ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十

文字の大きさ
88 / 115
ふたりの章

カスタマイズ

しおりを挟む
『可愛い系が似合う』

リリア・ツヴァイにそう言われてしまった私だけど、元々、製造された時のコンセプトとしては、<ツン>だったそうだ。加えて、正式名称のリリアJS605sの<s>には、<サディスティック>という、開発者の<遊び心>が込められていたとも言われてる。

だから、初期状態の私は、元々がややきつい物言いをする、<ツンとした女の子>だったらしい。

博士はそういうところが気に入って私を買ったそうだった、その上で独自のカスタマイズを加え、普通のメイトギアにはできない『主人を蔑み罵る』ということまでできるようにしてしまった。

もちろん、本気で蔑んでいる訳でも罵っている訳でもない。あくまで<そういうてい>っていうだけだ。それでも、普通のロボットは決してそんなことはしない。そんなことをすればかなりの割合で人間は傷付くから。だけど博士はそうじゃなかった。他人に何を言われてもまるで堪えない。だから蔑み罵る(ふり)ができた。

その時点で既に私は<普通>ではなかったけれど、でもまだロボットの範疇には収まってたと思う。それが今や見る影もないって感じかな。

「…雪…?」

さらに北に向かって歩き、日が暮れて一気に気温が下がってきたかと思うと、白いものが風に乗ってちらつき始めた。離れたところで降ってる雪が風に乗って運ばれてくる<風花>ってやつだ。

「降ってくる雪を見るのは初めてだ」

リリア・ツヴァイが感嘆の声を上げる。確かに彼女は、すでに積もってる雪を遠くから見たことはあっても、雪が降るのを見るのは初めてだったな。

「寒いね。人間はこんなところでも住むんだ」

アミダ・リアクターのおかげで人はいなくても電気だけは供給され続けることで、明かりだけは灯ってる人家が遠くに見えて彼女は呟くように言った。確かに人間はもっと寒いところにだって住む。エネルギー効率とかも考えれば適した気候の場所に住めばいいのにと私はつい思ってしまうけど、それを言ったら私達だってこんな当てのない意味のない旅を続けてるくらいなんだし、人間のことは言えないか。

「今夜はあの集落で休もう」

私はそう応えて、かろうじて空に赤みが残ってる中をリリア・ツヴァイと共に歩く。

辿り着いた集落はやっぱり無人で、簡便なAIに制御された<家>だけが、決して帰ってくることのない主人を待ち続けてた。

そこに勝手に入り込めば当然、<通報>される。だけどその通報によって駆けつける警察もいない。それに、CLSのアウトブレイクの際に発令された非常警報は解除されていない。だから、

『非常時の緊急避難として一時退避を要請します』

と申し入れれば、滞在中のすべての言動は記録される代わりに通報もされなかったりもするんだ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...