異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売

文字の大きさ
29 / 90

突然の侵入者

しおりを挟む
 そんなこんなで私は隠れ家での作業に入ったわけだけど。
 これがまたとても快適だった。
 何よりも自分のペースで仕事ができるのがいい。

 本を一覧に落とし込みながら、必要があれば修復し、休憩時間には気になる本を読む。
 
 何ここ楽園?

 そう思えるくらいに快適な空間で、私は久しく感じていなかった充実感と共にウキウキで仕事をしていた。

 そしてお昼を過ぎてしばらく経った頃。
 私は小休憩と称してお気に入りのダージリンティーを入れると持参したクッキーを取り出しソファ横のサイドテーブルに置いた。

 なんと、こちらの世界では午前と午後にそれそれティータイムと称して休憩を取る習慣があるらしい。
 それこそ最初はお昼以外にも休憩時間があるなんて!と戸惑ったものだけど、そういうものだと言われてからはありがたく休ませてもらっている。

 とはいえ、日本での社畜根性が染みついてしまっているからか、15分も休めば『仕事をしなければ』という気持ちになってしまうんだけど。

 ああー!
 本当に至福の時間だわ。
 異世界の本が読み放題状態なんて何のご褒美かしら。
 まぁ、発端は巻き込まれ事故だったけれど。

 そんなことを思いながらまったりと本を読んでいると誰かが言い争うような声が聞こえてくる。

 ん?
 誰かこっちに来る?

 何やら穏やかではない雰囲気を振りまきながら誰かがこちらに向かって来ているみたいだった。
 
 基本的に私の存在はあまり知られることのないように、と言われていることもあり、どうしたものかと思う。
 でも今ここから動いたらおそらく鉢合わせするだろう。

 とりあえず大人しくして様子をみる?

 そう思っている内に声の主の姿が見えた。
 彼らは私のいる場所から本棚を一つ隔てた向こうで立ち止まっている。

 あれ?
 あれは宰相のべラルド卿と……誰だろう?
 そろそろ青年と言えるくらいの年齢の男の人だ。
 身長はべラルド卿よりも少し低いくらいだが高身長で体つきはがっしりとしている。

「だから、俺は騎士科に進みたいんだ」

 既に声変わりは終えているのか、その声は低い。

「しかし、べラルド家は宰相を歴任してきた家。お前の一存だけで変えることはできないだろう」

 落ち着いたべラルド卿の声が相手をなだめるかのようにかけられる。

「俺には向いてないって言ってるだろう!?」
「レグルス!」

 べラルド卿に言い放った後、青年は身を身を翻すと本棚の間を駆けて行った。

 一人残されたべラルド卿は少しうつむいて右手で前髪をくしゃっと握る。
 そしてため息をついた後、ゆっくりと顔を上げた。

 顔を上げたべラルド卿と、目が合う。
 卿の目が驚きに見開かれた。

 えっと……。
 私は覗き見していたわけではないですよー!

 何か言われたわけでもないけれど、思わず心の中で言い訳を言ってしまう。
 おそらくべラルド卿にとっては誰にも見られたくない状況だったに違いない。
 だからこそ彼らは本来であればほとんど人のいないこの場所まで移動してきたのだろうから。

 いやでも、不可抗力よね?
 私何もしていないよね?

 職務に励んでいた一図書館職員のいるところにやってきたのはあなたたちの方ですよー。
 ……まぁ、今は休憩でお茶を嗜んでいたところですが。

「…………」
「…………」

 お互い目が合っているものの、何も言うことができない。
 しかしこのままの沈黙が続くのも困るだろう。

 だから。

「あの……よろしければお茶でも飲まれます?」

 目の前のテーブルに置いてあるお茶のセットを指差して、私はそう言った。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】

青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。 親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。 辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。 ——————————— 本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。 更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。 誤字・脱字をコメントにて、何話の修正か記載と同時に教えてくださると幸いです。 また読みにくい部分に対してはルピを追記しますので、同様に何話のことかお教えいただけると幸いですm(_ _)m  …(~2025/03/15)… ※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討する予定です。 ※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。 ※40話にて、近況報告あり。 ※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

処理中です...