60 / 120
サルベージ
しおりを挟む
メイトギアはロボットなので、新しい機体さえあればデータを移し替えることはできる。ただ、その為には専用の装置を用いて半日ほどの時間が必要だが。
残念ながらこの商業施設にはその装置がなかった。ロボットは扱いが自動車に近い故に普通はディーラーで取り扱われるのだ。ディーラーに行けば新しい機体はあるかも知れないが、犯罪者に悪用されることを防ぐ目的もあり、所有者登録を済ませて初めて発行される所有者用の管理コードと販売側の管理コードの両方を用いて起動しなければ設定を行うことができず、販売側の管理コードのみで起動した場合は、<お試しモード>と呼ばれる、機能が非常に限定された簡易な動作しかできないのだった。
現在のリヴィアターネで所有者登録ができるはずもなく、また、データや記憶を移し替える作業をするスタッフもおらず、デイジーFS505を復活させる手立ては無いと思われた。
普通のやり方では。
だが、一般には知られていないがいわゆる裏技的な方法が存在しない訳ではない。新品のメイトギアに正規の方法でデータを移し替えることは事実上不可能だが、装置とそれを扱えるスタッフさえいれば、中古のメイトギアにならデータを移し替えることは不可能ではなかったのである。
ただ、完全にそれを行うには今度は元の機体の承諾が必要になるので、起動できなくなったデイジーFS505から承諾をもらうことは当然できない。しかし、完全でなければ、データの一部分だけでよければ移せなくもないというのも事実だった。
もっとも、それで回収できるデータや記憶は、表層的なものにとどまり、しかも元の機体側がロックを掛けているようなデータや記憶はコピーできない上に、そういう強引なデータの移し替えでは機能の一部が破損してしまう危険性も高かった。
それでも、コゼット2CVはサーシャの為にデイジーFS505のデータのサルベージを行うことに決めたのだった。しかも移し替える先は、自分自身。もし上手くいってもいわゆる<ニコイチ>の実に半端な、本来のコゼット2CVでもなければもちろんデイジーFS505でもないデタラメなロボットになってしまうのは確実であった。
「あなたの知っているお母さんではなくなってしまいますが、それでも帰ってきてほしいですか?」
コゼット2CVの問い掛けに、サーシャは頷いた。しかしこの純朴で世間を知らない少女がその言葉をどこまで理解していたかは定かではなかっただろう。
こうして、デイジーFS505の機体を電動コミューターに乗せ、サーシャを一人残したままコゼット2CVはロボットディーラーへと向かったのだった。
残念ながらこの商業施設にはその装置がなかった。ロボットは扱いが自動車に近い故に普通はディーラーで取り扱われるのだ。ディーラーに行けば新しい機体はあるかも知れないが、犯罪者に悪用されることを防ぐ目的もあり、所有者登録を済ませて初めて発行される所有者用の管理コードと販売側の管理コードの両方を用いて起動しなければ設定を行うことができず、販売側の管理コードのみで起動した場合は、<お試しモード>と呼ばれる、機能が非常に限定された簡易な動作しかできないのだった。
現在のリヴィアターネで所有者登録ができるはずもなく、また、データや記憶を移し替える作業をするスタッフもおらず、デイジーFS505を復活させる手立ては無いと思われた。
普通のやり方では。
だが、一般には知られていないがいわゆる裏技的な方法が存在しない訳ではない。新品のメイトギアに正規の方法でデータを移し替えることは事実上不可能だが、装置とそれを扱えるスタッフさえいれば、中古のメイトギアにならデータを移し替えることは不可能ではなかったのである。
ただ、完全にそれを行うには今度は元の機体の承諾が必要になるので、起動できなくなったデイジーFS505から承諾をもらうことは当然できない。しかし、完全でなければ、データの一部分だけでよければ移せなくもないというのも事実だった。
もっとも、それで回収できるデータや記憶は、表層的なものにとどまり、しかも元の機体側がロックを掛けているようなデータや記憶はコピーできない上に、そういう強引なデータの移し替えでは機能の一部が破損してしまう危険性も高かった。
それでも、コゼット2CVはサーシャの為にデイジーFS505のデータのサルベージを行うことに決めたのだった。しかも移し替える先は、自分自身。もし上手くいってもいわゆる<ニコイチ>の実に半端な、本来のコゼット2CVでもなければもちろんデイジーFS505でもないデタラメなロボットになってしまうのは確実であった。
「あなたの知っているお母さんではなくなってしまいますが、それでも帰ってきてほしいですか?」
コゼット2CVの問い掛けに、サーシャは頷いた。しかしこの純朴で世間を知らない少女がその言葉をどこまで理解していたかは定かではなかっただろう。
こうして、デイジーFS505の機体を電動コミューターに乗せ、サーシャを一人残したままコゼット2CVはロボットディーラーへと向かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる