ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十

文字の大きさ
33 / 115
リリアテレサの章

トンネル

しおりを挟む
「さて、どっちにしようか…」

長さ百キロにも及ぶトンネル内部はアミダリアクターが設置されていて電気もあり、パーキングエリアも約二十キロごとに設けられている筈だった。環境は良好に保たれ、安全な筈である。

一方、山肌に沿って築かれた道路は、標高二千メートルを超えることもあり、雪に覆われることもある過酷なルートだ。

この惑星ほしを記録して回るという意味においてはむしろ山岳ルートを選ぶべきかもしれないけれど、現在の装備では、私はともかくリリア・ツヴァイにとってはさすがに厳し過ぎると言えるだろう。

いずれは過酷な環境下でも耐えられるような装備を整え、そういった環境下の光景なども記録するとしても、今は無理をする必要もない。時間も機会もまだあるんだから。

という訳で、私達はトンネル内を通ることとなった。

けれど、さすがに行けども行けどもトンネルの壁しか見えないそこでは、

「退屈すぎる……」

などと漏らすくらいリリア・ツヴァイの方が飽きてしまい、リアカーの荷台で寝てしまった。

もちろん彼女の主な思考は私のメインフレーム内で行われているものだけど、頭蓋内の人工脳でもいくらかは行われていて、かつ肉体からのフィードバックもあり、実は私と彼女はまったく別な思考を行っているとも言えた。リンクはしていても、彼女は私の単なる<子機>じゃない。私とは意見がぶつかることさえあるんだ。

今回彼女は、トンネル内の景色に飽きてしまったということだった。

かと言って、過酷な山岳ルートを選ぶこともできなかったので、文句を言うこともなかったけれど。

トンネル内を歩き始めて約五時間。前方にパーキングエリアの表示が見えてきた。取り敢えずそこに寄って、リリア・ツヴァイの為に食事にしようと思う。

パーキングエリアに着くと、そこは、ドーム状の天井部分にトンネルの外の景色を映し出した、一見すると外のようにも見える演出が行われている場所だった。

「あれ? 外に出たの…?」

青空(の映像)が見えるそこでリリア・ツヴァイは寝ぼけたようにそんなことを言った。

「あ…投射か…」

さすがにすぐに映像だと気付いてそう呟く。

でもそんな私達の前に、また<動く死体=CLS患者>が現れた。今度は三体。

私は落ち着いて拳銃を構え、二発ずつ頭部に弾丸を打ち込み、処置する。

そうして処置した遺体を、パーキングエリア内に作られた公園に埋葬し、柵を一部解体してそれを墓標として立てた。

その時、公園脇で私はあるものを見付けていた。

「フランソワPX-33か…」

それは、休憩用のベンチに腰かけたまま動かないメイトギアだった。

一見しただけだと見目麗しい女性にも見える造形を持ちながらも、<フランソワ>という男性名が示すとおりに男性型のメイトギアであるそれは、左腕が欠損し、右手に銃を持った状態で機能停止していた。

このパーキングエリア内のCLS患者を処置中に機能停止し、そのままになったんだろう。左腕はここに投下された時点で既に欠損していたに違いない。そして彼も、最後の役目を貫いたんだ。

ロボットとして……

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...