ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十

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ふたりの章

深い蒼

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一面の銀世界を、私達はゆっくりと北を目指して進んだ。

私が乗ってるのは電動のスノーモービルだし、雪が音を吸収することもあって、不思議なくらい静かだった。

ネズミ以上の大きさの動物がいないからというのもあるのか。空を見ても鳥すらいない。

動物の足跡すらないまっさらな雪原をただただ進む。なのにここはまだ、本来、人間の生活圏内だった場所だ。

本当に人間はいないんだって改めて思う。

見ると、リアカーの中には、雪だるまがいくつも作られてた。

「人間がいたら、きっと、こんな風にたくさん、雪だるまが作られてただろうな」

リリア・ツヴァイが言う。それは私も同感だ。だから彼女は雪だるまをたくさん作ったのか。

人間がたくさん亡くなったことを思い返しても、以前ほどはおかしくなったりしない。人間もこんな風にして痛みに慣れていくんだろうな。

慣れることのできない痛みもあるとは聞くけど。

大切な人を失った痛みとか。

『私にとって大切な人って誰だろう…』

博士?

博士は確かに私のマスターだったし大切なのは事実でも、実際に亡くなったことを理解しても<痛み>というものまではなかった。それは当時の私がまだロボットの範疇に収まっていたこともあるかもだけど、博士の<人格>だけはまだ、この惑星の静止軌道上で地上を見守り続けてる博士の宇宙船の中の人工知能が保持してるからっていうのもあるのかな。話をするだけなら今でもできる筈だし。

そういうのも含めて、私はまだ、<本当に大切な人>っていないのかもしれない。

強いて言えばリリア・ツヴァイがそうなのかもと思いつつ、正直、そこまでという印象はあまりない。それに万が一、彼女の体は失われても、彼女の<データ>は私が保存してる。

……ああ、でも、それも違うのか。

人間の体を失ってしまったら、いくら他の体でデータを復元できても、それはもう<彼女>じゃないんだ。

それじゃ博士と同じになってしまう。

そう思うと、またあの胸が痛むような感覚が……

なんだ。やっぱり私にとってリリア・ツヴァイは<大切な人>なんじゃないか。

人間の場合のそれとは違うとしても、彼女は、私にとっては<肉親>みたいなものだからか。

それに気付いた瞬間、私は自分の顔が勝手に笑顔になってるのを察してしまった。

「私はリリア・ツヴァイと一緒にいられて嬉しいよ」

ついそんなことを口にしてしまう。すると彼女も、

「私もだよ。だって私とあなたは<家族>だもん。<姉妹>みたいなものだよね。だから一緒にいたいんだ」

「人間の場合は、家族でも一緒にいたくないっていう人もいるけどね」

「そんなの、それこそ『人それぞれ』ってやつだよ。私達は一緒にいたい。それでいいじゃない」

「そうだね」

何気なく見上げた空は、どこまでも落ちていきそうなほどに深いあおで満たされてたのだった。

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