最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
27 / 625
1章

26話 鍛冶手伝い

しおりを挟む
「さて、と……クエストもとりあえずあらかた片付いたけど、どうしようか」

 いつものMREをむしゃつきながらメニューのクエスト項目を眺めてすっきりした画面を見て軽く満足。あれから採取スキルの入手で新たに発生した採取系のクエストも受け、片っ端から片付けてみた。時間はそれなりにかかったが、休みって最高。自分の気力が続く限りどうにかなるんだから、やるに決まってるよね。内容としては討伐クエスト3種、採取クエスト2種、おつかいクエスト5種を済ませておいた。


討伐クエスト
1:ラット 3匹
2:ラビット3匹
3:黒リス 3匹 


 北エリア1の相手をそれぞれ3匹ずつ片付けるだけのもの。流石にあそこの奴らに負ける程、弱い状態ではないのでさくっと倒しきった。なんなら全部片付けるまでにHP半分も減らなかった。やばい、凄い進歩してる。自分でもかなり感動している。


採取クエスト
1:薬草 5個納品
2:花類 5個納品


 こっちはこっちで討伐クエストをやっている最中にちょびちょびと採取していたらあっという間に達成できた。まあ簡単な物なので報酬自体もそんなに良くはないのだが。花類は基本的に効果がないもので、コスモスとかタンポポやら季節とかガン無視で生えている、多分染料とか作れるんじゃないかな、これ

 それで最後のおつかいクエストだが、文字通りクエストアイテムを運んで渡す、典型的なおつかいだった。何か特別な事も無く渡して、報酬をもらって終わり。もうちょっと何かあると思っていたが、チュートリアルみたいなもので、マップを覚えましょう、と言った感じではあった。

「まあ、結局収穫は無いんだけどね」

 クエスト報酬で手に入れたそこそこのZ(ゼニー)は、多分デスペナで吹っ飛ぶと思うのであぶく銭のようなもんだ。ガサツエルフに渡す分だけは先に渡しておいた方がいいかもしれない。
 レベルアップもしていないし、これだけやって全部で750Z(ゼニー)で内訳は討伐300Z、採取200Z、おつかい250Zだった。

「縄とナイフは一本ずつ補充して……銅と鉄の製錬試してみるか」

 この間、連れ込まれた鍛冶系総合クランだが、ギルドのデフォ生産施設よりも金掛けているのもあってか施設自体は充実しているし、経験者に聞きながらやった方が成功率とかも上がると思う。ついでに製錬しつつ、あのガサツエルフにナイフの件を一応聞いておく。こんな所で繋がってくるとは思わなかった。

「あのエルフ、ぐずると面倒なのが一回でわかるってなかなかだけど」

 そんなわけであっという間に辿り着いた例のクラン、名前くらい聞いておけばよかった。さっさと中に入って受付に。

「ガサツエルフいる?」
「あ、うちのサブマス泣かせた人!サブマスは今日はまだログインしてないっすねリアル夕方~深夜くらいにくるんすけど」
「じゃあくず鉄と銅鉱石の製錬させてほしーんだけど」
「遠慮ないっすね、あんた……でも駄目っす。クラン権限で許可下りないと使えないんで、そして俺にはその権限がないっす」
「鍛冶ギルド行くのめんどくせえなあ……」

 ここで作ってくれと言ってもいいのだが、それだと自前の経験値が上がらないので意味はない。結局製錬して加工して銃身を作ると言うのがレベルいくつになったら安定して出来るのが分からないのであくまで施設だけを使いたかった。

「とりあえず出直すわ」
「フレコ交換してねーんすか?」
「マニュアルでしか見た事ないわ、それ」

 そういいながらクランから出て鍛冶ギルドの方へと。高級な施設で品質の良い物作って経験ブーストしたかったのに、あっさりとその夢は崩れ去っていったよ。って言うか考えてみれば朝から晩までずっとログインしてあれこれやってる私が異常なのだが。
 フレコ、正式名称はフレンドコード。交換しておけばゲーム内メールやらコールで連絡がとり合えるというよくあるシステム。以前触れたハラスメントブロックもフレンド登録すれば常識の範囲内で解除される。どっちにしろソロとかPTお断りの職している私には縁が無さすぎるシステム。

「それにしてもこんなにいい立地の場所にクランハウスおったててる辺りは、かなり稼いでるんだろうな」

 鍛冶クランから出て数歩、ぱっと見える範囲で鍛冶ギルドがあるのに今気が付いた。そりゃあ切っても切れない関係なんだから、ギルドがある場所の反対側とかにクランハウス建てないよね。しかし立地が悪ければ悪いほど安くなるし、メリット自体はあるのだが。生産職は各ギルドに近い所にクランハウスを建てるのはメジャーらしいが、ソロなんで以下略。





「まあ近くて便利なのは、いいけどね」

 鍛冶ギルドに入り、誰でも使っていい炉と金敷の前に来る。インベントリからくず鉄をスクロールし、選択。炉に火が入りくず鉄が自動的に放り込まれて製錬され始める。うん、便利、こういう色々考えなきゃならん所が自動なのはゲームならではだよね。
 しばらく待っているとアナウンス音と共に炉にマーカーが付く。完成しましたという合図なのだろう、ユーザーフレンドリーだな、本当に。


名称:くず鉄の延べ棒(品質1)×4
詳細:製錬済みのくず鉄 鉄よりは品質は悪い


「ま、こんなもんよね……くず鉄とか銅鉱石に品質は関係ないから、多分レベル依存なんだろうけど、くず鉄はくず鉄だし、もっと施設とか方法を変えて不純物を飛ばせれば、純度の高い物を作れそうだけど」

 それじゃあと言いながら銅鉱石を炉に放り込んでまた同じような手順と時間を過ごす。しかし不純物を飛ばすための方法と施設ってそもそもこのT2Wに実装されているかどうかは分からないし、どう弄ればいいのかもわからないのでいつもの課題というわけだ。
 そんな事を思っていればあっという間に銅鉱石も製錬完了。死ぬほど時間かかるとかそういうのを覚悟していたが、そんな事がないのは良い事だよ。


名称:銅の延べ棒(品質1)×1
詳細:製錬済みの銅 安い柔い使いやすいの三拍子


 そんなわけであっさりと完成、失敗が無い代わりに品質が最低値になるみたい?まあ苦労して手に入れたものが失敗して全部消失ってよくあるけど、あれ結構テンション下がるのよね。金と時間をかけて集めたものが物の数秒で全部吹っ飛んでもう一回揃え直しってストレスの上がり方半端ないし。

「5個で1個製錬かあ、こうなってくると黒色火薬も個数が無いと作れないかもしれん」

 出来上がった延べ棒をまじまじと見つめながらちょっとした感動。まあリアルタイム一日半だからそんなに掛かってないけど。

「このまま鍛冶してみるかな?どうせトライアンドエラーで何回も試行するだろうし、レベル上げなきゃならないし」

 と、思ったが、急にどうやったら作れるんだろうか?レシピ自体は不明なので自由製作みたいな感じであれこれ設定したうえで作ると思うのだが。
 型を作って流し込んで、ではなく鉄の棒を先に作ってそれに細長くした鉄を隙間なく巻き付けて最後に棒を抜いて作る、というのが一応の火縄銃身の製法らしいが。流石にそこまでしなくてもいいんじゃないかと思う。リアル志向も悪くはないのだが、やりすぎると手間のかかる死にコンテンツになるのでそこらへんは考えているだろう。
 
「とりあえず一本作ってみるか」

 金敷の所でメニューをぽちぽちと押し材料と使う物を選択。くず鉄の延べ棒をとりあえず筒状にしてみる処理を選択しがんがんと叩く。もうこの辺の工程はさっくりゲーム的表現で完成する。


名称:変形した鉄
詳細:歪に変形した鉄の塊 成形しなおせば再利用可能


「ふーむ……いきなり上手く行くとは思ってなかったけど」

 何度か失敗してたらこれも駄目になるのだろうか、それとも品質がどんどん下がっていくのかは分からないが、とりあえずこの方法ではまだダメという事ははっきりした。さっさとレベル上げてまともな鍛冶が出来る様に……ならないと行けないのは分かってるので別に驚きもテンションが下がるわけもない。

「それでも鍛冶系は先が見えたのは確かだけど」

 あとはレベルを上げて鍛冶加工で筒状に出来れば銃身は完成するわけだ。
 そういえば銃床とずっと言ってるがあくまで銃身を支える部分として言ってるので詳しく言うと違うのだが、これも自分でわかればいいのであまり気にしない。 
 兎に角、大きい2パーツ中の1パーツが完成の目途がたったわけだし、あとは鍛冶のレベルを上げて、木材パーツを作って、硝石を手に入れて、火薬作って、弾丸作って、ゴールというわけだ。

「硝石のハードルだけ高いわ、やっぱり」

 自分で作った鉄の塊を見ながらため息交じりに。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...