最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
301 / 625
10章

279話 遊びは終わりだ

しおりを挟む
 ユニーク倒した後は特に何かしらの問題もなく、ゼイテに行くまでの道中は忍者に戻してレベリング。
 サブのレベルも6になったので、めでたく投擲スキルのレベルも最大になったので良し。

「それじゃあまた何かありましたら」
「うーい、じゃあなー」

 手をぷらぷらと振って、ちんちくりん一同を見送ってからゼイテの街中をぷらつく。そういえば、東側からやってきたのは初めてだったな。
 毎度のことだが、ドルイテン以降のマップにも行けてないし、4方向以外のマップも出てきたのでそっちの開拓も進めて……いきたい訳じゃないんだよなあ。所謂マッパーと言われる連中が存在していて、そいつらはマップ踏破率100%を目指しているとかどうとか。
 って言うか色んなプレイヤーがいるわ。知ってる限りでは攻略、前線、対人とレースメインの奴、見た事ないのはマッパーやモンスター研究みたいな事やってる奴だな。毎度の事ながら迷惑行為や規約違反な事をしなけりゃ遊び方は自由だし、そこに文句を言うのはお門違いって奴よ。

「さーて……投擲の使い込みして打剣覚えないと、そこまでやったらようやく準備完了ってのがなあ」

 とりあえず手裏剣投げまくるのならやっぱ対人か。
 モンスター相手にあれこれ立ち回るって方が良いんだろうけど、レベルの高い所に行くと単純火力が足りないし、忍者刀の使い込みまでしたらSP不足になりかねん。と言うか、そこまで忍者って職をやりこむ予定がないわ。

「ついでに新しい武器でも作ってみるかな……消耗しないって利点を生かせば闘技場で幾らでも実験できるし……」

 ぶつくさ言いながら歩きメニューをしつつ、転移して一旦クランハウスに。




「おかえりなさいませ」
「おーう」

 いつもの出迎えの挨拶を返し、共有ボックスの中を漁って必要な物を取り出して、インベントリに放り込んでいく。トカゲとポンコツピンクがこつこつ作ってるのか銃弾の数もまた元に戻ってきているが、其れ以上に他の素材の減りが激しい。
 金髪エルフの加入もあったが、その他にも猫耳、トカゲ、髭親父の奴も生産ばっかりやっているから素材を使いまくるってのは分かるんだがもうちょっと遠慮というものを覚えてほしい。

「でもまあ、制限したら制限したで不満爆発するだろうし減ったら自前で稼いで来いって言って置くか」

 自由の代償ってのは大きいって事よ。
 で、私の必要な物は十分揃っているのを確認できたので、そのまま自宅の方に。

 ……そういえば久々に自宅に戻ってきた気がするな。
 結局クランハウスにいる方が、サイオン姉妹がいるからライター代わりにもなるし、あれこれ報告やら人の出入りを楽しめるからそっちばかりだったりする。戻って来たついでに硝石も回収して、自宅の鍛冶場と錬金窯で色々こねこね。
 
「久々に自宅で何か作るって事をしてる気がする」

 最近はクラン関係の客が来たりするから、ばたばたしながら作成何て事もしなくていいし、のんびり作れるってのは良い事よな。
 で、今作っているってのは手裏剣だな。苦無は手裏剣より製作難度が高かったので今回は見送り。手裏剣は型作って流し込んで冷やして完成。研いだりしなくて良いのはゲーム処理万歳。
 もう製作工程なんてゲーム処理でさくさく作って手持ち100枚分。

「こんなに生産って楽だったっけか」

 しばらく弾しか作ってなかったし、真面目に鍛冶やってるの本当に久々だ。
 で、出来上がった手裏剣を並べて中心に穴を開ける。別に開けなくてもいいのだが、やりたい事には必要なのでパンチして穴を開けたのを20枚ほど用意。
 
「あーっと……油紙ないな」

 一旦ゼイテに戻り、そこのアイテムショップで紙と油を20枚分購入。で、そのまま店先で錬金使って油紙20枚作ってからとんぼ返り。
 そして自宅に置いてあった穴開いた手裏剣に色々仕込み、完成。

 出来上がった手裏剣をしゅぱっと上に回転を掛けながら飛ばして、落ちてくるのをキャッチ……し損ねる。投げるのは上手くなったけど、取るのは素人だから当たり前か。
 
「あー、そうだ、あと投げ物に付与魔法が乗るかどうかってのも確かめないとなあ」

 やっぱりあーだこーだ考えている時が一番楽しいし、それが思い通りに行った時がこのゲームの醍醐味って感じよな。自由度の高さとゲーム処理の塩梅が相変わらずいい具合よ。

 ここ1ヶ月の間で色々とやったけど、ガンナーも弾が出来てからよりも、出来るまでの方が楽しんでいた事もあるわ。サバイバル系のゲームも序盤のかつかつ感を楽しむもので、銃や装備が揃っていくと一気に温く退屈になってしまうせいで微妙に長続きしない。
 適度なストレスって大事。

「付与くらいは此処でも出来るか……『ファイアエンチャント』」

 加工してない手裏剣に対象を指定しつつ呪文を唱えると赤熱した手裏剣になっていく。流石に熱くて持てない、投げられないと言う事は無いので、この辺もゲーム処理だな。鉄が赤くなるってどんだけ熱く成ってんだよって話よ。
 で、そのまま持った状態で持続時間を計るのと、当たった対象や接触対象が燃えるかどうかをチェック……うむ、概ね想像通りに行っているし、後は実地確認だな。
 とは言え、いきなり20発も同じ規格で作ったのだけは今更ながら失敗だったが、まあ、これも今後に生かせれば良し。

「やっぱ仕込んでる時が楽しいわねー」

 もうちょっと格好の良い手裏剣や出来の良い組み方の方が良かったが、実験物ってこんなもんだな。試作品ってのは使い潰してなんぼよ。

「実地試験は大事っと」

 マイハウスからゼイテ、エルスタンに戻って闘技場に。



「さーて、実験台を探すかね」

 どうせやるなら本気で掛かってくる奴に向けて使っておきたいし、ランクマッチで戦ってみるか。
 闘技場の受付でランクマッチの登録を済ませて、マッチング待機に。
 ゲームによってはやたらとマッチング時間が長かったりするんだよなあ……しかもそこそこレベルが高い上に、初めてやりますって状態だからなあ。

 何て思っていたらあっという間にマッチング完了、ポップアップメニューが出てくると参加の有無が出てくるので勿論「Yes」。
 闘技場内の範囲で待っていれば承諾した後に勝手に転移、戦闘マップの飛ばされ、目の前に相手がいる状態で開始のカウントダウンがされる。

「いきなり戦えってすげーデスゲーム感あるなあ」

 投げ物ポーチに仕込んだ作り立ての手裏剣を両手に持ち引き抜いていると、戦闘スタート。
 ふむ、対戦相手はオーソドックスな剣士タイプか、金属防具に大剣を引き抜いて、剣先をちりちりと地面に擦らせながらこっちに走り突っ込んでくる。

「この中であいつは弾幕を張って倒すってパワープレイしてんのか……すげえ肝座ってるわ」

 そんな事を思っていたら目の前5m先くらいで急ブレーキと共に大剣を振ってくると、大きい風切り音と共に飛んでくる斬撃、ああ、なんだっけ、飛ぶ斬撃とか言われてる奴か。
 とりあえず横に振っているのでしゃがんで避けるのに合わせ、手裏剣をアンダースローですぱっと2枚。
 此方も同じようにしゅるるっと風切り音を発しつつ、相手の視界下方から上方に向けて飛び、1発は金属音をさせ、もう1発はそのまま後方へと飛んでいく。

「やっぱ人相手だと考える事が多いな」

 次をどうしようかを頭を使って戦うってのは楽しい。
 一度手裏剣を受けたのもあって、向こうはこっちが遠距離職と言うのを理解しただろう。大剣を盾に構えつつ、此方に接近するようににじり寄り始める、それを止めるように連続して投擲。
 キンキンと弾く金属音をさせながらさらに防御を固めてくるので油紙の仕込んだ手裏剣を取り出し。

『ファイアエンチャント』

 呪文を唱えると共に油紙の入った手裏剣が赤熱したのでアンダースローで強く投擲。
 炎が上がる音、風を斬る音をさせながら相手の大剣にぶつかると共に爆裂する。

「ああ、そうだ、思い出した……成功なんかよりも、勝つ方が私は好きだった」

 煙を上げて狼狽えている相手プレイヤーへ、ギザ歯を見せながら爆裂する手裏剣を連続して投擲。
 そう、私にはガンナー、忍者と違って『ボマー』って道もあったんだよ。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...