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新世界の章
墓標
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ヒューン。
遠くの方で微かにそんな音がしているのが分かる。
いや、違うな。遠くじゃない。すぐ近く。と言うか私の中から聞こえてくる音だ。私の機構が作動した音だった。
それに気付いた途端に、私の意識が鮮明になってくるのが分かった。
『そうか…私は再起動したんだ……』
それに気付くと同時に、私を構成する多くの部品から、メンテナンス時のログが集約されてくる。博士はちゃんと、私をメンテナンスしてくれたんだ。
そのことがなんだか少し意外だった。ただ、私に内蔵された時計を確認して、『ああ…』と納得してしまったけど。
だって、私がメンテナンスを受ける為に横になった時から既に半年が過ぎていたから。
「いやあ、最初はただメンテナンスを行うだけのつもりだったんだが、作業をしてる間にいろいろと興味が湧いてしまってね。徹底的に調べさせてもらったよ」
悪びれるでもなくそういう博士にも、『相変わらずだな』と思ってしまった。この人は本当に、自分の興味や研究心が最優先で、その為ならなんだって後回しにできる人だから。
でもその時、私はハッとなった。
『そうだ…! リリア・ツヴァイは……!?』
私は、リリア・ツヴァイの<本体>であり、彼女の<思考>の大部分は私のAIの一部の領域を使っている。それはつまり、私が機能を停止すれば彼女も意識を失うということだ。
とは言え、肉体の機能の維持は彼女の頭蓋内にある人工脳が司っているから、ほんの数時間のことならただ寝てるだけのようなものだと言えた。
でもそれが半年にも及んだとなれば、その間、彼女は意識を失ったままだったということになる。
「リリア・ツヴァイは…!?」
思わず声を上げながら彼女の姿を探して周囲を見渡してしまった。ここはロボット用のメンテナンスルームだから、殆ど生身のような彼女がここにいる筈がないのに。
そんな私に、博士が言う。
「ああ、うん。そのことなんだが…」
と言いながら、私を促し、建物の外へと向かう。
滅多に見られない歯切れの悪い博士の様子に、私は言いようのない<不安>に襲われた。
私に背を向けたまま、博士は語る。
「実はな。君の電源を切ってすぐ、彼女の人工脳にエラーが生じてね。肉体の維持に支障をきたしたんだ。どうやら、彼女の本体である君のAIとの連携に不備が発生していたらしい。完全に電源を落としてしまうと、人工脳の方が機能を維持できない状態になっていたようなんだ」
そう言って建物の裏へときた博士は、いくつも並んだ墓標の一つの前で立ち止まったのだった。
『そんな……』
遠くの方で微かにそんな音がしているのが分かる。
いや、違うな。遠くじゃない。すぐ近く。と言うか私の中から聞こえてくる音だ。私の機構が作動した音だった。
それに気付いた途端に、私の意識が鮮明になってくるのが分かった。
『そうか…私は再起動したんだ……』
それに気付くと同時に、私を構成する多くの部品から、メンテナンス時のログが集約されてくる。博士はちゃんと、私をメンテナンスしてくれたんだ。
そのことがなんだか少し意外だった。ただ、私に内蔵された時計を確認して、『ああ…』と納得してしまったけど。
だって、私がメンテナンスを受ける為に横になった時から既に半年が過ぎていたから。
「いやあ、最初はただメンテナンスを行うだけのつもりだったんだが、作業をしてる間にいろいろと興味が湧いてしまってね。徹底的に調べさせてもらったよ」
悪びれるでもなくそういう博士にも、『相変わらずだな』と思ってしまった。この人は本当に、自分の興味や研究心が最優先で、その為ならなんだって後回しにできる人だから。
でもその時、私はハッとなった。
『そうだ…! リリア・ツヴァイは……!?』
私は、リリア・ツヴァイの<本体>であり、彼女の<思考>の大部分は私のAIの一部の領域を使っている。それはつまり、私が機能を停止すれば彼女も意識を失うということだ。
とは言え、肉体の機能の維持は彼女の頭蓋内にある人工脳が司っているから、ほんの数時間のことならただ寝てるだけのようなものだと言えた。
でもそれが半年にも及んだとなれば、その間、彼女は意識を失ったままだったということになる。
「リリア・ツヴァイは…!?」
思わず声を上げながら彼女の姿を探して周囲を見渡してしまった。ここはロボット用のメンテナンスルームだから、殆ど生身のような彼女がここにいる筈がないのに。
そんな私に、博士が言う。
「ああ、うん。そのことなんだが…」
と言いながら、私を促し、建物の外へと向かう。
滅多に見られない歯切れの悪い博士の様子に、私は言いようのない<不安>に襲われた。
私に背を向けたまま、博士は語る。
「実はな。君の電源を切ってすぐ、彼女の人工脳にエラーが生じてね。肉体の維持に支障をきたしたんだ。どうやら、彼女の本体である君のAIとの連携に不備が発生していたらしい。完全に電源を落としてしまうと、人工脳の方が機能を維持できない状態になっていたようなんだ」
そう言って建物の裏へときた博士は、いくつも並んだ墓標の一つの前で立ち止まったのだった。
『そんな……』
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