最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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14章

368話 覚悟

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『お疲れさまでした
 現時刻を持って勢力争いイベントを終了いたします。
 今回新しく実装されたマップは数日後に行う大型アップデートの際に正式実装となります。
 また、イベントの順位等含めては別途メールでお知らせいたします』

 ログインするとそんな音声と言うか、インフォメーションが目の前に表示され、ぴこんとメールの着信音が響く。順位としては、自分の陣営が3位、自分自身の貢献度が陣営内で3514位。全体で言えば圏外。結構積極的に動いていたはずなんだが、それでも上の方はだいぶ精力的に動いていたっぽい。まあ、上がいるってのは当たり前の話なので、そこまで悔しい訳じゃない……なんて事はなく、死ぬほど悔しい。
 私自身に火が付いたのが遅かったせいもあるし、どうやら複数パーティを組んで効率を上げるのが正解だったらしい。そんな事は知らずに爺と忍者を連れまわして暴れまわっただけに終わる。が、結局のところ一人で張り切って空回りした結果だ。かなり付き合わせてしまい、その上で勝てもしない、負け続けた結果がこうなってくると本当に情けない。イベントが全部終わり、メールを確認したうえで悪かったと一言謝罪のメールを一つ。

「情けない、最弱職云々の前に、自分の甘さが腹立つ」

 あまりにも不甲斐ない結果と立ち回りの仕方、全てにおいて甘ったれてる。これくらいの武器があればどうにかなるだろうって慢心、大したレベリングもスキルも揃えてこなかったのも固定ダメージの上り幅が大きくなって、そこまで使わなかったってのがでかい。レベリングはまあいいとして、アクティブスキルの層が薄すぎて、攻撃の手が激しいと追いつかない。
 今まで装備だけ見直していれば問題ないと思っていたが、対人にある程度本腰を入れるとなると、そこの調整もしなきゃならない。ついでに言えば投擲と打剣の為だけに取得した忍者も上手い事噛み合っていないので、ここもどうにかしないといけない。つまりやるべきことがかなりあったというのに、その殆どを大丈夫だと気楽に考えていたって事だ。何やってんだ私。
 とりあえず大きくため息を吐いてから、イベント結果を噛みしめてからその日はログアウト……の前に、クラン員に集合メールを送っておく。



 イベント後、何でもない普通の日に珍しくクラン員と三姉妹をクランハウスの2Fに集めて、大体全員が定位置に座っている。当たり前だがポンコツの奴はもう部外者扱いなので呼んでいない。まあ、ここは当たり前だよね。

「前回のイベントはどうだった?」

 これまたいつもの椅子に座って各々の戦績を聞いてみる。純生産、半生産の菖蒲とニーナに関してはそこまで順位が高い訳じゃなかったが、他の連中は総合順位が表示される圏内にいる。相変わらずマイカの奴がぶっちぎりで上位と言うのは分かっていたが他の連中もそこそこ良い所にいるとは。何だったら陣営自体の順位が低くても個人順位が高いのもいるくらいだ。
 で、1人1人の順位を聞いたうえで大きくため息を吐きだすと共に、例の件を思い出して覚悟を決める。

「今回のイベント、私だけ成績が振るわなかったわ」
「結構派手に動いてた割にか」
「あたしみたいに前線出張って、ずーっと戦闘って訳にもいかんし、しょうがないんじゃないのぉ?」

 特に成績の良かった2人に言われるとまた、それなりにイラっとする。成績順で言えば、マイカ、十兵衛、バイオレット、バイパー、ニーナ、菖蒲、私の順になる。とは言えバイパーとニーナの差がかなりある上に、菖蒲と私の差がどれくらいかもわからん。ただ一つ言えるのは生産キャラ以下の動きしか出来なかったという事だ。

「こう、まあ色々聞いたわけだけど、1つ決めた事があってさ……ちょっとまあ、それの話含めて集まって貰ったんだわ」
「全員が上位陣になるように共通装備でも作るのか?」
「大方クラン資金の使い道って所だろ、大したこと無い話なら俺様は行くぞ」
「……座って聞け」

 いつもよりもトーンが低いのを感じたのか、ニーナの奴が黙り、素直に言う事を聞く。流石にいつもの雰囲気ではないのを感じたのか、他のクラン員も私の様子を見ながら同じように黙って話を聞き始める。

「イベントの結果やお前らと戦ってよくわかった事があってだな、私が弱いって事だ」

 何をどう考えて弱いと言ってるんだ、なんて感じで見られるがそのまま言葉を続けていく。

「バイオレットと十兵衛には結果的に勝ててはいるが、ほぼ初見殺し。バイパー、ニーナ、マイカには手も出なくて、ボコボコにされたのは事実だろ」

 確かに、と納得したような声が漏れる中、ぽつぽつと今回のイベントに関しての事実を並べていく。
 
「ここまでクランが大きくなったのはお前らのおかげだし、それぞれ私の思い通りに動いてくれてたのも確かってのは知ってるけど」

 手を組んで、親指だけをくるくると回しながら言葉を探す。
 こういうのは苦手なんだよ。

「それを踏まえた上で、私が弱くなったってのもお前らが原因になってるんだよ」

 少しだけ伏目がちに、なおかつ誰とも視線を合わせないようにしながらぽつりぽつりと。

「だからこそ、私が私であるために、クランを解散しようと思う」
「……本気だったか」
「ええー、クランハウスとか三姉妹どうするのー?」
「そうだ、この場所もそうだし施設含めてかなりの額を入れてるだろ、何も解散ってのも」
「あたしはアカメちゃんが決めたなら何も反論しないけど」
「深刻そうな顔してそんな事考えてたのかてめえ」
「自分の作業が無くなるのは寂しいですが」

 各々反応を返しつつ、ぎゃあぎゃあと騒ぐので、少しばかりそれに耳を傾けるが、私の決心が揺らぐことが無いと知っているはずだ。だからと言う訳ではないが、それぞれで文句を私にぶつけ続ける。

「まあ、まて……アカメがこうなったら折れないのは全員知ってるだろう」

 十兵衛がとりあえず年の功なのか、長い付き合いなのか分からないが周りを押さえて、その場を仕切り始める。

「解散はダメだ、儂の酒造所もあるし、菖蒲やバイパー、ニーナの生産拠点にもなってるだろう?」
「知ってる」
「……だから、出ていくのはアカメだけだ、クランの譲渡をしてお前だけ抜ければいい」
「いや、うちの管理を全部やる奴なんていないでしょ」

 何て事を言えば我先にと手を上げて一言「俺様がやる」とニーナが私の前にやってくる。

「こんな快適なクランハウスがあんのに俺様が手放すわけ無いだろ、てめえがやってる時よりも儲けてやるから、権利譲渡しろ」
「だったらあたしも欲しいなあ、帰る場所って必要だしぃ」
「俺もやれるな」
「おねーさんのいない間くらいならいいかなー」
「自分も問題ないですね」
「……だとよ、どうする、アカメ」

 全員手を上げてくるってのは予想してなかったな。

「私たちはクランマスター、アカメ様の決定に従いますので」
「右に同じく」
「左に同じく」

 三姉妹の方も私の少し後ろで決定に従いますと文句も言わずに私の決定待ちになっている。
 そんな状態からクランハウスのメニュー画面を出して、クランの権限、つまるところクランマスターの地位をニーナに渡す。

「てめえが帰ってくる場所がないくらいにでかい所にしてやるから覚悟しろよ」
「楽しみにしてるよ」

 そう言いながら、いつもの様に口角を上げた笑い顔を見せながらクランの脱退をする。
 
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