2 / 115
リリアテレサの章
バックヤード
しおりを挟む
「ふん……バックヤードに閉じ込められていたのか」
ゾンビと言うか動く死体がどこから現れたかといえば単純な話だった。こいつらは、ドアノブを回してドアを開けるということもできないし、ある程度以上の段差も越えられないし、階段も登れない。ノロノロと動きまわって獲物がいればそれに襲い掛かるということをただ繰り返すだけの間抜け共だ。バックヤードの中で<発症>するか誰かに閉じ込められたかしてずっとそこにいたんだろう。それを、リリア・ツヴァイがドアを開けてしまって出してしまったんだ。
リリア・ツヴァイがどうしてそんなことをしたのかも分かってる。バックヤード内にあるはずの、保存の利く食料を運び出そうとしたんだ。商品棚に並んでいた分は既にレジ袋に詰めてカウンターの上に置いてあった。
「やれやれ。車を取ってくる」
<車>と言っても自動車じゃない。充電中に、店舗の裏にリアカーがあったのを私が見つけたからそれに水と食料を積み込んで運び出そうということだ。
私はバックヤードを抜けて店の裏口に向かった。その足元を、全長二十センチくらいの大きなダンゴムシに似た<虫>がもぞもぞと動き回っていた。この惑星の殆どの地域で繁殖している、おそらくもっともポピュラーな虫だった。雑食性で毒はないけど、とにかく繁殖力が強く環境の変化にも強くどこにでも現れて、少しドアや窓を開けていたりするだけで入り込んでくる厄介者として人間には嫌われていた。だがそのおかげで、バックヤード内に閉じ込められていたゾンビはこれを食べて活動を続けられたということだった。
どこかに隙間があったか、元々入り込んでいたものが中で繁殖したんだろうな。動きの鈍いゾンビでも捕まえられるくらいに鈍いから、絶好の餌になる。まったく、皮肉な話だ。
なんてことはさて置いて、裏口を開けて外に出ると、目の前にバイクに繋がれたリアカーがあった。
私とリリア・ツヴァイは、自動車などでの移動は望んでない。ただひたすら歩いてこの世界を見て回ることが目的だった。
とは言え、ロボットの私はともかく、生身の体のリリア・ツヴァイにはさすがにそれは過酷過ぎることが今回思い知らされたから、これはからはこのリアカーを使うことにしよう。リアカーに水と食料を積み、リリア・ツヴァイが疲れたらそこに乗せて、ロボットである私が引くんだ。
が、そのリアカーはバイクで牽引する為のものだったから、人や人型のロボットが引くようには作られてなかった。持ち手となる横棒がない。
で、仕方なく私は、店にあった清掃用のモップの柄をステーに紐で縛りつけ、そこを持ち手とした。
それから店の表に回って、リリア・ツヴァイと共に水と食料を積み込み、まだ十分に体力が回復してなかった彼女を乗せて、再び当ての無い旅路へとリアカーを引いて歩き出したのだった。
ゾンビと言うか動く死体がどこから現れたかといえば単純な話だった。こいつらは、ドアノブを回してドアを開けるということもできないし、ある程度以上の段差も越えられないし、階段も登れない。ノロノロと動きまわって獲物がいればそれに襲い掛かるということをただ繰り返すだけの間抜け共だ。バックヤードの中で<発症>するか誰かに閉じ込められたかしてずっとそこにいたんだろう。それを、リリア・ツヴァイがドアを開けてしまって出してしまったんだ。
リリア・ツヴァイがどうしてそんなことをしたのかも分かってる。バックヤード内にあるはずの、保存の利く食料を運び出そうとしたんだ。商品棚に並んでいた分は既にレジ袋に詰めてカウンターの上に置いてあった。
「やれやれ。車を取ってくる」
<車>と言っても自動車じゃない。充電中に、店舗の裏にリアカーがあったのを私が見つけたからそれに水と食料を積み込んで運び出そうということだ。
私はバックヤードを抜けて店の裏口に向かった。その足元を、全長二十センチくらいの大きなダンゴムシに似た<虫>がもぞもぞと動き回っていた。この惑星の殆どの地域で繁殖している、おそらくもっともポピュラーな虫だった。雑食性で毒はないけど、とにかく繁殖力が強く環境の変化にも強くどこにでも現れて、少しドアや窓を開けていたりするだけで入り込んでくる厄介者として人間には嫌われていた。だがそのおかげで、バックヤード内に閉じ込められていたゾンビはこれを食べて活動を続けられたということだった。
どこかに隙間があったか、元々入り込んでいたものが中で繁殖したんだろうな。動きの鈍いゾンビでも捕まえられるくらいに鈍いから、絶好の餌になる。まったく、皮肉な話だ。
なんてことはさて置いて、裏口を開けて外に出ると、目の前にバイクに繋がれたリアカーがあった。
私とリリア・ツヴァイは、自動車などでの移動は望んでない。ただひたすら歩いてこの世界を見て回ることが目的だった。
とは言え、ロボットの私はともかく、生身の体のリリア・ツヴァイにはさすがにそれは過酷過ぎることが今回思い知らされたから、これはからはこのリアカーを使うことにしよう。リアカーに水と食料を積み、リリア・ツヴァイが疲れたらそこに乗せて、ロボットである私が引くんだ。
が、そのリアカーはバイクで牽引する為のものだったから、人や人型のロボットが引くようには作られてなかった。持ち手となる横棒がない。
で、仕方なく私は、店にあった清掃用のモップの柄をステーに紐で縛りつけ、そこを持ち手とした。
それから店の表に回って、リリア・ツヴァイと共に水と食料を積み込み、まだ十分に体力が回復してなかった彼女を乗せて、再び当ての無い旅路へとリアカーを引いて歩き出したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる