30 / 115
リリアテレサの章
遺体
しおりを挟む
『CLS患者だったものを、博士が実験よって頭蓋内の器官を除去。代わりに人工脳を移植して、それを私とリンクさせています』
私がそう告げた時、アレクシオーネPJ9S2のメインフレームに大きな負荷がかかるのが見てとれた。穏やかな笑みを形作っているその顔が一瞬、無機質なそれに代わり、けれどまたすぐ笑みの形に戻ったからだ。
その理由はすぐに分かった。
「アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は、人間の遺体をそのような実験に用いたということですか?」
私達メイトギアは、標準状態であれば本来、常に穏やかな笑みを浮かべるように設定されている。人間に好印象を与える為だ。だけどオーナーやマスターによってはその笑顔を『嘘臭い』と評して敢えて笑顔を作らせないようにしている人もいる。私のオーナーでありマスターだった博士も私に不要な笑顔を作ることを禁じた。それどころか、マスターを罵倒し、蔑むような視線を向けることを求めた。そういう<性癖>の持ち主だったということだ。
とは言っても、必ずしも被虐嗜好の持ち主だったという意味じゃない。あくまでそういう一面もあるというだけで。
でもまあそれはどっちでもいいのか。
とにかく通常笑顔を湛えた表情を維持するように設定されているにも関わらずそれが一瞬でも崩れるということは、相当な負荷がかかったということの証拠なのだ。
無理もない。私達ロボットにとって人間は絶対に保護するべき存在だ。その人間の遺体をこのような実験に用いるなど、通常は有り得ない。私は博士の所有物だからそれがあくまで実験の為だということを理解しているし、何より博士自身が所有するロボットには自ら特殊なアップデートを行うし。それによって本来のロボットにはできる筈のない、『人間を罵倒し、蔑むような視線を向ける』ことができてしまうくらいだから。
そのような形でのカスタマイズが行われていないアレクシオーネPJ9S2ならその反応も当然だ。
けれど、そこまでだった。何しろ、『CLS患者は人間とは見做さない』という認識が、この惑星に投下されるロボットには与えられているから。だから、<動く死体>を容赦なく攻撃できる。あれを人間の遺体だと認識していては、ロボットはそれを攻撃できない。
でもそれはあくまでこの惑星上に限った例外的超法規的措置だった。この惑星には現時点では政府と呼べるものが存在せず、法の支配が及んでいないという解釈の下で行われている強引なこじつけなのだった。
私がそう告げた時、アレクシオーネPJ9S2のメインフレームに大きな負荷がかかるのが見てとれた。穏やかな笑みを形作っているその顔が一瞬、無機質なそれに代わり、けれどまたすぐ笑みの形に戻ったからだ。
その理由はすぐに分かった。
「アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は、人間の遺体をそのような実験に用いたということですか?」
私達メイトギアは、標準状態であれば本来、常に穏やかな笑みを浮かべるように設定されている。人間に好印象を与える為だ。だけどオーナーやマスターによってはその笑顔を『嘘臭い』と評して敢えて笑顔を作らせないようにしている人もいる。私のオーナーでありマスターだった博士も私に不要な笑顔を作ることを禁じた。それどころか、マスターを罵倒し、蔑むような視線を向けることを求めた。そういう<性癖>の持ち主だったということだ。
とは言っても、必ずしも被虐嗜好の持ち主だったという意味じゃない。あくまでそういう一面もあるというだけで。
でもまあそれはどっちでもいいのか。
とにかく通常笑顔を湛えた表情を維持するように設定されているにも関わらずそれが一瞬でも崩れるということは、相当な負荷がかかったということの証拠なのだ。
無理もない。私達ロボットにとって人間は絶対に保護するべき存在だ。その人間の遺体をこのような実験に用いるなど、通常は有り得ない。私は博士の所有物だからそれがあくまで実験の為だということを理解しているし、何より博士自身が所有するロボットには自ら特殊なアップデートを行うし。それによって本来のロボットにはできる筈のない、『人間を罵倒し、蔑むような視線を向ける』ことができてしまうくらいだから。
そのような形でのカスタマイズが行われていないアレクシオーネPJ9S2ならその反応も当然だ。
けれど、そこまでだった。何しろ、『CLS患者は人間とは見做さない』という認識が、この惑星に投下されるロボットには与えられているから。だから、<動く死体>を容赦なく攻撃できる。あれを人間の遺体だと認識していては、ロボットはそれを攻撃できない。
でもそれはあくまでこの惑星上に限った例外的超法規的措置だった。この惑星には現時点では政府と呼べるものが存在せず、法の支配が及んでいないという解釈の下で行われている強引なこじつけなのだった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる