にかかるし、あまり多くの時間はかけられないわ。

「昨日冒険者ギルドで丸一日魔石にルーンを刻んだおかげで、コツが掴めたよ。
 ひとつの魔石にルーンを刻むのに五分もかからない。
 二分あれば余裕だよ。
 休憩時間と睡眠時間を入れても三日あれば完成させられる」 

クヴェルは口元を緩め、自信と誇りに満ちた笑みを称えた。

「クヴェルたん凄い!」

それならミドガルズオルムの汚染を最小限に食い止められるわ!

「それに、手伝ってくれる助手もいるしね。
 二人でやればもっと早く完成させられる」

助手って私の事だよね。

「私、まだ下手っぴで。
 ルーンを一つ彫るのに三十分から一時間くらいかかるよ。
 しかも作れば作るほど、作業スピードが落ちるし……」

「気持ちの問題だよ。
 アデリナが手伝ってくれていると思うと、モチベーションに繋がるんだ。
 それにやればやるほど作業スピードが遅くなるのは、ルーンを彫る時の魔力の調整に慣れてないからだ。
 慣れればもっと早く彫れるようになるよ」

クヴェルは私を安心させるように穏やかな笑みを浮かべる。彼の目は真剣で、私を頼りにしていることが伝わってきた。

「うん、私頑張るね!」

クヴェルたんに頼りにされるのも、彼の役に立てるのも凄く嬉しい。

もともと「この国の人達を助けたい」と言ったのは私だ。クヴェルにばかり頼ってはいられない。私にできることがあるなら、精一杯頑張りたい!


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