4 / 90
宰相
しおりを挟む
確定してしまった。
ここが異世界で、私は巻き込まれ事故で飛ばされたのだと、目の前の美丈夫がハッキリと言ったのだから。
「私の名前はルシウス・ベラルド。この国、トルス国の宰相を任されています」
宰相ね。
国の運営を担っている立場ということか。
しかし、若い、と思う。
私の中での宰相のイメージといえば、海千山千の狸親父どもを束ねて国の舵取りができるようなおじさんだ。
良く表現したとしてイケオジだろうか。
ところが目の前の彼はどう見ても三十代。
下手したら三十代前半かもしれない。
……え?
私よりも年下の可能性も……?
少なからず衝撃を受けていたが、いや待てそれどころではないと思い直す。
ここがそのトルス国とやらだったとして、私はこれからどうなるというのだろう。
もし私が本をまったく読まないタイプだったらこの現状を受け止めるのも困難だったに違いない。
『異世界転移? 何それ?』とパニックになった可能性もある。
しかし幸いなことに私の頭の中にはたくさんのサンプルデータがあった。
そう、これまでに大量に読んだ異世界転移物の本、そして異世界転移を題材にした乙女ゲームたちである。
「……元の世界に戻ることは可能でしょうか?」
多くの異世界転移ものの話は片道切符、つまり転移したら戻れないものだ。
でもまれに元の世界に戻れる方法を設定している話もあることだし、何事も確認が必要だろう。
そう思っての問いかけに、ベラルド卿はあっさりと答えた。
「大変申し訳ないですが、元の世界に戻っていただくことは難しいかと」
美丈夫の困り顔いただきました!
眼福です。
……などと思っている場合ではない。
ああ……そうですか。
やはり片道切符なのね。
となればここは今後の自分の立場を決める上で大事な場面ではないだろうか。
「では私はどうなるのでしょう?」
「先ほど聖女様を王宮にお連れした際にあなたの部屋を用意させました。今後のことをご相談させていただくためにも、まずは王宮までご同行願えればと思うのですが?」
さっきのあの間で私の部屋を用意したと?
若いからといって侮るなかれ。
この人、仕事ができる。
いずれにせよ私はこの国になんのツテもない訳で。
ここで放り出されたら困るのはこっちである。
「わかりました。今後のことで相談に乗っていただけるのであればこちらこそ助かります」
かくして私はエスコートされるままベラルド卿についていくことになった。
ひとまず身一つで追い出される訳ではなくて良かった……と思ったのだけど。
考えてみれば勝手に異世界に呼び寄せたのは彼らの都合で、言ってみれば『誘拐』なのでは?と気づくのはまた後の話。
そして同様にあとで振り返ってみて思った。
取り乱すこともなく現状を把握し、冷静に自分の身の振り方を決められたのは、ある意味驚きで感情が振り切れてしまっていたからだったのだろう、と。
簡単に言ってしまえば、心の中では充分パニックになっていた、ということだ。
ここが異世界で、私は巻き込まれ事故で飛ばされたのだと、目の前の美丈夫がハッキリと言ったのだから。
「私の名前はルシウス・ベラルド。この国、トルス国の宰相を任されています」
宰相ね。
国の運営を担っている立場ということか。
しかし、若い、と思う。
私の中での宰相のイメージといえば、海千山千の狸親父どもを束ねて国の舵取りができるようなおじさんだ。
良く表現したとしてイケオジだろうか。
ところが目の前の彼はどう見ても三十代。
下手したら三十代前半かもしれない。
……え?
私よりも年下の可能性も……?
少なからず衝撃を受けていたが、いや待てそれどころではないと思い直す。
ここがそのトルス国とやらだったとして、私はこれからどうなるというのだろう。
もし私が本をまったく読まないタイプだったらこの現状を受け止めるのも困難だったに違いない。
『異世界転移? 何それ?』とパニックになった可能性もある。
しかし幸いなことに私の頭の中にはたくさんのサンプルデータがあった。
そう、これまでに大量に読んだ異世界転移物の本、そして異世界転移を題材にした乙女ゲームたちである。
「……元の世界に戻ることは可能でしょうか?」
多くの異世界転移ものの話は片道切符、つまり転移したら戻れないものだ。
でもまれに元の世界に戻れる方法を設定している話もあることだし、何事も確認が必要だろう。
そう思っての問いかけに、ベラルド卿はあっさりと答えた。
「大変申し訳ないですが、元の世界に戻っていただくことは難しいかと」
美丈夫の困り顔いただきました!
眼福です。
……などと思っている場合ではない。
ああ……そうですか。
やはり片道切符なのね。
となればここは今後の自分の立場を決める上で大事な場面ではないだろうか。
「では私はどうなるのでしょう?」
「先ほど聖女様を王宮にお連れした際にあなたの部屋を用意させました。今後のことをご相談させていただくためにも、まずは王宮までご同行願えればと思うのですが?」
さっきのあの間で私の部屋を用意したと?
若いからといって侮るなかれ。
この人、仕事ができる。
いずれにせよ私はこの国になんのツテもない訳で。
ここで放り出されたら困るのはこっちである。
「わかりました。今後のことで相談に乗っていただけるのであればこちらこそ助かります」
かくして私はエスコートされるままベラルド卿についていくことになった。
ひとまず身一つで追い出される訳ではなくて良かった……と思ったのだけど。
考えてみれば勝手に異世界に呼び寄せたのは彼らの都合で、言ってみれば『誘拐』なのでは?と気づくのはまた後の話。
そして同様にあとで振り返ってみて思った。
取り乱すこともなく現状を把握し、冷静に自分の身の振り方を決められたのは、ある意味驚きで感情が振り切れてしまっていたからだったのだろう、と。
簡単に言ってしまえば、心の中では充分パニックになっていた、ということだ。
756
あなたにおすすめの小説
もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】
青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。
親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。
辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。
———————————
本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。
更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。
誤字・脱字をコメントにて、何話の修正か記載と同時に教えてくださると幸いです。
また読みにくい部分に対してはルピを追記しますので、同様に何話のことかお教えいただけると幸いですm(_ _)m
…(~2025/03/15)…
※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討する予定です。
※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。
※40話にて、近況報告あり。
※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】異世界から来た聖女ではありません!
五色ひわ
恋愛
ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。
どうすれば良いのかしら?
ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。
このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。
・本編141話
・おまけの短編 ①9話②1話③5話
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる