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聞かせて欲しい
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ヴァニタス親子の密談を聞いたことから不眠に悩まされている今の状況まで、私の話を聞き終えたべラルド卿はその眉間に深い皺を寄せている。
やはり話さなかった方が良かったのかな。
彼の表情を見てそんな気持ちが湧き上がってきた。
私の不安を感じ取ったのか、不意に右手を上げたべラルド卿は自身の眉間をまるで伸ばすかのように押さえる。
そして困ったような表情になった。
「私は考えごとをする時に眉間に皺が寄るようなんです」
唐突なその言葉は私に対する気遣いなのだろう。
どことなく困ったような様子と合わせて、いつもの厳しさが鳴りを潜めていることに私は面食らった。
「ナツメ殿は……」
そこまで言ったところでべラルド卿は言葉を切る。
どう伝えようか、迷っているような感じがした。
「なぜそうも一人で抱え込もうとするのでしょう?」
「え?」
「ナツメ殿のいた世界との常識の違いでしょうか? こちらでは貴族のご令嬢は困りごとがあればすぐに誰かに相談して解決を委ねます」
相談相手は主に当主だったり配偶者や婚約者だったりですけどね、とべラルド卿が続ける。
「要するに、自分よりも権力のある者に解決してもらうということです」
それはまぁ、貴族のご令嬢としては当たり前なのだろう。
その代わり彼女たちは自由が制限されるのだから。
「それに心の問題に関しても、お力になれることがあると思いますよ」
本当に?
でもどんな方法が?
「セラピアが淹れたというハーブティーもそうですが、それ以外にも不安があるなら夜通し話していてもいいですし、ナツメ殿が眠るのを見守ってうなされるようなら起こすこともできます」
……え……誰が起こしてくれるの!?
「あ! もちろんその場合はリリアがお側に待機するということです」
なぜかべラルド卿が少し慌てたように付け加えた。
「いずれにしても、自分の中に気持ちを溜め込み過ぎるのは良くないでしょう。それでは治るものも治らないのでは?」
たしかに、悩みを人に話すことは『話す=離す』と聞いたことがある。
誰かに悩みを聞いてもらうだけでも気持ちが楽になるのは本当なのだろう。
ただそれを、私ができなかっただけで。
「異世界から突然こちらに呼び寄せられて、まだそれほど長いつき合いではない私たちを信用しきれないのは仕方ないと思います」
「そんなことは!」
そんなことは無い。
べラルド卿もリリアもそれこそグノシー伯も、とても良くしてくれていると思う。
花音ちゃんだっているし、最初は印象の良くなかったソレイユ殿下だって話してみればそれほど嫌な人ではなかった。
だから、信用していないように見えるのであればそれはやはり私の問題なのだ。
「ナツメ殿」
改まったような声が聞こえて、私はうつむきがちになっていた視線を上げた。
「これは私からのお願いです」
そう言ったべラルド卿は、応接テーブルの上に置いていた私の右手をそっと取るとその大きな手で包み込む。
「どうか、辛い時にはその気持ちを聞かせて欲しい」
なぜそんな顔をするのだろう?
まるで何かを希うかのように。
「一人で抱え込まないでください」
その言葉がゆっくりと染み渡ってきて。
私は無意識のうちに小さく頷いていたのだった。
やはり話さなかった方が良かったのかな。
彼の表情を見てそんな気持ちが湧き上がってきた。
私の不安を感じ取ったのか、不意に右手を上げたべラルド卿は自身の眉間をまるで伸ばすかのように押さえる。
そして困ったような表情になった。
「私は考えごとをする時に眉間に皺が寄るようなんです」
唐突なその言葉は私に対する気遣いなのだろう。
どことなく困ったような様子と合わせて、いつもの厳しさが鳴りを潜めていることに私は面食らった。
「ナツメ殿は……」
そこまで言ったところでべラルド卿は言葉を切る。
どう伝えようか、迷っているような感じがした。
「なぜそうも一人で抱え込もうとするのでしょう?」
「え?」
「ナツメ殿のいた世界との常識の違いでしょうか? こちらでは貴族のご令嬢は困りごとがあればすぐに誰かに相談して解決を委ねます」
相談相手は主に当主だったり配偶者や婚約者だったりですけどね、とべラルド卿が続ける。
「要するに、自分よりも権力のある者に解決してもらうということです」
それはまぁ、貴族のご令嬢としては当たり前なのだろう。
その代わり彼女たちは自由が制限されるのだから。
「それに心の問題に関しても、お力になれることがあると思いますよ」
本当に?
でもどんな方法が?
「セラピアが淹れたというハーブティーもそうですが、それ以外にも不安があるなら夜通し話していてもいいですし、ナツメ殿が眠るのを見守ってうなされるようなら起こすこともできます」
……え……誰が起こしてくれるの!?
「あ! もちろんその場合はリリアがお側に待機するということです」
なぜかべラルド卿が少し慌てたように付け加えた。
「いずれにしても、自分の中に気持ちを溜め込み過ぎるのは良くないでしょう。それでは治るものも治らないのでは?」
たしかに、悩みを人に話すことは『話す=離す』と聞いたことがある。
誰かに悩みを聞いてもらうだけでも気持ちが楽になるのは本当なのだろう。
ただそれを、私ができなかっただけで。
「異世界から突然こちらに呼び寄せられて、まだそれほど長いつき合いではない私たちを信用しきれないのは仕方ないと思います」
「そんなことは!」
そんなことは無い。
べラルド卿もリリアもそれこそグノシー伯も、とても良くしてくれていると思う。
花音ちゃんだっているし、最初は印象の良くなかったソレイユ殿下だって話してみればそれほど嫌な人ではなかった。
だから、信用していないように見えるのであればそれはやはり私の問題なのだ。
「ナツメ殿」
改まったような声が聞こえて、私はうつむきがちになっていた視線を上げた。
「これは私からのお願いです」
そう言ったべラルド卿は、応接テーブルの上に置いていた私の右手をそっと取るとその大きな手で包み込む。
「どうか、辛い時にはその気持ちを聞かせて欲しい」
なぜそんな顔をするのだろう?
まるで何かを希うかのように。
「一人で抱え込まないでください」
その言葉がゆっくりと染み渡ってきて。
私は無意識のうちに小さく頷いていたのだった。
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