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4章
121話 遠回りの遠回り
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いやー、キングサハギンは強敵でした。
なーんて、あっさり倒せればよかったんだが、今まであった中で一番強い……のは当たり前だな。レベル高いんだから。
と言うか、そもそもレベル云々ではなく挙動とか含めて、デカブツのボスにしか当たっていなかったのが一番大きい問題だった。私のレベルではそもそも受けきれない、どうにか1発受けたがまさかの40ダメージ、速攻で瀕死だ。
「くっそ、いてえ……!」
手持ちのポーション3本投入して全快。あと2本でHPポーションも無くなるのでこれ以上は普通に危険ラインになる。
やっぱステータス違うとダメだな、ちゃんとレベル上げないと。倒したら2、3レベルくらいは上がってくれるだろう。
「しっかり前線してくれないと死ぬんだけどー」
「無茶ばっかり注文してくるのやめろっす!」
「ちょ、ちょっと……く、くるから……!」
何だかんだで致命傷を避けられているのは後ろで控えているメカクレが魔法矢で援護しているからというのも大きい。やっぱりあんなんでもトッププレイヤーなんだろうな、威力もタイミングもかなりいい。
「ほら、メタリカを見習いなさい、あなたが抜けられたら全滅なのよ」
「やっぱり貧乏くじじゃないっすか!」
忍者から一歩引いてキングサハギンの挙動をもう一度確認する。基本モーションは普通のサハギンと変わらないわけだが、動作の洗練さが違う。一撃一撃に確実な殺意が乗っている上に、ブレというものが無い。
そういえば銛って槍とどこが違うんだろう。返しの有無とかなのか。あの髭親父に聞いてやると共に樽が作れなかった恨みをぶつけてやらないと。
「足止めるっすから追撃よろしく!」
素早く印を組むと共におしゃべり忍者が3人に増える。
おお、すげえ、狐を体の中に宿している、オレンジ色の忍者みたいな事してる。
「3方向からの強襲で足止め、援護は勝手にやってくれっす!」
それぞれの忍者が、刀と手裏剣と忍術での波状攻撃を開始する。
いいなあ、ああいう動きにメリハリの付く行動ってやっぱあこがれるよね。此処の所、新しいスキルって私も覚えていないわけだし。アクロバティックなスキルとか出てくれてもいいのに。
「っと、そういうのは後にするとして」
三位一体攻撃を繰り出しているのに合わせて此方もウサ銃での銃撃で援護を開始する。
そういえばウサ銃での二度撃ちって使った事ないな、いちいちトリガーを引く動作が無いから楽に撃てるって事か。
とにかくすぐに二度撃ちを発動し、キングサハギンに対して銃撃をすると、鳳仙花での発射の様に銃声が2つ重なったような音をさせてから、しっかり銃弾が2発発射される。
「うむ、やっぱ良いスキルだわ」
攻撃を繰り出しているおしゃべり忍者の横をすり抜け、2発の銃弾がキングサハギンに直撃し、悲鳴を上げさせる。久々にウサ銃を使ったが、やはり一番の相棒装備はお前だよ。
「脱皮したので、柔らかい……?」
「みたいね、やられる前にもっと攻撃するわよ」
「あ、はい……!」
おしゃべり忍者がいつまであの分身を出せるか分からないが、とにかく長期戦よりは一気にダメージを加えて押し切る方がこのパーティに向いている。やっぱりタンクの重要性は大事だ。
とにかく押し切らないといけないので二度撃ちをさらに発動し、追撃。こいつの欠点は2回使うとMPではなく残弾不足で使えないのでさらに追加で1発入れなきゃいけないという点だ。
奇数装弾、偶数使用の欠点はこう言う所だな。
「鳳仙花出してもいいけど、これ以上前はちょっと抵抗あるわね」
着弾を確認してから、すぐに狙いを付け直して深く息を吐き出し、FF(フレンドリーファイア)しない様に忍者の攻撃の合間を狙う。
ばんばん派手に撃ちまわるのもいいが、残りの銃弾も少ないし、あー、畑見に行きたい、もうジャガイモ出来てるだろうし、アルコールとか硝石とか大量生産して死ぬほど無駄に撃ちたい。
「あ、やべっ」
雑念を払うかの様に、分身が消え本体だけになった忍者がゴム毬の様に跳ねながら私にぶつかってくる。
これもキングサハギンの攻撃扱いになるのか、結構な勢いでぶつかるのでそれだけで衝突ダメージが入る。これだけで13ダメージ、ハラスメントブロックとかも加味されてんだろう。
「ちょっと、これ、やばいっす……」
「ああ、重い……さっさとどきなさいよ!」
「む、むりっす、今は動けないっす……」
仰向けに倒れその上におしゃべり忍者がぐったりとして乗っている。
やっぱり分身のダメージとかクールタイム的な問題で動けないのがデメリットになるんだろう。無制限に使えるとかノーデメリットで使えるわけじゃないのか。
「ああ、ちょっと、メタリカ!援護して援護!」
「い、いまします……!」
倒れている私と忍者に向かってキングサハギンがのしのしと歩いて近づいてくる。完全にダウン追撃をする為に攻撃しにきている。その出鼻を挫くためにメカクレが魔法矢を何度も撃ち、相手の進行と攻撃を抑え……られていない。向こうも向こうでMPの回復が間に合っていないのか、それとも大技を使うタイミングが無いのか。
「今日は曲撃ちばっかりね……!」
仰向けのままで向かってくるキングサハギンを上下逆さに見ながらでもウサ銃を……と、思ったらぶつかった衝撃で手元を離れており、手を伸ばして届く所にはない。
「ああ、もう、こんなとこでぇ!」
おしゃべり忍者はいまだにゼイゼイと荒い息を吐き出し、もぞもぞと蠢いている。
キングサハギンはこっちに向かっていて、メカクレは抑える事は出来ない。そうなると自前でどうにかするしかない。
「んんっ、こいつ……!」
どうにかこうにか手を腰に突っ込んで、DボアとG4を抜くと共に、射程とか命中とか一切の事を気にせず、そのまま2丁拳銃、しかも上下反転のままで銃撃を始める。こんなのサバゲーとかでもやった事ないわ。
そのまま両方の拳銃の引き金を何度も絞り上げる。
「死ねっ、死ねっ、死ねっ!」
メカクレの魔法矢援護が切れたが、とにかく一旦ここで抑え込まないとこのまま瓦解する。踏ん張りどころだぞ。
左右で19発。固定ダメだけで言えば全部当たれば345ダメージ、今出せる最善の手で最大の攻撃。
勿論だが右に下ろしていたDボアが先に弾切れするので撃ちきったらその場で落とし、G4を両手で構えて全部撃ち込む。
しかしそれでも止まらず、眼前へと体中に穴の開いたキングサハギンが私たち二人を見下ろして銛を構えている。
「串刺しって、やな死に方だわ」
「め、めんぼくねえっす……」
インベントリから鳳仙花とも考えたが、取り出して構えて撃つの3動作をするまでには攻撃を貰う。うん、これは詰んでいるわ。いや、此処で諦めたら私じゃないな、ウサ銃は届かないし、やっぱり出すなら鳳仙花だな、相打ちでもこっちに1人でも残ってれば勝ちなんだ、泥臭かろうが、何だろうが勝てば良かろう。
キングサハギンが目の前に来る。
インベントリを開いて鳳仙花を見つける。
銛を構えて、穂先を下に。
そのまま取り出し構えて。
銛が振り、下ろされない。
引き金を絞り、キングサハギンにほぼ直撃の2連射。
「もうちょっと、パーティ信用するのも、いいわね」
視界の端で弓を投げ出し、座り込んでいるメカクレが見える。大技的な物を使って攻撃動作に割り込んだのだろう。
だからこそ取り出し、構えて、撃つまでの動作が間に合ったわけだ。
キングサハギンはと言うと、そのまま銛を私と忍者が重なっている横に突き下ろし、ずるずると倒れ込み。さらに私達の上へと重なる。
蛙みたいな声出たし、なんか変なダメージ貰ったのはちょっと情けないが、しばらくするとキングサハギンもポリゴン状になって消失していく。
なんかいい所だけ持って行ったようにも見えるが、散々ダメージを与え前線維持していたりした忍者とメカクレのおかげだ。こいつら火力見た目以上に高いよ。
「ねえ、一二三、さっさと避けてくれない?」
「も、もうちょいで動けるっす……」
「メタリカ、こいつ避けるの手伝って」
「私も、きゅ、休憩です……」
ダメージが少なかった割には疲弊してるな、あれだけMP消費して、撃ちまくってたんだからゲームステータスというよりもリアルHPが減ったか。
何にせよ、片付いたのは確かだ、動けない間にあがったレベル分のステータスを上げておこう。
名前:アカメ 種族:ドラゴニアン
職業:ガンナー
基本Lv:26(3UP) 職業Lv:25
HP:25/47(3UP) MP:11/20(1UP)
STR:10 AGI:16(19)(1UP) DEX:20(2UP)
VIT:2 INT:2 RES:2
SP:残23
とりあえずDEXとAGIに振ってSTRは今後考えよう。銃のカテゴリー的にもDEXがある方が装備条件として重要な方だし、STRはまだ上げる必要になるものを手に入れてない。手に入るかもしらんが。
「よ、し、動けるっす……申し訳ないっす」
「重いんだからさっさと避けな」
のっそりと上から降りたので私も立ち上がり、落としてた銃を回収して仕舞いこむ。
ここまでフルバーストみたいな事するとは思っていなかったな。
「それにしても、良く勝てたわ、あれ」
「は、ふぅ……大丈夫、でしたか……?」
「最後ヒヤッとしたけど、ドラマチックな刺しこみだったわね」
「そうっすね、死に戻り覚悟したっす」
そんな事を言われれば顔を赤くしたのかうつむいてもじつくメカクレ、褒められなれてないんかね。
「まー、いいわ、とっとと脱出しましょ」
「あ、あの、あれ……」
煙草に火を付けて一服していると倒れていた横にアイテム一つドロップしている。
おしゃべり忍者が近づいて回収するわけだが、何だよ、それ。
「ボスドロップっすね、出回った事がないあたりレア品の装備っすけど……いるっすか?」
「んー、どんなものよ」
手に持っているのを此方でも確認する。あのキングサハギンが使っていた銛自体が装備品としてドロップしたわけだが。
名称:海の悪魔 武器種:槍
必要ステータス:STR35 DEX15
攻撃力:+155
効果:水棲生物に+150%の追加ダメージ 引き抜き時に追加ダメージ
詳細:返しの付いた1本銛 大物を仕留める時にどうぞ
「いらね」
「ええー……これ結構いい装備だと思うんすけど」
「そ、そうですよ……追加ダメありの、レア品ですし……売ると高いかと……」
「うっさいわね、あんたたち二人でじゃんけんして決めなさいよ」
そういうならと言う事で二人でじゃんけんし、何度かのあいこの後に結局勝ったのはメカクレだ。そのメカクレも足引っ張ったとかで忍者に押し付けようとしたが、あいつも頑固で「負けは負け」と言って受け取らない。
わがままなパーティだな。
「せめて脱出系のアイテムくらい出してくれても罰はあたらないんじゃない?」
「そうっすね、じゃあ戻るっすよ」
懐から出した結晶を砕くと共に、青い光の輪が出現する。どうやら脱出用の転移地点を作るものらしい。今度買っておいたら水銀取りに行くときに便利だな。
そうしてしばらくぶりに外に出て、疲労困憊の忍者に船を出させて、来た道を戻らせる。
勿論私は漕ぐことはしない。だって私の船じゃないし。
「でも本当に銛、譲っていいんすか?」
「じゃあ、代わりにこの立派な船を作った木工職人、紹介しなさい?」
「え、あ、いいっすけど、どうしてっすか」
「あんたたちのせいで散々っぱら使った銃弾を量産しなきゃならんのよ」
「あ、す、すいません……」
「もうしわけねえっす……」
忍者は船をこぎつつ、メカクレは船の真ん中でしゅんとする。ちょっと意地悪し過ぎたか。
「1発3万だし、結構な額の経費計算だけど……ま、時価よね、時価」
船に揺られながらも、しばらくぶりに分布データを確認。まず5万から1千人程人口が目減りしていたのだが、多分余計な事して垢BANされたんだろう、で、其れと合わせてのガンナー人口も以前見た時から徐々に増えつつ今や100人程度にもなっている。先行組がサブか2次職として選んだのと、出遅れ組が選んだってとこだ。
それに私みたいに売られてないなら自力で探すって言う人物は絶対いるだろうし、今の所それで利益出してる私だが、私以外のやる気のある奴がブログなりSNSなりWikiなり立ち上げてガンナーの情報も更新されるだろうから、徐々に私の利益、と言うか情報クランに流した情報の価値も減るが、ガンナーは増えていくと思う。
主流にはならないが、パーティに許されるくらいにはなるか。
「そういう事だから、ほら、さっさと漕いで、私に木工職人を紹介しなさい」
「だったら手伝ってほしいっす!」
「やっぱり、銛貰っていった方が……」
「いいのよ、何だかんだで収穫もあったし、楽しかったわけだし、何より」
何より?という顔で此方を向いてくる。
「これであんたたち二人は私に頭が上がらないでしょ」
にぃーっとギザ歯を見せるいつもの凶悪な笑みを浮かべる。
なーんて、あっさり倒せればよかったんだが、今まであった中で一番強い……のは当たり前だな。レベル高いんだから。
と言うか、そもそもレベル云々ではなく挙動とか含めて、デカブツのボスにしか当たっていなかったのが一番大きい問題だった。私のレベルではそもそも受けきれない、どうにか1発受けたがまさかの40ダメージ、速攻で瀕死だ。
「くっそ、いてえ……!」
手持ちのポーション3本投入して全快。あと2本でHPポーションも無くなるのでこれ以上は普通に危険ラインになる。
やっぱステータス違うとダメだな、ちゃんとレベル上げないと。倒したら2、3レベルくらいは上がってくれるだろう。
「しっかり前線してくれないと死ぬんだけどー」
「無茶ばっかり注文してくるのやめろっす!」
「ちょ、ちょっと……く、くるから……!」
何だかんだで致命傷を避けられているのは後ろで控えているメカクレが魔法矢で援護しているからというのも大きい。やっぱりあんなんでもトッププレイヤーなんだろうな、威力もタイミングもかなりいい。
「ほら、メタリカを見習いなさい、あなたが抜けられたら全滅なのよ」
「やっぱり貧乏くじじゃないっすか!」
忍者から一歩引いてキングサハギンの挙動をもう一度確認する。基本モーションは普通のサハギンと変わらないわけだが、動作の洗練さが違う。一撃一撃に確実な殺意が乗っている上に、ブレというものが無い。
そういえば銛って槍とどこが違うんだろう。返しの有無とかなのか。あの髭親父に聞いてやると共に樽が作れなかった恨みをぶつけてやらないと。
「足止めるっすから追撃よろしく!」
素早く印を組むと共におしゃべり忍者が3人に増える。
おお、すげえ、狐を体の中に宿している、オレンジ色の忍者みたいな事してる。
「3方向からの強襲で足止め、援護は勝手にやってくれっす!」
それぞれの忍者が、刀と手裏剣と忍術での波状攻撃を開始する。
いいなあ、ああいう動きにメリハリの付く行動ってやっぱあこがれるよね。此処の所、新しいスキルって私も覚えていないわけだし。アクロバティックなスキルとか出てくれてもいいのに。
「っと、そういうのは後にするとして」
三位一体攻撃を繰り出しているのに合わせて此方もウサ銃での銃撃で援護を開始する。
そういえばウサ銃での二度撃ちって使った事ないな、いちいちトリガーを引く動作が無いから楽に撃てるって事か。
とにかくすぐに二度撃ちを発動し、キングサハギンに対して銃撃をすると、鳳仙花での発射の様に銃声が2つ重なったような音をさせてから、しっかり銃弾が2発発射される。
「うむ、やっぱ良いスキルだわ」
攻撃を繰り出しているおしゃべり忍者の横をすり抜け、2発の銃弾がキングサハギンに直撃し、悲鳴を上げさせる。久々にウサ銃を使ったが、やはり一番の相棒装備はお前だよ。
「脱皮したので、柔らかい……?」
「みたいね、やられる前にもっと攻撃するわよ」
「あ、はい……!」
おしゃべり忍者がいつまであの分身を出せるか分からないが、とにかく長期戦よりは一気にダメージを加えて押し切る方がこのパーティに向いている。やっぱりタンクの重要性は大事だ。
とにかく押し切らないといけないので二度撃ちをさらに発動し、追撃。こいつの欠点は2回使うとMPではなく残弾不足で使えないのでさらに追加で1発入れなきゃいけないという点だ。
奇数装弾、偶数使用の欠点はこう言う所だな。
「鳳仙花出してもいいけど、これ以上前はちょっと抵抗あるわね」
着弾を確認してから、すぐに狙いを付け直して深く息を吐き出し、FF(フレンドリーファイア)しない様に忍者の攻撃の合間を狙う。
ばんばん派手に撃ちまわるのもいいが、残りの銃弾も少ないし、あー、畑見に行きたい、もうジャガイモ出来てるだろうし、アルコールとか硝石とか大量生産して死ぬほど無駄に撃ちたい。
「あ、やべっ」
雑念を払うかの様に、分身が消え本体だけになった忍者がゴム毬の様に跳ねながら私にぶつかってくる。
これもキングサハギンの攻撃扱いになるのか、結構な勢いでぶつかるのでそれだけで衝突ダメージが入る。これだけで13ダメージ、ハラスメントブロックとかも加味されてんだろう。
「ちょっと、これ、やばいっす……」
「ああ、重い……さっさとどきなさいよ!」
「む、むりっす、今は動けないっす……」
仰向けに倒れその上におしゃべり忍者がぐったりとして乗っている。
やっぱり分身のダメージとかクールタイム的な問題で動けないのがデメリットになるんだろう。無制限に使えるとかノーデメリットで使えるわけじゃないのか。
「ああ、ちょっと、メタリカ!援護して援護!」
「い、いまします……!」
倒れている私と忍者に向かってキングサハギンがのしのしと歩いて近づいてくる。完全にダウン追撃をする為に攻撃しにきている。その出鼻を挫くためにメカクレが魔法矢を何度も撃ち、相手の進行と攻撃を抑え……られていない。向こうも向こうでMPの回復が間に合っていないのか、それとも大技を使うタイミングが無いのか。
「今日は曲撃ちばっかりね……!」
仰向けのままで向かってくるキングサハギンを上下逆さに見ながらでもウサ銃を……と、思ったらぶつかった衝撃で手元を離れており、手を伸ばして届く所にはない。
「ああ、もう、こんなとこでぇ!」
おしゃべり忍者はいまだにゼイゼイと荒い息を吐き出し、もぞもぞと蠢いている。
キングサハギンはこっちに向かっていて、メカクレは抑える事は出来ない。そうなると自前でどうにかするしかない。
「んんっ、こいつ……!」
どうにかこうにか手を腰に突っ込んで、DボアとG4を抜くと共に、射程とか命中とか一切の事を気にせず、そのまま2丁拳銃、しかも上下反転のままで銃撃を始める。こんなのサバゲーとかでもやった事ないわ。
そのまま両方の拳銃の引き金を何度も絞り上げる。
「死ねっ、死ねっ、死ねっ!」
メカクレの魔法矢援護が切れたが、とにかく一旦ここで抑え込まないとこのまま瓦解する。踏ん張りどころだぞ。
左右で19発。固定ダメだけで言えば全部当たれば345ダメージ、今出せる最善の手で最大の攻撃。
勿論だが右に下ろしていたDボアが先に弾切れするので撃ちきったらその場で落とし、G4を両手で構えて全部撃ち込む。
しかしそれでも止まらず、眼前へと体中に穴の開いたキングサハギンが私たち二人を見下ろして銛を構えている。
「串刺しって、やな死に方だわ」
「め、めんぼくねえっす……」
インベントリから鳳仙花とも考えたが、取り出して構えて撃つの3動作をするまでには攻撃を貰う。うん、これは詰んでいるわ。いや、此処で諦めたら私じゃないな、ウサ銃は届かないし、やっぱり出すなら鳳仙花だな、相打ちでもこっちに1人でも残ってれば勝ちなんだ、泥臭かろうが、何だろうが勝てば良かろう。
キングサハギンが目の前に来る。
インベントリを開いて鳳仙花を見つける。
銛を構えて、穂先を下に。
そのまま取り出し構えて。
銛が振り、下ろされない。
引き金を絞り、キングサハギンにほぼ直撃の2連射。
「もうちょっと、パーティ信用するのも、いいわね」
視界の端で弓を投げ出し、座り込んでいるメカクレが見える。大技的な物を使って攻撃動作に割り込んだのだろう。
だからこそ取り出し、構えて、撃つまでの動作が間に合ったわけだ。
キングサハギンはと言うと、そのまま銛を私と忍者が重なっている横に突き下ろし、ずるずると倒れ込み。さらに私達の上へと重なる。
蛙みたいな声出たし、なんか変なダメージ貰ったのはちょっと情けないが、しばらくするとキングサハギンもポリゴン状になって消失していく。
なんかいい所だけ持って行ったようにも見えるが、散々ダメージを与え前線維持していたりした忍者とメカクレのおかげだ。こいつら火力見た目以上に高いよ。
「ねえ、一二三、さっさと避けてくれない?」
「も、もうちょいで動けるっす……」
「メタリカ、こいつ避けるの手伝って」
「私も、きゅ、休憩です……」
ダメージが少なかった割には疲弊してるな、あれだけMP消費して、撃ちまくってたんだからゲームステータスというよりもリアルHPが減ったか。
何にせよ、片付いたのは確かだ、動けない間にあがったレベル分のステータスを上げておこう。
名前:アカメ 種族:ドラゴニアン
職業:ガンナー
基本Lv:26(3UP) 職業Lv:25
HP:25/47(3UP) MP:11/20(1UP)
STR:10 AGI:16(19)(1UP) DEX:20(2UP)
VIT:2 INT:2 RES:2
SP:残23
とりあえずDEXとAGIに振ってSTRは今後考えよう。銃のカテゴリー的にもDEXがある方が装備条件として重要な方だし、STRはまだ上げる必要になるものを手に入れてない。手に入るかもしらんが。
「よ、し、動けるっす……申し訳ないっす」
「重いんだからさっさと避けな」
のっそりと上から降りたので私も立ち上がり、落としてた銃を回収して仕舞いこむ。
ここまでフルバーストみたいな事するとは思っていなかったな。
「それにしても、良く勝てたわ、あれ」
「は、ふぅ……大丈夫、でしたか……?」
「最後ヒヤッとしたけど、ドラマチックな刺しこみだったわね」
「そうっすね、死に戻り覚悟したっす」
そんな事を言われれば顔を赤くしたのかうつむいてもじつくメカクレ、褒められなれてないんかね。
「まー、いいわ、とっとと脱出しましょ」
「あ、あの、あれ……」
煙草に火を付けて一服していると倒れていた横にアイテム一つドロップしている。
おしゃべり忍者が近づいて回収するわけだが、何だよ、それ。
「ボスドロップっすね、出回った事がないあたりレア品の装備っすけど……いるっすか?」
「んー、どんなものよ」
手に持っているのを此方でも確認する。あのキングサハギンが使っていた銛自体が装備品としてドロップしたわけだが。
名称:海の悪魔 武器種:槍
必要ステータス:STR35 DEX15
攻撃力:+155
効果:水棲生物に+150%の追加ダメージ 引き抜き時に追加ダメージ
詳細:返しの付いた1本銛 大物を仕留める時にどうぞ
「いらね」
「ええー……これ結構いい装備だと思うんすけど」
「そ、そうですよ……追加ダメありの、レア品ですし……売ると高いかと……」
「うっさいわね、あんたたち二人でじゃんけんして決めなさいよ」
そういうならと言う事で二人でじゃんけんし、何度かのあいこの後に結局勝ったのはメカクレだ。そのメカクレも足引っ張ったとかで忍者に押し付けようとしたが、あいつも頑固で「負けは負け」と言って受け取らない。
わがままなパーティだな。
「せめて脱出系のアイテムくらい出してくれても罰はあたらないんじゃない?」
「そうっすね、じゃあ戻るっすよ」
懐から出した結晶を砕くと共に、青い光の輪が出現する。どうやら脱出用の転移地点を作るものらしい。今度買っておいたら水銀取りに行くときに便利だな。
そうしてしばらくぶりに外に出て、疲労困憊の忍者に船を出させて、来た道を戻らせる。
勿論私は漕ぐことはしない。だって私の船じゃないし。
「でも本当に銛、譲っていいんすか?」
「じゃあ、代わりにこの立派な船を作った木工職人、紹介しなさい?」
「え、あ、いいっすけど、どうしてっすか」
「あんたたちのせいで散々っぱら使った銃弾を量産しなきゃならんのよ」
「あ、す、すいません……」
「もうしわけねえっす……」
忍者は船をこぎつつ、メカクレは船の真ん中でしゅんとする。ちょっと意地悪し過ぎたか。
「1発3万だし、結構な額の経費計算だけど……ま、時価よね、時価」
船に揺られながらも、しばらくぶりに分布データを確認。まず5万から1千人程人口が目減りしていたのだが、多分余計な事して垢BANされたんだろう、で、其れと合わせてのガンナー人口も以前見た時から徐々に増えつつ今や100人程度にもなっている。先行組がサブか2次職として選んだのと、出遅れ組が選んだってとこだ。
それに私みたいに売られてないなら自力で探すって言う人物は絶対いるだろうし、今の所それで利益出してる私だが、私以外のやる気のある奴がブログなりSNSなりWikiなり立ち上げてガンナーの情報も更新されるだろうから、徐々に私の利益、と言うか情報クランに流した情報の価値も減るが、ガンナーは増えていくと思う。
主流にはならないが、パーティに許されるくらいにはなるか。
「そういう事だから、ほら、さっさと漕いで、私に木工職人を紹介しなさい」
「だったら手伝ってほしいっす!」
「やっぱり、銛貰っていった方が……」
「いいのよ、何だかんだで収穫もあったし、楽しかったわけだし、何より」
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貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
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