49 / 90
お披露目
しおりを挟む
その日王家の舞踏会には王都の名立たる貴族たちが一堂に会した。
異世界より来たりし聖女を一目見ようと集まった彼らは、その場に黒髪黒眼の女性が二人いることに驚いただろう。
「異世界から呼び寄せられる聖女様はお一人のはずでは?」
「未だかつて聖女様が二人降臨されたなんて聞いたことがないぞ」
「どちらかは偽者なのではないか?」
「しかし王家の主催する舞踏会に参加しているということは、お二人とも正式に認められているということだろう?」
ヒソヒソとあちらこちらで憶測が噂されているのが私の耳に入った。
王家の舞踏会は国王の挨拶で始まるのが通例だ。
ホールへの入場は家格の下の者から始まり、最後は公爵家、そして王族である王太子が登場する。
人々の注目の中で王太子であるソレイユと宰相のルシウスが花音ちゃんと私を伴って入場した。
花音ちゃんはプリンセスライン、そして私はスレンダーラインの白を基調としたドレスを身につけている。
まるで花嫁のドレスのようだよね。
そう思ってしまうのはドレスの色のせいもあるけれど、見た目が日本でのウェディングドレスと似ているからだ。
まさかここでこんなドレスを着ることになるとは。
正直自分には縁のない物だったから一生着ることはないと思っていたのに。
そんなことを思っているうちにすべての貴族、そして王族の入場が終わった。
そして会場内のざわつきは国王陛下と王妃殿下の登場に静まる。
国王が正面壇上に設けられた王座につくと全員の視線が集まった。
「この度異世界より聖女様に降臨いただいた」
国王の言葉が会場の隅々にまで響き渡る。
人々は一言も聞き漏らすまいと耳を澄ませているように思えた。
「また、今回は聖女様だけでなくもう一人異世界からの客人がいらっしゃる」
そう言うと国王は会場中をゆっくりと見回す。
「異世界からの客人を二人も迎えることは我が国始まって以来の出来事である。そしてこれは大変光栄なことであると皆心して欲しい」
イレギュラーである聖女以外の異世界人。
その存在に対して国王がどう考えるか、それは私のこれからに大いに影響することだ。
舞踏会の前にレグルス卿から陛下の意向を聞いていたとはいえ、実際にその言葉を耳にするまではドキドキが止まらなかった。
とりあえず陛下が私の存在を好意的に紹介してくれて良かったよ。
最初感じていた訝しげな視線も、陛下の言葉によってかなり緩和されたように思う。
まぁ、私ではなく花音ちゃんが聖女様なのは見てすぐにわかることだしね。
トルス国に降臨する聖女は『黒髪黒眼の少女』だ。
どこからどう見ても私は『少女』ではない。
逆に花音ちゃんは可憐な少女にしか見えないのだから、どちらが聖女なのかは一目瞭然だった。
「王太子のソレイユがエスコートしているのが聖女であるカノン様、そして宰相のルシウスがエスコートしているのが異世界からの客人であるナツメ殿だ」
陛下から正式な紹介を受け、花音ちゃんと私がそれぞれ一礼する。
まだこちらの世界のマナーを身につけられていないからカーテシーをすることはできなかったけれど。
そしてこれをもって無事にお披露目がされたこととなり、この後には舞踏会というだけあってダンスを楽しむ時間が待っているらしい。
皆の見守る中、陛下の合図をきっかけに会場に優雅な音楽が流れ始めた。
異世界より来たりし聖女を一目見ようと集まった彼らは、その場に黒髪黒眼の女性が二人いることに驚いただろう。
「異世界から呼び寄せられる聖女様はお一人のはずでは?」
「未だかつて聖女様が二人降臨されたなんて聞いたことがないぞ」
「どちらかは偽者なのではないか?」
「しかし王家の主催する舞踏会に参加しているということは、お二人とも正式に認められているということだろう?」
ヒソヒソとあちらこちらで憶測が噂されているのが私の耳に入った。
王家の舞踏会は国王の挨拶で始まるのが通例だ。
ホールへの入場は家格の下の者から始まり、最後は公爵家、そして王族である王太子が登場する。
人々の注目の中で王太子であるソレイユと宰相のルシウスが花音ちゃんと私を伴って入場した。
花音ちゃんはプリンセスライン、そして私はスレンダーラインの白を基調としたドレスを身につけている。
まるで花嫁のドレスのようだよね。
そう思ってしまうのはドレスの色のせいもあるけれど、見た目が日本でのウェディングドレスと似ているからだ。
まさかここでこんなドレスを着ることになるとは。
正直自分には縁のない物だったから一生着ることはないと思っていたのに。
そんなことを思っているうちにすべての貴族、そして王族の入場が終わった。
そして会場内のざわつきは国王陛下と王妃殿下の登場に静まる。
国王が正面壇上に設けられた王座につくと全員の視線が集まった。
「この度異世界より聖女様に降臨いただいた」
国王の言葉が会場の隅々にまで響き渡る。
人々は一言も聞き漏らすまいと耳を澄ませているように思えた。
「また、今回は聖女様だけでなくもう一人異世界からの客人がいらっしゃる」
そう言うと国王は会場中をゆっくりと見回す。
「異世界からの客人を二人も迎えることは我が国始まって以来の出来事である。そしてこれは大変光栄なことであると皆心して欲しい」
イレギュラーである聖女以外の異世界人。
その存在に対して国王がどう考えるか、それは私のこれからに大いに影響することだ。
舞踏会の前にレグルス卿から陛下の意向を聞いていたとはいえ、実際にその言葉を耳にするまではドキドキが止まらなかった。
とりあえず陛下が私の存在を好意的に紹介してくれて良かったよ。
最初感じていた訝しげな視線も、陛下の言葉によってかなり緩和されたように思う。
まぁ、私ではなく花音ちゃんが聖女様なのは見てすぐにわかることだしね。
トルス国に降臨する聖女は『黒髪黒眼の少女』だ。
どこからどう見ても私は『少女』ではない。
逆に花音ちゃんは可憐な少女にしか見えないのだから、どちらが聖女なのかは一目瞭然だった。
「王太子のソレイユがエスコートしているのが聖女であるカノン様、そして宰相のルシウスがエスコートしているのが異世界からの客人であるナツメ殿だ」
陛下から正式な紹介を受け、花音ちゃんと私がそれぞれ一礼する。
まだこちらの世界のマナーを身につけられていないからカーテシーをすることはできなかったけれど。
そしてこれをもって無事にお披露目がされたこととなり、この後には舞踏会というだけあってダンスを楽しむ時間が待っているらしい。
皆の見守る中、陛下の合図をきっかけに会場に優雅な音楽が流れ始めた。
616
あなたにおすすめの小説
もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】
青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。
親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。
辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。
———————————
本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。
更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。
誤字・脱字をコメントにて、何話の修正か記載と同時に教えてくださると幸いです。
また読みにくい部分に対してはルピを追記しますので、同様に何話のことかお教えいただけると幸いですm(_ _)m
…(~2025/03/15)…
※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討する予定です。
※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。
※40話にて、近況報告あり。
※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】異世界から来た聖女ではありません!
五色ひわ
恋愛
ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。
どうすれば良いのかしら?
ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。
このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。
・本編141話
・おまけの短編 ①9話②1話③5話
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる