最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
364 / 625
13章

338話 勇気ある撤退

しおりを挟む
「さみぃ!」

 吹雪も収まり、また歩き始めて数時間経った頃にはすっかり凍結済み。
 まだ動けるので度合い的には中程度、防寒してても寒いものは寒い。

「凍結の状態異常をどう解除するかって問題もあるけど、温まりポイントでも作れるようにしたらいいかなあ……」

 緊急事態の手段としては火炎瓶で自爆するってのがあるが、この間サメにやられた時にやって以来、まだ使っていないんだよな。

「それにしたって、体張り過ぎじゃないかな、私は」

 とりあえず葉巻に火を付けてから、一応この状態で体張るしかないな。
 一旦防寒コートを脱いで凍結の状態異常が一番ひどい状態にし、HPの減り方や動きの鈍さを確認し、メモ帳に記載しつつ、ヤバそうになった所で火炎瓶を足元に叩きつけて、その場で炎上。
 凍結の状態異常から炎上に切り替わるわけだが、この炎上も今気が付いたら度合いが変わってるわ。大中小の度合いで、炎上の文字の前に記載されるのはちょっとした拘りか。
 凍結に比べて炎上のダメージはボマーも入ってるのでかなり減りがやばいのですぐさまポーションを飲んで回復しつつ、雪原にごろごろと転がって消火。
 ボマーついてるの思いっきり忘れてた、結構えぐい炎上ダメージを貰ったのですげえ焦った。こんなものをぼんぼん投げまくり、売りまくって辺り一面燃やし尽くしていたと思ったら、中々に悪い奴だな、私は。
 とりあえず炎上が治まってから状態異常の所を確認すると、異常無しになっているので戦闘中はこの荒治療で対処するしかないか。HP消費するというのと、防具が焦げ臭くはなるが破損したりはしないので、問題なし。その辺の確認もメモ帳に記載し、すぐさま防寒具を着込んで凍結対策をして先に進んでいく。

「んー、防寒の度合いが表示されないから、どこまで着込めばいいのやら」

 この辺は自分の凍結具合で確認するしかないってのはちょっと不親切。
 どのくらいの防寒があって、どこまで防げるのかをマスクデータにするってのはどうなんだろう。とりあえずステータスを開きつつ、その辺りを見ながらざくざくと雪をかき分けながらエリア2を目指す。




「でかいな、オーク」

 暫く歩いていたら遭遇した久々のモンスターなのだが、斧持ちのオークがのしのしと雪原を歩いている。うーん、アベレージ50の相手にCH1本だけで立ち回るのって厳しすぎる。
 よくよく考えてみたら、突破しなきゃいけないってのに武器もまともに装備しないでこっそり行こうとしていた少し前の私を引っぱたくべきだった。

「ガチるにもCHと忍者刀だし、でかいって事は積雪もそこまで苦労しないだろうからなあ……」

 普通の人が膝下くらいまで積もっていたらすごい体力や動きを奪われるのだが、3~4mあるオークのでかさじゃ足を取られるという事も無い。まあ、機動力も攻撃力も劣っている私が喧嘩を売ってどうするんだって話よ。

「やっぱ潜伏系スキル覚えるのもありだよなあ……」

 こういう時にジャンキー組がいればいいんだけど、今回の探索に関してはなるべくうちのクラン員や、他の連中を連れまわして攻略はしない方針なんだよね。事あるごとに何か頼んで、作って、色々やってきたのもあるし、こういう探索の時は自分のペースでいきたいというのもある。

「……こっちに認識されずに倒せればいいって事なら」

 ちょっと思いついたので火炎瓶に火を付けて、認識されないように身を屈めた状態で投擲で届く範囲に接近し、一本投げて着弾する間に、雪面に伏せ、少し体に雪を付けるようにしつつ伏せた状態で燃えるオークを視認する。

「こういう時はゲームだからいいけど、リアル雪原だったら距離感掴みにくいのよねー」

 一応ダメージが入っているので、きょろきょろとオークが辺りを見回すが、私の事を視認できないので、炎上しながらもきょろきょろし続け、探知時間が過ぎたのか、またのしのしと歩き始める。

「このゲームの良い所はこういうとこだよなあ」

 一発殴ったら問答無用でこっちをターゲットして自分の指定位置から外れない限り付いてくるって物じゃない所よ。

「……何発食らわしたら死ぬかやってみよ」

 また火炎瓶を投げ、潜伏してじっくり観察というのを5回ほど繰り返して撃破。






 とりあえず南西エリア3-2に到達。
 雪原のモンスター条件もある程度分かったのと、対処法を少しずつ理解、天候にも恵まれてエリアを進めたので良いが、此処からもまた道のりがなあ……。

「雪山かあ……」

 双眼鏡で先を見ると、エリアの中頃くらいになると雪山に突入し始める。エリア3-3もあるので、あれは雪山中腹~頂上、ダンジョンがある感じなのかね。
 防寒は良いとして、問題は雪山のほうだよ、何がヤバいって、投げ物は確実に使えない。爆破物は勿論の事だし、火炎瓶1つ投げてみろ、そこから滑って一気に雪ごと滑落か雪崩って可能性もぬぐえない。

「ゲームだからさくさくーっと登れるようにはなるんだろうけど……こりゃ雪山用の装備を作るかな」

 そういえばアウトドアなんてほとんどしたことがないなあ……一応ゲームや小説、映画でなんとなーく、こういうのがいるんだろうなーってのは思うのだが、こういうのが得意な知り合いっていたかな?アウトドアやサバイバル好きの奴はこういうゲームをしないか?と、言ってもゲームだからこそ、そういうのを楽しめると言う人もいるから、探すか自力で調べるか、だな。ゲーム内資金なら腐るほど使えるので、そういうのを揃えろと言われればすぐにそろえてやれるんだが。

「ここらで一旦引いて、またアイテムや装備を揃えてアタックにしようか」

 雪山前って事で3-2に安置があったのは嬉しい誤算だったが、これから先の事を考えればこの辺りで素直に撤退しよう。

「先は長いし、じっくり準備して攻略するのも楽しみの一つか」

 インベントリから帰還スクロールを取り出して一旦ゼイテへと。
 興味はあるけどリアルではやらないから雪山へのアタックってのは楽しいだろうな。

「さーて、調べものと、知り合いに当たってみるかな」

 スピードクリアしたいのはそういうやつに任せりゃいいんだ。
 私は私の歩幅で楽しむとしよう。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...