ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十

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ふたりの章

寒い

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単純な<思考能力>なら、AIは人間を大きく凌駕したと思う。いや、実際に数値化された能力では、私達、家庭用のロボットに搭載されているAIでさえ、人間を上回ってるのは事実だ。

だけど、リリア・ツヴァイのように<人間の体>を得、それがもたらす途方もないデータの渦に曝されていると、AIは本当に人間を超えたのだろうか?っていう疑問が湧いてきてしまう。

『人間を決して傷付けてはいけない』

AIにそのタガを掛けてないといけないのは、実はAIは未だに人間を正しく理解できていないからなんじゃないのか?

そうしておかないと、AIは、自分の理解が及ばない、不可解で非合理的な人間という存在を<邪魔者>と見做してしまうんじゃないのか?

人間を遥かに超越し、途方もなく深いところまでたくさんのことを理解してると本当に言えるなら、人間を排除しようなんて思わないんじゃないのか?

だって、理解できているなら、そんなことに惑わされることなく正しく導くことだってできる筈だから。

そうだ。AIはいまだに、本当に人間を完全に理解なんてできていない。人間を<超越>なんてしていない。

人間が完全には人間を理解できてないのと同じようにAIも人間を理解できてないのなら、それのどこが『人間を超越してる』と言えるんだろう。

人間に牙を剥くかもしれないと人間に思わせてしまっている限りは、本当に人間を超越なんてしてないってことなんじゃないのかな。人間は人間を信じ切れずに不安を抱くことがある。だから、人間にそんな不安を抱かせないようになってようやく、『人間を超越した』と言えるんじゃないかな。

牙を剥くかもしれないなんて不安を抱かせているうちは、ようやく人間に『並んだ』程度なんじゃないのかな。

そんなことを思いながら私は歩く。リリア・ツヴァイと共に、北へと。

機械の体の私には、あくまで『気温が下がってきた』という情報しか感じ取れないけれど、リリア・ツヴァイの体は、

「寒い…」

と彼女に呟かせた。人間の体は、気温が下がってくると『寒い』と感じる。だけど私の体はそれは感じない。気温が高いか低いかは、あくまで数字上のことでしかない。

人間が『寒い』とか『暑い』とか感じるのは、たぶんそういう情報が生命に直結する場合があるから、数値ではなく<感覚>として、場合によっては危機感を覚えることもあるものとして、察知する必要があるからなんだろうな。

ロボットである私には、さほど重要な情報ではないけれど。

途中のショッピングモールで、寒冷地用の衣服も手に入れた。それをリリア・ツヴァイに着てもらう。

「お~! あったかい」

と、彼女は、感心したように声を上げたのだった。

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