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突然の侵入者
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そんなこんなで私は隠れ家での作業に入ったわけだけど。
これがまたとても快適だった。
何よりも自分のペースで仕事ができるのがいい。
本を一覧に落とし込みながら、必要があれば修復し、休憩時間には気になる本を読む。
何ここ楽園?
そう思えるくらいに快適な空間で、私は久しく感じていなかった充実感と共にウキウキで仕事をしていた。
そしてお昼を過ぎてしばらく経った頃。
私は小休憩と称してお気に入りのダージリンティーを入れると持参したクッキーを取り出しソファ横のサイドテーブルに置いた。
なんと、こちらの世界では午前と午後にそれそれティータイムと称して休憩を取る習慣があるらしい。
それこそ最初はお昼以外にも休憩時間があるなんて!と戸惑ったものだけど、そういうものだと言われてからはありがたく休ませてもらっている。
とはいえ、日本での社畜根性が染みついてしまっているからか、15分も休めば『仕事をしなければ』という気持ちになってしまうんだけど。
ああー!
本当に至福の時間だわ。
異世界の本が読み放題状態なんて何のご褒美かしら。
まぁ、発端は巻き込まれ事故だったけれど。
そんなことを思いながらまったりと本を読んでいると誰かが言い争うような声が聞こえてくる。
ん?
誰かこっちに来る?
何やら穏やかではない雰囲気を振りまきながら誰かがこちらに向かって来ているみたいだった。
基本的に私の存在はあまり知られることのないように、と言われていることもあり、どうしたものかと思う。
でも今ここから動いたらおそらく鉢合わせするだろう。
とりあえず大人しくして様子をみる?
そう思っている内に声の主の姿が見えた。
彼らは私のいる場所から本棚を一つ隔てた向こうで立ち止まっている。
あれ?
あれは宰相のべラルド卿と……誰だろう?
そろそろ青年と言えるくらいの年齢の男の人だ。
身長はべラルド卿よりも少し低いくらいだが高身長で体つきはがっしりとしている。
「だから、俺は騎士科に進みたいんだ」
既に声変わりは終えているのか、その声は低い。
「しかし、べラルド家は宰相を歴任してきた家。お前の一存だけで変えることはできないだろう」
落ち着いたべラルド卿の声が相手をなだめるかのようにかけられる。
「俺には向いてないって言ってるだろう!?」
「レグルス!」
べラルド卿に言い放った後、青年は身を身を翻すと本棚の間を駆けて行った。
一人残されたべラルド卿は少しうつむいて右手で前髪をくしゃっと握る。
そしてため息をついた後、ゆっくりと顔を上げた。
顔を上げたべラルド卿と、目が合う。
卿の目が驚きに見開かれた。
えっと……。
私は覗き見していたわけではないですよー!
何か言われたわけでもないけれど、思わず心の中で言い訳を言ってしまう。
おそらくべラルド卿にとっては誰にも見られたくない状況だったに違いない。
だからこそ彼らは本来であればほとんど人のいないこの場所まで移動してきたのだろうから。
いやでも、不可抗力よね?
私何もしていないよね?
職務に励んでいた一図書館職員のいるところにやってきたのはあなたたちの方ですよー。
……まぁ、今は休憩でお茶を嗜んでいたところですが。
「…………」
「…………」
お互い目が合っているものの、何も言うことができない。
しかしこのままの沈黙が続くのも困るだろう。
だから。
「あの……よろしければお茶でも飲まれます?」
目の前のテーブルに置いてあるお茶のセットを指差して、私はそう言った。
これがまたとても快適だった。
何よりも自分のペースで仕事ができるのがいい。
本を一覧に落とし込みながら、必要があれば修復し、休憩時間には気になる本を読む。
何ここ楽園?
そう思えるくらいに快適な空間で、私は久しく感じていなかった充実感と共にウキウキで仕事をしていた。
そしてお昼を過ぎてしばらく経った頃。
私は小休憩と称してお気に入りのダージリンティーを入れると持参したクッキーを取り出しソファ横のサイドテーブルに置いた。
なんと、こちらの世界では午前と午後にそれそれティータイムと称して休憩を取る習慣があるらしい。
それこそ最初はお昼以外にも休憩時間があるなんて!と戸惑ったものだけど、そういうものだと言われてからはありがたく休ませてもらっている。
とはいえ、日本での社畜根性が染みついてしまっているからか、15分も休めば『仕事をしなければ』という気持ちになってしまうんだけど。
ああー!
本当に至福の時間だわ。
異世界の本が読み放題状態なんて何のご褒美かしら。
まぁ、発端は巻き込まれ事故だったけれど。
そんなことを思いながらまったりと本を読んでいると誰かが言い争うような声が聞こえてくる。
ん?
誰かこっちに来る?
何やら穏やかではない雰囲気を振りまきながら誰かがこちらに向かって来ているみたいだった。
基本的に私の存在はあまり知られることのないように、と言われていることもあり、どうしたものかと思う。
でも今ここから動いたらおそらく鉢合わせするだろう。
とりあえず大人しくして様子をみる?
そう思っている内に声の主の姿が見えた。
彼らは私のいる場所から本棚を一つ隔てた向こうで立ち止まっている。
あれ?
あれは宰相のべラルド卿と……誰だろう?
そろそろ青年と言えるくらいの年齢の男の人だ。
身長はべラルド卿よりも少し低いくらいだが高身長で体つきはがっしりとしている。
「だから、俺は騎士科に進みたいんだ」
既に声変わりは終えているのか、その声は低い。
「しかし、べラルド家は宰相を歴任してきた家。お前の一存だけで変えることはできないだろう」
落ち着いたべラルド卿の声が相手をなだめるかのようにかけられる。
「俺には向いてないって言ってるだろう!?」
「レグルス!」
べラルド卿に言い放った後、青年は身を身を翻すと本棚の間を駆けて行った。
一人残されたべラルド卿は少しうつむいて右手で前髪をくしゃっと握る。
そしてため息をついた後、ゆっくりと顔を上げた。
顔を上げたべラルド卿と、目が合う。
卿の目が驚きに見開かれた。
えっと……。
私は覗き見していたわけではないですよー!
何か言われたわけでもないけれど、思わず心の中で言い訳を言ってしまう。
おそらくべラルド卿にとっては誰にも見られたくない状況だったに違いない。
だからこそ彼らは本来であればほとんど人のいないこの場所まで移動してきたのだろうから。
いやでも、不可抗力よね?
私何もしていないよね?
職務に励んでいた一図書館職員のいるところにやってきたのはあなたたちの方ですよー。
……まぁ、今は休憩でお茶を嗜んでいたところですが。
「…………」
「…………」
お互い目が合っているものの、何も言うことができない。
しかしこのままの沈黙が続くのも困るだろう。
だから。
「あの……よろしければお茶でも飲まれます?」
目の前のテーブルに置いてあるお茶のセットを指差して、私はそう言った。
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