最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
487 / 625
18章

456話 バイト

しおりを挟む
 そういやガンベルトも駄目になってたの忘れてた。
 インベントリを開いてあれこれアイテム出してリロードって、滅茶苦茶手間と時間、ついにで言えばもたつきも発生するからよろしくなさすぎる。軍隊があれこれとポケットやらマウント出来る物、リュックサックを持っているいる理由がよくわかる。

「接近戦に弱いのも、ARの欠点よね」

 ジャコンとレバーアクションをすると共に薬莢を弾き飛ばし、次の獲物を狙う。
 久々に西エリアの1-1に来て雑魚相手に銃の具合を確かめるなんて、本当に初期の頃を思い出す。あの時は接近戦が出来なくて銃そのもので殴ったりしたっけか。

「まー、それもスキルが無い時の話なんだけどさ」

 初心に戻って犬相手、しかも複数の奴に手を出したわけだけど、やっぱりスキルとステータス補正で大分動けるようになるってのを実感する。が、スキルとステータスを上げた所で攻撃力の大半は武器依存になるので、レベル差がかなりあるってのに結構殴ったり撃ったりしなきゃならない。

「資金の調達、装備の更新、レベルアップ……突き詰めりゃこの3個か」

 飛びかかってきた犬に対してARを構えて2射。いつも通り1発が囮、2発目が本チャン。避けた先を狙って当てればいつもの様にポリゴン状に消失していくので、またレバーアクションで排莢と次弾を込め……る前に、次のが襲い掛かってくる。なのでバックステップで軽く距離を取りつつ片手でぐるりと銃を回してレバーアクション。あー、これもうちょっと銃身詰めないとスムーズに出来ない。ついでに言えば銃剣を付けてたら自傷ダメージも入りそう。

「やっぱり実戦で使ってなんぼ」

 次弾を装填した所で飛びかかられるので、銃本体をぐるりと回し、ARの銃身側を握ってフルスイング。ぎゃうっと情けない鳴き声を聞いた後、もう一度ぐるりと回して構えなおしてからガシャガシャレバーを動かし、連続射撃で仕留める。

「いっちょ上がりっと」
 
 ふいーっと一息つき、がしゃがしゃと残った弾を抜いてから10発分を装填し直し。これ撃った弾の分考えなきゃいけないのちょっと手間だな。チューブマガジンだから増設するのも難しいだろうから、使っている間に残弾を体に叩き込まないと。

 正直な所、銃弾1発分の稼ぎにもなってないから思い切りマイナス行為ではあるのだが、慣れていない銃で稼げるような所に行くのは、これからの課題だし、上に行けば普通に火力が足りなくなる。

「レバーアクションはがっちゃがっちゃ出来るから楽しいけど、慣れないときついなあ」

 トリガーさえ引かなきゃ発射されないのでレバー部分を動かして具合を確かめながら少々考え事。今まで思いついた事も無かったけど、油差したらスムーズに動いたりするもんかね。変な所でリアリティいれてくるから可能性はありそうなんだけど。

「ま、思い付いた事はなんでもやるか」
 
 ふいーっとARを肩に担ぎながら一旦エルスタンに戻ろうかと考えて街の方に向かう。
 そして戻っている道中、初心者らしいプレイヤーがわーわーと騒ぎながらモンスターを戦っている様をちらっと見たりしながら戻っていく。それにしてもプレイヤーも結構増えた気がする。一時的にだけど私以外のガンナーが減った何て事もあったらしいけど……結構早い段階で人口は持ち直したし、難度が高いから敢えて選択している人もいるとか。

「まー、増えた理由は私じゃなくてポンコツなんだろうけど」

 視聴者数の多い配信者の影響ってやっぱでかいわ。今度ポンコツの奴にあったら褒めてやるか。

「活気があって人口が多いゲームってのは良い事なんだけど、マップ調整は都度するんかねー……」

 そんな事を考えつつ、騒いでいる低レベルのプレイヤーを眺めながらのんびりとエルスタンに。こういう時に帰還アイテムを使ってさっさと戻るべきなんだろうけど、普通に購入しておくの忘れてたわ。銃弾と銃本体買って満足する辺り、中々に間抜け。

 とりあえず使い切ったアイテムやらなんやらを補充して、可及的速やかに用意しなきゃいけないのはガンベルトか。ほんと、これを作った私天才的だったんじゃね?最初は小物入れのポーチで雑にパイプ銃を使っていたってのになあ。

「ちょっと振り返りつつも、改めて装備や装飾品を見直すのもいいか」

 うんうん、初心に帰るって大事。レベルが上がったりゲームに慣れてくると忘れる事や気にしなくなって雑になるところもあるし、この機会に色々と見直そう。

「たまには後ろを振り向くってのも悪くないしな」

 鼻息交じりにあれこれ考えていると、視界に入ったモンスターを素早く射撃、レバーアクションで薬莢を飛ばすと共に次弾の準備をするが、追撃は無し。倒したモンスターの向こう側で尻もちを付いているプレイヤーが手を振ってこっちにお礼を言っているので手振り返す。

「私も甘ちゃんだわ」

 自分自身を鼻で笑いつつ帰還。





 エルスタンのいつもの定位置、中央広場のベンチに座ってメニューをぽちりながら今後の事を整理する。とりあえずやらなきゃいけないのは金策。それとあれこれ人任せにしておいたこと諸々。合金製の銃やら特殊弾、アタッチメント開発、レベリングに……って事を考えてみたら結構忙しいわ……と、言ってもまずは。

「金だよなあ」

 今のとこ出品したのが捌けている状況ではない、こつこつって訳じゃないけど、少しだけあった貯蓄も銃と銃弾で吹っ飛んだし、財布の中身はすっからかん……あれ、金策ってどうやるんだっけか?よくよく考えてみたら真っ当な金策ってやってきてないわ。火薬に酒、銃弾とアタッチメント、需要が狭いところを狙って売り払いまくって、未発見の情報を流して高額な情報量ふんだくって……。

「やってる事がカタギじゃねえ」

 やっぱり改めてこのゲームしっかりやった方が良い気がする。

「悩み事ですか」
「金が無くてなぁ」

 不意に声を掛けられてくる方に軽く顔を向ければ、ブルーメタリックのがっちりした鎧を着こんだシェパード顔が近くに立っている。そういえばこいつの事久々に見た気がするわ。

「幾らくらい欲しいんですか」
「そうねー……5000兆円くらい?」
「使い切るのが大変そうですね」

 はっはっはと楽しそうに笑っている犬野郎にため息を吐きだしつつ、ベンチの背もたれに体重を掛けてだらっと足を延ばす。

「いつもは自宅に引きこもってると聞いたんですが、此処にいるって事は相当参ってるようで」
「ん-、ただの気まぐれだって」
「クランも抜けて気ままにやっているらしいですし……どうです、うちにきません?」

 そういえば最初の頃も誘われたっけか。
 
「ガチでやってる同士だから良いけど、私のやりたい事とあんたのやりたい事が噛み合ってないじゃない」
「最近うちのクランでもガンナーが増えましてね、教育係をやりません?」
「ベテランガンナーくらい抱えなさいよ」
「トップガンナーが欲しいんですよ」

 私の座っている隣にがしゃっと鎧の金属音をさせながら座ると、メニューを開いてクランメンバーの一覧を見せてくる。って言うかすげーな、文字通り大手のクランなのでメンバーの数が3桁近いわ。

「よくもまあ集めたもんねぇ……」
「そういう訳でどうです?」

 ぐいぐい来るなあと思いながらも、ちょっとやってみたいという感じもあったので、犬野郎のクランに一時的に所属する事に。

「講習料は高いわよ」
「後で請求書送りますね」

 冗談なのかマジなのかちょっとわからん。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...