最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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7章

216話 締めくくり

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 自分にやってきた客の相手を終わらせ、サイオンが入れた残っていたお茶を一飲み。
 イベント終りでクラン加入の希望者が増えたのは良いんだが、どうもぱっとしないのばっかりだ。
 人数を増やすだけって言うのならそりゃ、ガンガン入れて規模拡大ってのもいいんだが、うちのクランは漏れるとまずい事が多すぎる。
 ぽろっと零れた情報が結構いい値段になったりするのもあるのだが、其れと合わせてクラン員のレベルが高いせいで並みのプレイヤーだと誘うメリットが薄すぎる。
 戦闘力を見ても今じゃタンク型以外お断り、遠距離と補助だけ枠があるかなって程度か。有象無象の量産ビルドに魅力はもう感じないってのも大きいな。
 ただ最適解のステ振りが悪いと言う訳でもない、それはそれで色々なプレイヤーが導き出した答えなのだから。あくまでもうちのクランで考えた場合になる。

「いい人材ってのはそうそういないのよねえ」
「条件を設定していただければ対応しますが、如何いたしましょう」
「いやー、こういうのはしっかり相手を見ないと分からんから」

 葉巻を咥えるとすぐさま火を付けてくれる有能秘書。うんうん、良い買い物をした。何か言い方悪いけど。AI入りのNPCだからクランハウス内の事は大体やってくれると言うのも良いね。
 仕事が比較的無いアイオンとシオンはクランショップの店員を自発的にやっているし、内部データも共有しているので、大体いつもこっちに来ると私に1人付いている。マジ有能秘書。

「んじゃあ、誰か来たらまたよろしく」
「はい、お任せください」

 クランハウスからマイハウスへの転移するさいにもぺこりとお辞儀をして見送ってくれる。あー、こんな子リアルで欲しい。


「……あれ、髭親父とジャンキーは?」
「そろそろ寝るってのと、ボスモンスターの沸き時間だから行くってよ」
「珍しくガンナー組が揃ったわね……ポンコツピンクの配信は」
「今日はおやすみー、昨日がっつりやったし、編集もあるから」
「うちのクランは精力的ねぇ」
「そういえば、ボスの機体、結局どういう構成だったんだ?」
「HPの共有化ってのは分かったけど、もう何個かあるよね」

 そういえば、この辺の話はしてなかったっけか。

「じゃあ種明かしな」





 また少し遡り。
 イベント開始前の特設練習コースで予め機体や特殊能力、機体ステータスを弄れるのは相変わらず親切設計なのか、過保護なのか悩むところだ。
 あまり出来過ぎるとぬるいと言われ、逆に何も無さすぎると不親切と言われるんだから運営もたまったもんじゃないな。
 で、まあ自分の乗る機体を選ぶわけだが、どうした物か。
 機体のステータス自体は全部一緒で、細かい所で言えばHPが違っている、防御力が高めに設定されている等々。
 比較的軽い機体はHPと防御力は低く設定されているが、加速やハンドリング性能が初期値からかなり高めに設定されている。
 逆に重く大きくなればなるほどHPと防御力は上がっていくが、加速、ハンドリング性能はかなり低い。
 この辺は個人の好み、と言う訳にもいかない。
 レースルールが何でもありのばちばち対人仕様だから自分の動き方含めて考えなきゃならない。機体自体もかなりのキワモノから王道の物とバリエーションも豊富。ピーキーすぎてお前には扱えないバイクや、凄く優しい男の車だったり、映画やアニメから大分引っ張ってきているのもある。

「こうなってくると見本市だなあ……」

 いや、分かるよ、ゲームをしている人ほどこういったアニメや映画、ゲームのネタを使って遊びたいってのは。80年代のアニメや映画を一緒くたに出してお祭り騒ぎしていた映画もあったわけだし。
 で、私としては確かに好きな造形の奴は何個かある、こういうゲームでアニメや映画の乗り物を乗れるってのは浪漫だけど、勝負には勝ちたい。

「んー、安定性で言えば各々独立した車輪の方がいいんだけど……中々見つからんな」

 モデルで探すのは骨が折れるのでカタログ、と言うか機体一覧があるのでそれで確認していく。
 此処まで色々あれば望みの物があると思うんだが……お、あったあった。

「んー、4脚かあ……ここから特殊能力含めて弄れるって訳かな?」

 かちかちぽちぽちと選択していって、カスタマイズの画面に。

「4脚から6脚にして、尻に防御用のユニット追加してっと」

 もうちょっと弄れるので特殊能力と言うか便利能力の追加。
 HP共有化と6脚操作。前者は文字通りで一定範囲にいれば共有化するが、範囲を離れたりして自分のHPよりダメージを貰っていたら問答無用でダウン。後者は機体に接触している間に機体操作を直感的に出来ると言うもの。





「じゃあ、ボスが足を使ってたのは後者のスキルか?」
「でも一発でやられたってのはどういうこと?」
「前者だな、機体中心に数mしか効果がないからちょっと離れたらアウトで、最後の魔法攻撃で吹っ飛んだ時に大分削れてたからそのままダウンって事」
「共有はしているけど、HPの消費優先度は本体から、じゃああの時本体狙いだったのは良い判断だったって所か」
「もうちょっと押し込んで、引き剥がしてたら結構簡単にやられたわよ?で、後は知ってる通り、何度か機体の練習をしてからイベント本番ね」

 ふいーっと息を吐き出しながら一息、思い出しつつ人に話すって結構大変だわ。そもそも私が説明するのが苦手だって言うのにさ。

「俺としてはあの雲に穴開けた攻撃の方が興味出たけどな」
「特殊スキルは私も早く欲しいなぁ」
「どっちにしろガンナーの特殊スキルはボスしか覚えてないぞ、俺はまだ33だし」
「私も31かなぁ、もうちょっとだと思うけど」
「まー、35まで上げたら、だな……もう少し硝石とアルコールの量産してあんたらに回せるならレベリングさせてやれるんだけど」

 貰った500万の使い道も聞いておかないと行けないし、そろそろガンナークランとして進むってのも有りか。
 とは言え、どこか別の奴がやってくれると思うから、そこまで気にする必要も無いか。

「また酒樽量産すんのかよ」
「後で必要個数と料金をサイオンに伝えておくから」
「チッ、俺様の200万なんだから大事に使えよ」

 悪態付きながらもうちのクランの為に動いてくれるツンデレってのも知ってるんだけど、言うとまたわめいてくるのでお口チャック。
 大損こいたわー何て言いつつ、木工の作業場で家具を作り始めるのを横目に話を続ける。

「はいはいっと……とにかくイベント中はさっき設定した機体でメインに、たまに使う爆発加速で前に出たり、無理やり方向直したりして最後に大ゲンカって感じだったのよ」
「特殊能力増やしたりはしなかったのか」
「案外、使わなかったってのがあるかな、基本能力あげたりもあったし……ああ、ダウンした後に加速装置で一気に最高速に上げてから追いついたってのはあるわ」
「配信してたけど、動画にしちゃまずいとこあるかなあ」
「全部良いわよ、FWSだってレベル上げれば手に入るし」

 わーいと、棒読みの様な喜びをしつつ、ログアウトし始める。動画編集って時間食うからな、しょうがない。

「そういえばガトリング直った?」
「結局別に新造した、元の奴は元の奴で直したが、やっぱり問題点が露呈したしな」
「ガンナーって大変よねぇ……まー、イベントの参加賞で機体貰えたし、どっかに車庫でも作るか」
「お、いいねぇ、あの500万で施設拡充してくれよ、銃工房もな」

 そういえば、そんな事もあったな、500万の使い道もまとめて、足りないクラン員も増やしていきたい。
 例のFWSをソロで使えるようにするってのもそれはそれで面白そうだ。
 うんうん、まだまだ楽しめる。

「明日から、何しようかなー」

 葉巻を咥え、紫煙を燻らせながら楽しそうにぽろっと零す。





 第3回イベント結果
 3万4621人中 1630位
 クラン内同着1位
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