最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
287 / 625
10章

265話 旅は道連れ世は情け

しおりを挟む
 さて、うちのクランにまた1人バトルジャンキーが増えたわけだが、とりあえずジャンキーとポンコツにぶつけてしばらく様子を見るかな。

『新しいのが入ったから、仲良くしてやれ』
『はーい、バイオレットでーす、よろよろ』
『気が合いそうなのはマイカとももえって所かしらねぇ……連れまわしてやんな』

 そのままわいわいと自己紹介合戦を始めるのでその辺りはスルーしつつ、ちょっとエルスタンの街先に出る。あともう1つやる事やったら装備を揃えてドルイテンから先に進もうかね。

 で、いつもと言うか、毎度おなじみの北エリア1-1。
 それにしても私のT2Wってこの辺から始まったよなあ……あの頃は銃剣も付けない銃で殴ってカウンターを貰って死んだり、銃剣を使っても1匹倒すのにすげえ休憩しながらやっていた頃が懐かしい。
 今じゃもう、実験動物と同じ扱いしてるし。

「さーて、実験開始よ」

 ぴょんぴょん跳ねているラビットを見つけてウサ銃を構え、付与魔法。
 効果時間は短いし、さくっと攻撃しないとな。

 とりあえずウサ銃を使ってラビットを倒すわけだが、付与を掛けた状態で銃剣で一撃。ざくっと突き刺さる音と手ごたえを感じ、そのまま2、3度斬りつけるとあっさりと撃破。
 レベル差30もあるし、今更こんな所でやられる理由がないのでとっとと具合を確かめる。

 今回試しているのは銃剣にも付与が乗るのかどうかって話なんだが、ばっちり乗っている。
 この付与魔法、武器全部を別の属性に変えるものっぽいから、付属している銃剣も武器全体にカウントされているって事か。

「そうなると、もう1つ試しておくか」

 ウサ銃を肩に掛け、いつものルーティーンでもある葉巻を咥えながら先に進む。
 それにしても、こんなにガンナーの事をどうこうしている奴っていないだろうよ、ただ私より強いガンナーってのもそろそろ出てくるよな。
 一時期は完全に地雷職だから全員避けたってのに、また人口が増えて今じゃ1,000人くらいガンナーがいるらしい。今のトータル人口がどれくらいか分からないが、最低でも5万いるわけでそのうちの1千なら結構な人数がいる……んだろうか?
 ゲーム開始の頃に比べればガンナーの情報も揃っているし、銃弾も作りやすくなったし、偽物の所に行けばガンナーを揃えてどうにかやっている。向こうの方が名前としては売れているからあっちに新規が流れていると、この間言っていたな。

「うちももうちょっと新規に優しくしてもいいのかしらねぇ」

 人口は増えているし、ポンコツが配信をしているから、それなりな知名度もあると思ったんだが、どうやら偽物の方へポンコツが誘導しているってのもちらっと聞いたな。何でもかんでも聞いたり言っていたのを思い出すのばっかりだよ、私は。

 うちのクランに新規が来たところで振り回されてそんなに長続きしないだろうし、現状が一番安定しているんだろうなあ。どうせメンバー増やしたところで余計なトラブルが起こるのも予想されるし、ごたごたするのは好きじゃないからこのままでいいや。







 そんな事を思っている間に、久々に暗闇洞窟にやってくる。
 付与魔法で硬い相手の時はどうなるかって実験よ。それにしてもあんなに不人気だったのに結構な人がいるな。
 あっちではコボルトとがんがんやり合っている剣士、その反対側では蝙蝠に手を出して凄い勢いでダメージを食らっているパーティーに、ロックラックを殴っているガンナー。
 そういえば硝石の情報が流れたってのもあってちょくちょくそれ狙いの奴が来るようになったんだっけか。あまり難しくないから硝石丘を作るのがガンナーとして第一歩って話もあったかな。ただ、畑を持つのってそれなりにハードルが高いから向いてないと思うが。

 そうして手頃なロックラックを見つけて付与魔法からの銃剣で斬りつけ。キーンと金属同士が響く音がすると共に弾かれて手が痺れる。なるほど、付与魔法込みでも硬いって事か。
 レベルが上がって強くなったとはいえ、銃剣だけでの立ち回りになると、途端に弱くなるからしょうがない。
 久々に銃剣を使ったのもあって、単純に硬いうえにそれなりに強い敵って久々だな。一応固定ダメージは入るけど、もうちょっと付与魔法を試して殴ってみるか。
 
「それにしたって、久々だな、こんな風に戦うのは」

 ぎゃりぎゃりと音を立てながら回転してくる攻撃を足で抑え込みながら銃剣でがんがんと殴る。
 防御力を上げてはいるとは言え、攻撃を抑えているだけでもダメージは結構受けるな。
 まあ、それでも永遠と回転攻撃をしてくるわけではないので、止まった所を殴って蹴って、付与魔法を掛けた銃剣で叩きつけ、しばらく戦うと共にふいーっと一息大きめにため息を吐き出して撃破。

「前よりは戦えるけど、やっぱ硬い相手に対しては弱いなあ」

 ロックラック自体、防御力の高いモンスターだが、体=本体で特殊な能力も無いので撃ち込めばあっさり倒せる相手ではあるんだけど、こんな所でバンバン撃つってのもなあ。あと、閉所だから銃声がかなり響いて煩いってのもある。

「あの、パーティ組みません?」
「んー、パーティ?」
「多分硝石狙いのガンナーさんだと思うんですけど、狙いは一緒だと思うんでパーティで行きませんか」
「ふむ……ま、いいかな」

 そういうと頭を下げてお礼を言ってからパーティーの申請が飛んでくる。
 サクッと受理して、声を掛けてきた奴以外にも、もう2人、少し離れた所にいるのが強調表示される。

『よろしくお願いします、あのお名前は』
『ああ、えっと、アカメ』
『よろー』
『よろしく』

 剣士2人に僧侶って所かな。仲良し3人組で新規プレイヤーって感じだな。
 私が入って前2後2でバランスは良くなったから、相手もしやすいって踏んだのかね。多分と言うか、確実にそうなんだろうけど銃剣でロックラックを殴っているって所から、銃弾の切れた初心者ガンナーと思われたのかね。
 やべ、ちょっとこの状況面白い。

『僕はユーマ』
『うちはシロ』
『俺は柊だ』
『はいはい、宜しく……それで、どこまで行く気だったん?』
『えっと、最深部のボスの辺りまで行こうって話でして』
『途中にいるロックラックも倒しつつやね、硝石1個が良い値段で売れるし、そっちも狙ってるって話』

 未だに良い値段で取引されてんだな、硝石って。
 一瞬で市場価格崩壊出来る位に量産しているって言ったらどんな反応するのやら。

『どこにいるか知ってる?』
『最深部ってだけだな、俺は話を聞いて初めて来たし』
『僕は何回かチャレンジしてるけど、倒せたことはないかな』
『うちも聞いただけー』

 とりあえず最深部に向かうとする前に、少し離れているのもあるので、一旦合流しようと促して、パーティーの面子を確認する。

 声を掛けてきたユーマはこれぞファンタジーの冒険者って感じの恰好をした剣士で黒髪のヒューマン。似非関西弁の様な喋りをするシロも同じく剣士で、青髪のエルフ。最後に合流してきた柊ってのは……鳥だな、カラスベースの獣頭、大きさ的には他2人とあまり変わらない。あのモデルで僧侶……まあヒーラーだな、そっちをやっていると、何となくペスト医師的な感じがあるわ。

『ボスの出現場所知ってるから、消耗する前にそっちを相手しても良いわよ』
『でも硝石一発狙いも捨てがたいなあ』
『俺はどっちでもいいぞ、レベルが上がるなら』
『じゃあ、ボスに向かいながらフリーのロックラックがいたら倒すってのは?』

 妥当なラインと言うか、それが一番良いか。別に反論する必要も無いのでユーマの意見を聞き、私がボスの方へと先導する。

「たまには、こういうのもいいかもね」

 ぽつっと言いながら葉巻を咥え、いつもの様に火を付けて口角を上げつつ、新規組パーティーと一緒に改めて暗闇洞窟を探索する。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...