ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十

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リリアテレサの章

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『あなたが連れているそれは何ですか?』

こちらに接近してきているアレクシオーネPJ9S2にそう問い掛けられて、私は正直に応えた。

「彼女は、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の実験によって生み出された疑似生命体です。私を本体としてリンクしています」

ロボットを相手に嘘を吐いても仕方ないし、そもそも私達ロボットは嘘を吐くことができないように作られている。『何ですか?』と問い掛けられれば説明するしかない。

私がそう答えた時、視線の先で何かが動くのが見えた。木の枝を伝って移動してくるものがある。

道路脇の枝がザッと音を立てて揺れた瞬間、人影が宙を舞い、そして私達の前へと降り立った。

整った顔立ちに穏やかな笑みを湛え、すらりとした、背の高い、モデルのような体形をした女性の姿がそこにあった。

メイトギア、アレクシオーネPJ9S2だった。私の持つデータベースと比較すると若干のカスタマイズは行われているようだけど、ボディには多数の傷が見えるけれど、間違いなくアレクシオーネPJ9S2だった。

顔にかぶさった長い黒髪をかき上げる。本来の仕様だとプラチナブロンドの筈なのが黒髪になっているのは、元のオーナーの手によるものだろう。

彼女は言った。

「アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士? あまり芳しい評価ではないけれど、著名な科学者ね。なるほど理解しました」

続けて問い掛けてくる。

「アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士はあなたの主人ですか?」

その問い掛けにも私は正直に応える。

「アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は死亡しました。私には現在、マスターがいない状態です。博士の実験体である彼女、リリア・ツヴァイと共にこの惑星を記録しているところです」

「…その、リリア・ツヴァイとリンクしているということは、彼女もロボットなの? 体は明らかに人間のようだけれど」

アレクシオーネPJ9S2は、私が答えたことで合点がいかなかった部分を改めて問い掛けてきた。

「はい。彼女の体は人間のものです。厳密には、CLS患者だったものを、博士が実験よって頭蓋内の器官を除去。代わりに人工脳を移植して、それを私とリンクさせています」

そう。私、リリアJS605sとリリア・ツヴァイは、別々の体を持ってはいるけれど、本体は私であり、彼女はいわば<子機>のようなものだった。

私達ロボットは、複数の機体をリンクし、任意の機体を本体とすることで、有機的に連動することができるのだ。

だけど私とリリア・ツヴァイとは、本来のそれとも既に違ってきているのだった。

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