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第5話 最初のターゲット
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ヴァイスはまず情報収集をするために、近隣の町へと向かった。ヴァイスが追放されてから既に1年以上が経っているが、ヴァイスは念の為に自分の顔を少し錬成し、別人になってから町の中へと入った。ヴァイスは宿を確保すると、まっすぐに酒場へと向かう。情報収集をするなら、やはり酒場が最適だろう。時間もちょうど日暮れ後で都合がよかった。
ヴァイスはただの旅人を装ってカウンターで麦酒を頼む。そして、1年ぶりに飲む麦酒の味を堪能しながら酒場のマスターにそれとなく最近の王国について聞いた。
「……最近の王国の状況? あんた他国出身の人間かい?」
「いや、この国出身だが、ちょっと国外に出かけててな。久しぶりに帰ってきたんだ。それで何か変わったことはあるかと思ってね」
「あーなるほどな。でも別に変わったことなんて何もないぞ。庶民はいつもと同じみすぼらしい生活、貴族様はそれとは逆に貴族様らしい優雅な生活を送ってるだけさ」
酒場の主人はそう言って肩をすくめる。
「……教会関連では何もないか?」
「教会? ……ああ、それなら変わったことがないということもないな」
そう言うと、酒場の主人は周りとキョロキョロと見渡し、ヴァイスへと身を寄せてきて小さな声で言った。
「……あまり大きな声では言えないんだけどよ、最近は教会の異端者狩りが本当に厳しくなったんだ。以前と比べてかなり多くの人間が異端者として教会に連行されるようになった。……中には無実の人間もいるって話だ。あんたも気をつけた方がいいぜ」
「……なんで教会は急に異端者狩りを強化し始めたんだ?」
ヴァイスには心当たりがあったが、それは知らないふりをして聞いた。
「それはさすがにわからないが、きっかけは1年前の王都での事件だろうな。教会の締め付けが厳しくなったのもそれからだ。あんた知ってるかい? 1年前の王都での事件。高名な錬金術師が異端者として国外に追放されたんだよ」
「知ってるよ。……よく知ってる」
ヴァイスはそう言って麦酒の入ったジョッキに口をつける。
「そうかい? ま、とにかくそれからだよ、教会が異端者狩りを強化したのは。ほんとその錬金術師様も余計なことしてくれたって思うぜ」
「…………」
ヴァイスは無言だった。だが、非があるのは教会の方であり、自分ではないと強く思った。
「聖女はどうしてる? 確かその事件の時にも王国に来たらしいが、まだこの国にいるのか?」
「ああ、いるよ。……ってあんた俺の話聞いてなかったのかい? どこに教会の目があるかわからないんだ。そこは聖女様だろ、聖女様」
酒場の主人は呆れた顔をして言った。しかし、ヴァイスは聖女に対して皮肉以外の意味で一切敬称を付けるつもりはなかった。
「三人の聖女様は1年前の事件のあとすぐに聖地に帰っていったんだけどよ、末女の聖女様は少し前にまたこの国に巡礼にやって来たんだ。聞いたところのよると、1年ぐらいはこの国に滞在する予定なんだとか」
ヴァイスはそれを聞いて思案した。三人全員を一網打尽にするというのも一つの手だが、順番に一人ずつ落としていくというのも悪くない。末女から落としていって、最後に二人の妹が既に籠絡されていることに気づいて絶望するイザリアの顔を見るというのも一興だろう。ヴァイスは心の中でニヤリと笑った。
「……あんた、妙に教会のことを気にしているようだが、なにか理由でもあるのかい? 教会嫌いとか?」
「……まぁ、そんなところだ」
「そうかい。でも教会の連中と揉め事を起こしても何もいいことはないぜ。1年前の王都の事件では高名な錬金術師様ですら国外追放されたほどだからな……。というかあんた、まさか反教会派の連中の一人で聖女様に対して何かヤバイことを企んでるとかじゃないだろうな」
酒場の主人が冗談っぽく言いつつも、目は笑っていなかった。きっと酒場の主人は、俺が教会や聖女に対して妙に詮索するものだから何か企んでいると思ったのだろう。それは、まったくもってその通りなのだが、正直に言うわけにもいかない。ヴァイスはそう考え、言い訳をすることにした。
「まさか。俺は確かに教会嫌いの人間だが、逆にそれで教会の聖女とやらがどういう人間なのか気になってね。一度この目で見られればと思っただけさ」
ヴァイスはそう言って肩をすくめる。
「ああ、なるほど、そういうことか。確かにこんな地方じゃ聖女様を生で見ることなんて滅多にないからな。俺もこの目で見たことはないが、三人の聖女様はみんな相当のべっぴんさんだって話だぜ」
「そうなのか? それはぜひともこの目で見てみたいな……」
ヴァイスは薄ら笑いを浮かべて言った。しかし、ヴァイスが本当に見たいのは聖女三姉妹の麗しい姿ではなく、彼女たちが絶望しヴァイスに涙を流しながら懇願する姿であった。ヴァイスは、酒場の主人に聖女三姉妹の末女であるルーフィが滞在している都市を聞いて酒場を後にした。ヴァイスの復讐の最初のターゲットは彼女に決まったのだった。
ヴァイスはただの旅人を装ってカウンターで麦酒を頼む。そして、1年ぶりに飲む麦酒の味を堪能しながら酒場のマスターにそれとなく最近の王国について聞いた。
「……最近の王国の状況? あんた他国出身の人間かい?」
「いや、この国出身だが、ちょっと国外に出かけててな。久しぶりに帰ってきたんだ。それで何か変わったことはあるかと思ってね」
「あーなるほどな。でも別に変わったことなんて何もないぞ。庶民はいつもと同じみすぼらしい生活、貴族様はそれとは逆に貴族様らしい優雅な生活を送ってるだけさ」
酒場の主人はそう言って肩をすくめる。
「……教会関連では何もないか?」
「教会? ……ああ、それなら変わったことがないということもないな」
そう言うと、酒場の主人は周りとキョロキョロと見渡し、ヴァイスへと身を寄せてきて小さな声で言った。
「……あまり大きな声では言えないんだけどよ、最近は教会の異端者狩りが本当に厳しくなったんだ。以前と比べてかなり多くの人間が異端者として教会に連行されるようになった。……中には無実の人間もいるって話だ。あんたも気をつけた方がいいぜ」
「……なんで教会は急に異端者狩りを強化し始めたんだ?」
ヴァイスには心当たりがあったが、それは知らないふりをして聞いた。
「それはさすがにわからないが、きっかけは1年前の王都での事件だろうな。教会の締め付けが厳しくなったのもそれからだ。あんた知ってるかい? 1年前の王都での事件。高名な錬金術師が異端者として国外に追放されたんだよ」
「知ってるよ。……よく知ってる」
ヴァイスはそう言って麦酒の入ったジョッキに口をつける。
「そうかい? ま、とにかくそれからだよ、教会が異端者狩りを強化したのは。ほんとその錬金術師様も余計なことしてくれたって思うぜ」
「…………」
ヴァイスは無言だった。だが、非があるのは教会の方であり、自分ではないと強く思った。
「聖女はどうしてる? 確かその事件の時にも王国に来たらしいが、まだこの国にいるのか?」
「ああ、いるよ。……ってあんた俺の話聞いてなかったのかい? どこに教会の目があるかわからないんだ。そこは聖女様だろ、聖女様」
酒場の主人は呆れた顔をして言った。しかし、ヴァイスは聖女に対して皮肉以外の意味で一切敬称を付けるつもりはなかった。
「三人の聖女様は1年前の事件のあとすぐに聖地に帰っていったんだけどよ、末女の聖女様は少し前にまたこの国に巡礼にやって来たんだ。聞いたところのよると、1年ぐらいはこの国に滞在する予定なんだとか」
ヴァイスはそれを聞いて思案した。三人全員を一網打尽にするというのも一つの手だが、順番に一人ずつ落としていくというのも悪くない。末女から落としていって、最後に二人の妹が既に籠絡されていることに気づいて絶望するイザリアの顔を見るというのも一興だろう。ヴァイスは心の中でニヤリと笑った。
「……あんた、妙に教会のことを気にしているようだが、なにか理由でもあるのかい? 教会嫌いとか?」
「……まぁ、そんなところだ」
「そうかい。でも教会の連中と揉め事を起こしても何もいいことはないぜ。1年前の王都の事件では高名な錬金術師様ですら国外追放されたほどだからな……。というかあんた、まさか反教会派の連中の一人で聖女様に対して何かヤバイことを企んでるとかじゃないだろうな」
酒場の主人が冗談っぽく言いつつも、目は笑っていなかった。きっと酒場の主人は、俺が教会や聖女に対して妙に詮索するものだから何か企んでいると思ったのだろう。それは、まったくもってその通りなのだが、正直に言うわけにもいかない。ヴァイスはそう考え、言い訳をすることにした。
「まさか。俺は確かに教会嫌いの人間だが、逆にそれで教会の聖女とやらがどういう人間なのか気になってね。一度この目で見られればと思っただけさ」
ヴァイスはそう言って肩をすくめる。
「ああ、なるほど、そういうことか。確かにこんな地方じゃ聖女様を生で見ることなんて滅多にないからな。俺もこの目で見たことはないが、三人の聖女様はみんな相当のべっぴんさんだって話だぜ」
「そうなのか? それはぜひともこの目で見てみたいな……」
ヴァイスは薄ら笑いを浮かべて言った。しかし、ヴァイスが本当に見たいのは聖女三姉妹の麗しい姿ではなく、彼女たちが絶望しヴァイスに涙を流しながら懇願する姿であった。ヴァイスは、酒場の主人に聖女三姉妹の末女であるルーフィが滞在している都市を聞いて酒場を後にした。ヴァイスの復讐の最初のターゲットは彼女に決まったのだった。
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