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これは騙されたか?
しおりを挟む『父上、領民と密接な繋がりを持つことがボンボン領のためになるはずです』
ゴージャスは啖呵を切ったあと、結局メイドリアンから託された羊皮紙を処分できずに喫茶店の席の一角で大昔──20年以上前のことを思い出していた。
「お爺さん。その紋章、セレブ様の家の紋ですね。使用人の方か何かですか?」
「?」
喫茶店の給仕から声をかけられてゴージャスが疑問符を浮かべると給仕はハッとした顔をした。
「すいません。いきなり。このお店はセレブ様が支援して頂いて立ち直したものでつい」
「構わん」
中年の給仕は気恥ずかしそうな顔をしながら、ゴージャスの返事を聞いて離れようとするとまた足を止めてゴージャスの方を見てきた。
「そうだ。よければご当主様にセレブ様からのご支援とこの街を魔人からお守り頂いたことへの感謝をお伝えしていただければ。ではごゆっくり」
セレブの行いに対して礼を平民が言ってきたことに関して、内心でギョッとしていると給仕は離れていく。
先ほどの老婆といい、この街に来てから衝撃を受けることが多い。
平民たちはまるでゴージャスの予想とは違う。
領内に大々的に布告したというのにセレブの葬列に一人も来もしなかったのでセレブから受けた恩になにも思わない薄情者と思っていたが、実際は10年、50年前のことまで覚えており、感謝言ってくるほどには情に厚い。
徐々に違和感が募っていく。
10年前の息子の死から折り重なっていた平民像からずれて行っている。
平民の凶刃にかかって死んだと言っていたゲースとカースの証言に今更疑問がもたげ始める。
領内の隅々まで調べ上げていなかった平民など本当に存在しているのか?
そんな疑問が。
親の代から繋がりのある貴族の証言を疑うのは正気の沙汰ではないし、二人にはセレブを殺して何の益もないというのに。
「先ぶりです。お隣よろしいですか?」
疑心暗鬼になっていると先ほど自分に助けられたと言っていた老婆が向かいの席にやってきた。
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