「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版

まほりろ

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46話「トリヴァイン王国の終焉3〜新国王の誕生! 空にかかる虹(希望)」

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オルトラン公爵は四十五歳。

カスパール公爵は三十歳。

年上で領地経営も上手く、人望があり、民からの信頼も厚いオルトラン公爵が新国王になることになった。

カスパール公爵は筆頭公爵家として新国王を支える。

新国王の誕生により、前国王と王太子は処刑。その他の王族は生涯幽閉か、島流しの刑に処され、国名はオルトラン王国に変更された。

王宮広場には王都の市民が集まり、祝祭のバルコニーに新国王が立つのを待ち望んでいた。

新国王が祝祭のバルコニーに立つと雨が振り注いだ。約二カ月振りの雨に広場に集まった民衆は歓喜し、新国王を温かな気持ちで迎え入れた。

国王のスピーチが終わる頃には雨が上がり、空には大きな虹がかかっていたという。



◇◇◇◇◇



私はクヴェルたんと一緒に、トリヴァイン王国……いけないオルトラン王国に名前が変わったんだ。

オルトラン王国の都市や町や村をめぐり、各地の井戸に決められた数の魔石を入れて回った。

ステルスの魔法で身を隠していたので、私達に気づいたのは勘がいい犬や、鳥くらいだ。

新国王誕生の日、雨は王国全土に降り注いだようで、私達が国中を巡ったときは土煙が空を覆うことはなかった。

雨の影響でモンスターが身を潜めたのか、モンスターを見かけることもなかった。


◇◇◇◇◇◇


数日かけて全ての井戸に私がラグのルーンを刻んだ魔石を投じることができた。

全ての作業を終えた私は、クヴェルたんとともにお母様のお墓を訪れている。

暫く見ない間に荒れてしまったお墓を手入れし、花を供えた。

クヴェルたんのこともお母様に紹介した。

「何でもできる素敵なパートナーで大好きな婚約者です」って。

クヴェルたんと結婚したときは、またお母様に報告に来ようと思う。



◇◇◇◇◇



お墓参りを終え、私は竜型のクヴェルたんの背に乗りリスベルン王国を目指している。

街道の封鎖が解かれたので、今度こそ港町に向かって出発するためだ。

クヴェルたんに乗って、次の大陸まで行くこともできるけど、それじゃあつまらない。

それに、かつて私に仕えていてくれたオリガが旅したであろう道を辿り、同じ景色が見たいのだ。

オリガはきっと、馬車か徒歩で旅しただろうから。

「クヴェルたん、私が井戸に魔石を入れるとき、クヴェルたんも何か入れてたでしょう?」

「アデリナ、気づいてたんだ」

「そりゃあ、わかるよ」

クヴェルたんのことずっと見てるもん。

ラグのルーンだけだと魔物の被害は防げないから、
 魔除けソーンのルーンを刻んだ魔石をね。
 移住したくても体を動かせない家族も抱えてる人もいるだろうし……」

「それだけ?」

「……街道にラドのルーンと、
 畑に収穫ヤラのルーンを刻んだ魔石を少しだけ埋めてきた……。
 移住の為の移動が楽になるように、移住するまでの間民が食べ物に困らないように……」

クヴェルたんが罰が悪そうに呟いた。

まったく、クヴェルたんの力を借りずに人間だけの力でやりたかったのに、この国の元水竜神はお人好しなんだから。

「魔石にいつルーンを彫ったの?
 それに魔石の調達はどうしたの?」

リスベルン王国の王都に行くときに退治したワームから取り出した魔石は私が殆ど使ってしまった。

「君が宿で魔石を彫ってる時にちょっと外に出て狩りをしたんだ。
 女将さんに屋根裏を借りて隙間時間にちょっとずつ彫ってた」

私が宿の部屋に籠もって魔石にルーンを彫ってる時に、クヴェルたんはそんなことをしていたのね。気づかなかったわ。

「安心して、アデリナの部屋に不審者が入らないように、ちゃんと結界を張ってから出かけたから」

クヴェルたんが焦った様子で説明する。

相変わらず過保護だな~~。そんなところがクヴェルたんらしい。

「新国王が祝祭のバルコニーに立ったとき雨が降ったのもクヴェルたんの魔法でしょう?」

「……戴冠の祝いと、後始末をさせる償いというか……」

クヴェルたんは本当に人が……竜が良いんだから。

「ごめん……アデリナが頑張ってくれたのに……。
 結局僕が手を出してしまって……」

「気にしないでいいよ。
 クヴェルたんらしい。
 クヴェルたんのそういうところ大好きだよ」

なんのかんの言って、旧トリヴァイン王国の民を一番心配していたのはクヴェルたんなのだ。

建国から三百年ずっと見守って来たんだから、十数年しか住んでいない私とでは思い入れの度合いが違う。

「あのね、クヴェルたん。
 私、お母様のお墓参りに毎年来たいと思ってるの。
 その時にお母様に虹を見せて上げたいんだけど、協力してもらえるかな?」

「もちろんだよ! アデリナ!」

クヴェルたんの声は弾んでいた。

一年に一回ぐらい故郷に帰って、お墓参りするついでにちょっとだけ人助けするくらいいいよね?


◇◇◇◇◇


トリヴァイン王国からリスベルン王国への移住は速やかに進んだ。

クヴェルが刻んだラドのルーンのお陰であることは言うまでもない。

アデリナがリスベルン国王に、民の移住を手伝うようにお願いしたことも効いていた。

怪我や病で移住したくてもできない民もいたが、
アデリナとクヴェルが残したラグ|と、
魔除け《ソーン》と、
収穫ヤラのルーンが刻まれた魔石のお陰で、
暫くは安全に暮らせた。

移住は徐々に進み、旧トリヴァイン王国からはだんだんと人が去っていった。

一年に一度、アデリナの母親の命日に降る雨を人々は待ち望み、天に感謝したという。


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