パラサイト・ルーラー ~追放された王国最高の錬金術師は【寄生生物】を使って聖女三姉妹への復讐を開始する~

御浦祥太

文字の大きさ
17 / 28

第17話 エスティナ攻略作戦

しおりを挟む
 ヴァイスが情報屋に依頼をしてからちょうど三週間が経った。ヴァイスは調査結果を聞くために地下クラブへと向かった。約束の時間ちょうどあたりに地下クラブへ足を踏み入れると、バーのカウンター席には既に情報屋の男が座っていた。ヴァイスは情報屋の隣の席へと座る。すると、情報屋はヴァイスを見て顔をほころばせた

「おう、あんたか。待ってたよ」

 情報屋はそう言うと、バーテンダーにヴァイスに麦酒を一杯持ってくるように言った。

「……それで、首尾はどうだ?」

 ヴァイスはそう情報屋に尋ねる。

「ふふ、面白い情報が手に入ったぜ。はっきり言ってこれは相当価値がある情報だ」

 そう言って情報屋はニヤリと笑った。

「聞かせてくれ」

「いいだろう」

 情報屋は懐からメモ帳を取り出してパラパラとめくった。

「……まずあんたが知りたがってた聖女の目的についてだがな、あんたも知ってると思うが、聖女エスティナはこの首都から少し離れた町に滞在している」

「……それは知っている」

 ヴァイスは特に興味がなさそうに答えた。ヴァイスは既にエスティナが滞在している町を特定し、その町を実際に訪れたことがあったのだった。

 エスティナは多数の神殿騎士とともにその町にある古城に滞在していた。警備はルーフィの時と比べて比較にならないほど厳しく、城の内部に潜入するのは不可能と思われるほどだった。寄生体を放っても、神殿騎士が相手では察知される可能性はかなり高くなるだろうとヴァイスは思った。

 そのためヴァイスは、現在の状況ではエスティナに直接手出しをするのは得策ではないと考えていた。そんなヴァイスを見つつ、情報屋は話を続けた。

「そうか。それなら聖女エスティナが多数の神殿騎士と一緒にいるのも知ってるな。……面白いのはこの神殿騎士たちだ。まず第一に、神殿騎士の数はエスティナが初めてこの国に来たときに比べてどんどん増えている。もしエスティナの護衛だけが目的なら神殿騎士の数を増やしていくってのはおかしいよな?」

 情報屋はそう言った。ヴァイスは「確かに」と思った。ヴァイスは神殿騎士はエスティナの護衛のために付いてきたのだと思っていたが、実際、護衛にしては数が多すぎると以前から思っていた。

「驚くかもしれないが、エスティナが滞在している町以外にも神殿騎士の駐屯所は複数あってな。それを全て合わせると、現在おおよそ数千の神殿騎士団がこの国にいる計算になる」

「!?」

 ヴァイスは数千という数を聞いて驚きを隠せなかった。神殿騎士が数千も集まって一体この国で何をしようとしているのか……。ヴァイスはあまりいい予感がしなかった。

「神殿騎士団が数千人も集まって何をしているのかって思うだろ? そこが第二の点だ。第二に、神殿騎士団は秘密裏に獣人王配下の獣人軍団と合同で戦闘の訓練をしている」

 情報屋はそう言った。同時にヴァイスに衝撃が走った。

「……そういうことか」

 ヴァイスはそう呟き、全てを理解した。獣人国とエルフ国との関係悪化、数千もの神殿騎士団、そして神殿騎士団と獣人軍団の合同訓練――これらが意味するのは一つだとヴァイスは思った。

「お、ピンときたかい? ……あんた、だいぶ察しがいいね。ま、そういうことさ。獣人王と教会は手を組んでエルフの国に侵攻するつもりだよ。……これは裏付けも取れてるし、間違いない情報だ」

 情報屋はそう言うと、ぐびりと麦酒をあおった。

「……教会側から提案があってそうなったということか?」

「そうだ。教会の方から最初に獣人王に接触があったらしい。神殿騎士団が力を貸すからエルフの国を攻めてみないかってね」

「……見返りはなんだ?」

 ヴァイスはそう言った。……教会が自分たちの得なしで手を貸すことは考えられない。きっと何らかの見返りがあるはずだとヴァイスは思った。特にこの提案の背後にいるのがイザリアならば、それ相当の見返りを獣人王に要求していることだろう。

「そこまではわからなかったが、一つ確かなのは獣人国および占領後のエルフ国での自由な布教活動だろうな。既に獣人国ではいくつかの町で教会の建設が進められている。もちろん、許可を出したのは獣人王だ」

 情報屋はそう言って肩をすくめた。

「……なるほどな」

 しかし、教会自らが戦争の仕掛人になるとは……。ヴァイスは教会の卑劣さを理解しているつもりではあったが、さすがにここまでとは思わなかった。

「エルフの国は獣人王と神殿騎士団が手を組んでいるということを知ってるのか?」

「それも聞かれると思ってエルフ国の方も探ってみたよ。さすがにエルフの女王がどう考えているかまではわからないが、最近エルフ国は自軍のエルフの戦士団を獣人国との国境沿いに集中させ始めている。まぁ向こうも色々と察しているだろうな」

 そう言うと情報屋はまた麦酒をぐびりとあおった。ヴァイスは少し思案して言った。

「……どちらが勝ちそうだ?」

「おいおい、俺はただの情報屋で軍師じゃないんだぜ? 戦のことなんてわからねぇよ。……ただまぁ兵力的には獣人軍団と神殿騎士団の連合の方が圧倒的に上じゃねえか? もともとエルフ国は獣人国と比べて三分の一程度の規模しかないしな。十中八九、神殿騎士団を味方につけた獣人側が勝つだろうよ」

 情報屋はそう言って小さく笑みを浮かべた。ヴァイスはその言葉を聞いて少し思案する。神殿騎士団を指揮しているのがエスティナだとしたら、エルフ国との戦ではエスティナが大将として出陣する可能性は高い。その隙にエスティナを篭絡できるか……? いや、周りは手練れの神殿騎士だらけだろうし、近づくことですら容易ではないだろう。では、どうする……? 

 ヴァイスは頭の中でいくつもの策を練ったが、なかなかうまく行きそうなものを思いつくことはできなかった。情報屋は思案しているヴァイスを一瞥すると、自分はこれ以上は何もできないという顔をしてヴァイスに言った。

「……というわけで、情報収集の結果は以上だ。細かいことは紙にまとめてきたからよ。そっちを見てくれ」

 そう言って情報屋は数枚の報告書をヴァイスへと渡した。ヴァイスは報告書を受け取り、残りの情報料を情報屋へと支払った。金はかかったが、ヴァイスは重要な情報が得られたので満足だった。情報屋は「またのご利用を待ってるよ」と言うと、ヴァイスを背中で見送った。

 ヴァイスは地下クラブを出ると、少し遠回りをして近くの公園へと足を向けた。公園のベンチに腰掛けると、ヴァイスは今後のことについて考え始めた。もちろん、最も重要な問いは『どうやってエスティナを篭絡するか?』だった。

(……もし、獣人王を配下にすることができれば、エスティナを呼び出して獣人王の力でエスティナを叩きのめし、捕縛することができるかもしれない)

 ヴァイスは先に獣人王を寄生生物にし、エスティナの相手をさせるというアイデアを思いついた。

(しかし、獣人王にも周りには屈強な獣人軍団が控えている……。獣人王を寄生生物にするのは容易ではない……)

 ヴァイスは考えた。獣人王を寄生させるとして、状況的に獣人国とエルフ国の戦を利用しない手はない。それなら、例えば獣人軍団がエルフ国の首都を襲っているうちに、そのどさくさに紛れて獣人王を寄生させるというのはどうか?

(いや、待てよ……獣人王がエルフ国を制圧するとしたら、その時にはきっと直接エルフの女王の前に自分の姿を見せるはず……。先にエルフの女王を寄生させれば、女王とともに獣人王を返り討ちにできるかもしれない……)

 ヴァイスはだんだんと自身の作戦が形になっていくのを感じた。まず獣人軍団がエルフ国の首都を襲ったときに、その混乱に乗じてエルフの女王を寄生させる。その後、獣人王がエルフの女王の前に姿を現したら、寄生済みのエルフの女王とともに獣人王を返り討ちにして獣人王を寄生させる。

……獣人王さえ寄生させればあとはこっちのものだろう。適当な理由で同盟関係にあるエスティナを呼び出して、獣人王とエルフの女王の二人の力でエスティナを倒すだけ。獣人王のその武勇は王国にも広く知られているほどだし、エルフの女王も相当の魔法の使い手ということで名高い。

 いくら聖女エスティナと言えど、この二人が同時に襲ってきたら勝つことはできないだろう。ヴァイスはそう考えるとニヤリと笑った。……作戦は決まった。まずはエルフの女王と獣人王を先に寄生させる。そして二人を使ってエスティナを倒す。

 ヴァイスはそう心に決めると、さらに詳しい計画を頭の中で練りながら、宿へと帰っていった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...