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第39話 紋章の鑑定
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「おーい、淳さーん」
自分の店、「彫り右衛門」に帰宅すべく歩いていた時のこと。
振り返ると、王宮で別れたはずのアラレジストがこちらに向かって全力疾走してきていた。
「どうしたんです?」
「あのー、ふと思ったんすけど……ヤウォニッカちゃんって、結構高位の魔族のはずですよね」
アラレジストの唐突な疑問に、俺は一瞬ギクッとした。
何故その事を?
いや、冷静に考えれば誰だって分かる事か。
この際、どう説明しようか。
うまく誤魔化すか、あるいはあの子は討伐しない方が人類のメリットになる点を含め全て話すか。
……いや、前世にはこんな諺があった。
「ピンチはチャンス」
これは「アラレジストが余計な魔王討伐に赴くかもしれないピンチ」であると同時に、「アラレジストの愛の程度を確かめるチャンス」だという見方もできるのだ。
要は、ヤウォニッカが魔王と知ったアラレジストが幻滅しないかを試し、アラレジストがヤウォニッカにとっていい夫になるかを見極めるのだ。
ヤウォニッカには、「必ず、俺より素敵な白馬の王子様が現れると思う」などと宣言してしまったのだ。それくらいのことはしてやろう。
「ヤウォニッカは魔王です」
俺は敢えてこれだけを言う事にした。
最も誤解を生みやすい言葉の選び方だ。だからこそ、アラレジストの深層心理を絶妙に分析できるというもの。
「ええ? でも、俺が倒したのも魔王でしたよね……」
そこまで言って、アラレジストは途端に顔を真っ青にした。
「もしかして、俺が倒しちゃったのがヤウォニッカちゃんの本体で、ヤウォニッカちゃんが同時に消滅してしまったとか無いですよね? それなら俺、後悔してもしきれません!」
……思ってたのと正反対の方向へ盛大な誤解をしやがった。
まあ、種族の壁を超える愛があることは確認できたので誤解は解いてやるとしよう。
「ご安心を。アラレジストさんが倒したのは別の魔王です。あれは魔神が加護を与えたことで魔王になった奴で、ヤウォニッカさんは魔神の紋章を持つ俺が加護を与えて魔王になった奴ですので」
「なるほど、安心しました! ……あれ、今の話だと魔王って『魔神の紋章を持つ者の加護を受けた者』って意味になるんでしょうか?」
「まあ、そうですね」
「そうですか。……よし、俺も魔王にしてください!」
……は?
こいつは何を言っているんだ?
「俺も魔王になれば、俺がヤウォニッカちゃんと釣り合うじゃないですか! ヤウォニッカちゃんは高嶺の花にはさせませんよ!」
うん、完璧に謎理論だ。
しかし、アラレジストの活躍には俺も助かってる。願いを叶えてやらんでもないな。
どうせ、加護を与えるのは大した魔力消費ではないのだし。
前と同じように、鑑定を駆使してちょっとした加護を与えた。
「ありがとうございます! じゃあ今度こそ、ギルドに行って魔王討伐の証明を出してきますね!」
そう言って走り去っていくアラレジスト。
その姿が見えなくなるまで手を振った俺は、再び店に向かって歩き出した。
☆ ☆ ☆
店に帰った俺は、王宮で過ごした時間の精神的疲れからかすぐに爆睡してしまった。
起きたら、次の日の朝になっていた。
よく寝たな、と思いつつ朝食を準備していたその時。
俺はもっと早くに試すべきだったある事を思い出した。
自分の手に彫った、破壊天使の紋章の1コマの静止画の鑑定だ。
もし俺の実験がいい線を行っているなら、鑑定で何か有用な情報を得られる筈だ。
逆に鑑定で何もでなければ、根本的にやっていることがズレていると言う事になる。
「鑑定」
【破壊天使の紋章の欠片】
これ単体では意味を為さない。
破壊天使の力を得るには、動かす必要がある■
うーん、当たらずとも遠からずって感じだな。
一応正しい路線にはいるようだが、鑑定から有用な情報が得られたとも言い難い。
……そういえば、だ。
この世界の魔法は、「ハッキリとしたイメージを持てば魔力消費を抑えられる」という性質があるよな。
逆に言えば、「魔力を過剰に消費する事で、稚拙なイメージでも高性能な魔法が使える」と言えるのではなかろうか?
よく考えれば、この仮説は転移魔法を使った時点で証明されているようなもんだ。
上手くいって当然なのだ。鑑定も、過剰に魔力を消費してみよう。
「鑑定」
すると……現れた説明はさっきと変わらなかったものの、「破壊天使」というワードが青文字になった。
前世の常識が当てはまるとすれば、これはクリックしたら詳細が出るという類のもののはずだ。
クリック。
【破壊天使】
宇宙を統治する存在。
宇宙そのものと同等のエネルギーを持ち、宇宙空間内の任意の対象を破壊できる。
普段はその力を以って、宇宙の治安を管理している。
エンジェルの排他原理より、破壊天使は各宇宙に1人しか存在しない■
……「エンジェルの排他原理」だと?
こんなもん始めて聞いたぞ。
もどかしい事に、「エンジェルの排他原理」は青文字になっていない。
排他、というからには俺が破壊天使になったらリンネルは消滅してしまうのだろうか。
冗談じゃ無いぞ。
何か打開策を練らねばならないではないか。
……まずは、「エンジェルの排他原理」が何かを知ることからだな。
自分の店、「彫り右衛門」に帰宅すべく歩いていた時のこと。
振り返ると、王宮で別れたはずのアラレジストがこちらに向かって全力疾走してきていた。
「どうしたんです?」
「あのー、ふと思ったんすけど……ヤウォニッカちゃんって、結構高位の魔族のはずですよね」
アラレジストの唐突な疑問に、俺は一瞬ギクッとした。
何故その事を?
いや、冷静に考えれば誰だって分かる事か。
この際、どう説明しようか。
うまく誤魔化すか、あるいはあの子は討伐しない方が人類のメリットになる点を含め全て話すか。
……いや、前世にはこんな諺があった。
「ピンチはチャンス」
これは「アラレジストが余計な魔王討伐に赴くかもしれないピンチ」であると同時に、「アラレジストの愛の程度を確かめるチャンス」だという見方もできるのだ。
要は、ヤウォニッカが魔王と知ったアラレジストが幻滅しないかを試し、アラレジストがヤウォニッカにとっていい夫になるかを見極めるのだ。
ヤウォニッカには、「必ず、俺より素敵な白馬の王子様が現れると思う」などと宣言してしまったのだ。それくらいのことはしてやろう。
「ヤウォニッカは魔王です」
俺は敢えてこれだけを言う事にした。
最も誤解を生みやすい言葉の選び方だ。だからこそ、アラレジストの深層心理を絶妙に分析できるというもの。
「ええ? でも、俺が倒したのも魔王でしたよね……」
そこまで言って、アラレジストは途端に顔を真っ青にした。
「もしかして、俺が倒しちゃったのがヤウォニッカちゃんの本体で、ヤウォニッカちゃんが同時に消滅してしまったとか無いですよね? それなら俺、後悔してもしきれません!」
……思ってたのと正反対の方向へ盛大な誤解をしやがった。
まあ、種族の壁を超える愛があることは確認できたので誤解は解いてやるとしよう。
「ご安心を。アラレジストさんが倒したのは別の魔王です。あれは魔神が加護を与えたことで魔王になった奴で、ヤウォニッカさんは魔神の紋章を持つ俺が加護を与えて魔王になった奴ですので」
「なるほど、安心しました! ……あれ、今の話だと魔王って『魔神の紋章を持つ者の加護を受けた者』って意味になるんでしょうか?」
「まあ、そうですね」
「そうですか。……よし、俺も魔王にしてください!」
……は?
こいつは何を言っているんだ?
「俺も魔王になれば、俺がヤウォニッカちゃんと釣り合うじゃないですか! ヤウォニッカちゃんは高嶺の花にはさせませんよ!」
うん、完璧に謎理論だ。
しかし、アラレジストの活躍には俺も助かってる。願いを叶えてやらんでもないな。
どうせ、加護を与えるのは大した魔力消費ではないのだし。
前と同じように、鑑定を駆使してちょっとした加護を与えた。
「ありがとうございます! じゃあ今度こそ、ギルドに行って魔王討伐の証明を出してきますね!」
そう言って走り去っていくアラレジスト。
その姿が見えなくなるまで手を振った俺は、再び店に向かって歩き出した。
☆ ☆ ☆
店に帰った俺は、王宮で過ごした時間の精神的疲れからかすぐに爆睡してしまった。
起きたら、次の日の朝になっていた。
よく寝たな、と思いつつ朝食を準備していたその時。
俺はもっと早くに試すべきだったある事を思い出した。
自分の手に彫った、破壊天使の紋章の1コマの静止画の鑑定だ。
もし俺の実験がいい線を行っているなら、鑑定で何か有用な情報を得られる筈だ。
逆に鑑定で何もでなければ、根本的にやっていることがズレていると言う事になる。
「鑑定」
【破壊天使の紋章の欠片】
これ単体では意味を為さない。
破壊天使の力を得るには、動かす必要がある■
うーん、当たらずとも遠からずって感じだな。
一応正しい路線にはいるようだが、鑑定から有用な情報が得られたとも言い難い。
……そういえば、だ。
この世界の魔法は、「ハッキリとしたイメージを持てば魔力消費を抑えられる」という性質があるよな。
逆に言えば、「魔力を過剰に消費する事で、稚拙なイメージでも高性能な魔法が使える」と言えるのではなかろうか?
よく考えれば、この仮説は転移魔法を使った時点で証明されているようなもんだ。
上手くいって当然なのだ。鑑定も、過剰に魔力を消費してみよう。
「鑑定」
すると……現れた説明はさっきと変わらなかったものの、「破壊天使」というワードが青文字になった。
前世の常識が当てはまるとすれば、これはクリックしたら詳細が出るという類のもののはずだ。
クリック。
【破壊天使】
宇宙を統治する存在。
宇宙そのものと同等のエネルギーを持ち、宇宙空間内の任意の対象を破壊できる。
普段はその力を以って、宇宙の治安を管理している。
エンジェルの排他原理より、破壊天使は各宇宙に1人しか存在しない■
……「エンジェルの排他原理」だと?
こんなもん始めて聞いたぞ。
もどかしい事に、「エンジェルの排他原理」は青文字になっていない。
排他、というからには俺が破壊天使になったらリンネルは消滅してしまうのだろうか。
冗談じゃ無いぞ。
何か打開策を練らねばならないではないか。
……まずは、「エンジェルの排他原理」が何かを知ることからだな。
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