最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
12 / 625
1章

12話 デスレース

しおりを挟む
「だ、だってβ最強で、PT必須とか、言われてるのに、そ、それにレア職だからって……」
「まあレア職よね、序盤きつすぎて他職やった方がいいって言われるし」
「じゃ、じゃあ、なんで、ソロのLv5で、ここに……」
「だって死に戻りする気で来たし」

 所持金はとっくの昔に0だし、経験はさほど稼いでない。なんならレベリングしたのは錬金と伐採のSLvが上がった時にやけっぱちになって木材投入した時くらいしか思い出せない。ぶっちゃけデスペナなんて知ったこっちゃないという状況と言うのもでかいのだが。

「銃弾尽きてるガンナーなんてそこらの魔法職に手頃な杖持たせて殴らせた方が良いくらい弱いわよ」
「そ、そんなぁ……」
「そういう事だから素直にちゃんとした職の奴と組んだ方が精神的にいいわよ」

 こういう時はさっさとちゃんとした理由を添えて断る。だらだらと後で発覚しましたとか、組んだ後で文句を言われたり、寄生プレイだとかを言われない予防策ともいえる。余計なトラブルは抱え込まないのが立派ゲーマーなのだ。

「で、でも、あなたは、どうするんですか……?」
「採掘ポイントにダッシュで近づいて死ぬまで掘りまくる」
「で、デスペナは……?」
「構わないわね、所持金無いし経験もレベル上がってから稼いでないし」

 ウサ銃から採掘用つるはしに持ち替え、マップを開いて大まかな採掘ポイントの目星を立てる。東エリア2は北東側に行くほど山になる丘陵マップ。南東側に行くとだだっ広い平原となる。世界全体的にみると南は平原中心に、北側は山が多くなる。後は所々砂漠があったり湖やらがあったり、観光名所的な感じに点在している。とにかく狙いは北東だ。

「さーて、ここのエリアのモンスターもチェックして、あとはリスポン地点をここに再設定して、と」

 マップの境目である安全地帯はリスポン地点を指定できる箇所がある。これもそのうちの一つ。街からマラソンしなくてもよくなるが、下手すると私は街へ帰還できなくなる可能性もある。

「……生産職でもないのに、なんで採掘なんか……」
「装備を自前で揃えたい派なのよ、私は」
「いや……いやいや、そんなレベルじゃないですよ、ここアクティブモンスターも多いですし……採掘場所にいけるかもわからないのに……!?」
「だから?」
「だから……って」

 確かに傍から見たら布の服一丁と言うか何も装備していないドラゴニアンがつるはし持って首傾げているわけだし、普通じゃあないね。それはまあ自覚してるし、それはいいんだけど。この犬耳は危ないからとか適正レベルじゃないからと言うのばかり言っているが「そういう事じゃない」。

「まあ言ってることは分かるわよ、確実にワンパンで死ぬだろうし、採掘ポイントも今から調べるわけだし?」
「じゃ、じゃあ、レベリングしてからとかの方が……」
「確かにそうなんだけどねぇ」

 ふむ……確かに何でこんなにムキになっているんだろうか?と考える。キャラを作り直して後で銃カテゴリーを使えるサブとか二次職に選択するのが多分想定していた使い方が、正式版におけるガンナーの使い方が正しいのだろう。ただ他のPTに引き上げた貰ったところでそれは面白くない。と言うか上がった所で肝の銃弾がなければ火力はでないから意味はない。

「それはそれじゃん?私としてはソロプレイだし、トレインで擦り付けが発生するかもしれないけど他プレイヤーに迷惑が掛かってるわけでもないし、これは私の楽しみ方であって、攻略方法とは別の話でしょ」
「え、いや、そう、です、けど……」

 さて、これからリアルでやらないマラソンでもするか、と言いながら安全地帯から抜け、東エリア2に進んでいく。

「レベリングして先に進むだけがT2Wの楽しみ方じゃないと思うのよ、私は」

 犬耳ショタが狼狽えている間に、背中越しに手をぷらぷらと振ってそこで別れる。こんな悪人のような相手に勇気を振り絞って声を掛けた度胸はあるんだから、もっといい相手が見つかるでしょう。あと単純に可愛いから、そっちの趣味がある人が引っかかるんじゃないかしら。



「それにしても一つエリア超えただけでアクティブ増えるのが問題なのよね」



エルスタン東エリア2 
Lv05:食人花
Lv07:ブラッドビー
LV08:髑髏リス
Lv10:ワイルドボア



 獣ばっかりのラインナップに虫と植物が組み込まれてるわけだけど、ここのアクティブは後者2匹、前者2匹は特殊アクティブになる。そしてここを突破するにあたって危険なのはリスだ。尻尾等含めてだいたいサッカーボール一回り二回り小さい程度の大きさなのだが、ベースがリスなだけあってすばしっこい、そのくせ好戦的なので探知されるとすぐに襲ってくる。

 ここの適正レベルを上げているのが大体こいつのせい。ボアに関しては探知されても距離がある場合突進攻撃をしてくるので障害物に当てるか突進を避けてさっさと振り切れば問題なく逃げられる。前者の2匹は共存関係なのか、食人花との戦闘に入らなければ蜂はこっちに来ない、逆もまた然り。
 
 とにかくリスの猛攻を避け、ボアの突進攻撃を避け、花と蜂を刺激しない様にしつつ潜伏しながら山側に進んで行くというのがここの攻略方法になる。普通に考えればレベル上げて倒しながら進んで行くのが正攻法なんだろうけど。



 それがここで三回死んだ私の成果。

 一回目はリスから逃げている時横っ腹にボアの突撃を貰い盛大に木にたたきつけられ死亡。体ばらばらになるんじゃねえかって思うくらいには吹っ飛んだ。ハリウッド映画とかでよくある不意打ちで撥ねられるあれと一緒。

 二回目はやっぱりリスから逃げている間に、食人花と蜂のテリトリーに入ったのがアウトだった。非アクティブと言うわけではなく戦闘している状態だと乱入してくるルーチンもあるみたい。

 三回目はリスに囲まれて髑髏と言うか骨を投げられてそのままHPが吹っ飛んだ。悪魔の城で上段から骨ばっか投げられジャンプキャンセルされるあれを思い出すくらいにはうざかった。

「んー……突破できんなあ……一回だけ採掘ポイントがあるとこ見つけたんだけど、吹っ飛ばされたし」

 一番奥まで行けたのが最初で、あとの二回はその半分も到達できてない状況だ。うん、やっぱり強行軍が過ぎたって話よね。採掘マーカーを一度だけ確認できたからマップには表示されているし、当初の目標とは違うが、またここに戻ってくればいいだけで、もう少し耐えられるだけのステータスになってから出戻りしよう。

「まあ、やっぱり順繰り成長するのが一番の近道って事になるか」

 いつものまずいMREを食べつつ、ちらっと時間を見る。リアル時間で夜の8時、サービス開始して12時間。ゲーム内時間で1/3の12時。なんだかんだでゲーム内では丸二日経ったわけだ。

「とりあえず小休止して仮眠でも取るか、計画の見直しもしないといけないわけだし」

 もうちょっと楽に突破できると思っていた過去の私をひっぱたきたい。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...