最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
500 / 625
18章

469話 久々のダンジョンアタック

しおりを挟む
「どけおらぁ!」
「おー、怖い怖い……」

 目の前の海鮮系に対して銃身を握った状態でのバットスイング。
 思い切りストック部分が海鮮系にヒットして、そのまま洞窟壁面に「びだぁん!」と音を立ててぶつかっていく。

「ったく、此処までがきつすぎだっての……」

 粘液を振って飛ばして銃を肩に担いで一息。海産物系のモンスターって何でこうもぬるぬるするかな。もうちょっと火山が絡んでくるから硬めの敵が来るかなと思ったんだけど、そんな事はなかった。どちらかと言えば深海生物チックに変貌していくとは全くもって予想していなかった。ただただグロイ造形の海鮮系が増えるのは私としてはひたすら苦痛。

「まだこれで先があるんですから、我慢するしかないですよ」
「ああもう、さっさと素材取ってこんな生臭い所抜けたいってのぉ!」

 そんな叫びをあげていれば新しいモンスターがわらわらと湧いてくるので新調したARのマガジンを入れ替え、細巻煙草を咥えて火を……つけるにも湿気てる。ああ、くそ、ここに来るまでこんなんばっかだよ!

 此処に来るのはノルマのボス討伐を済ませた後に、犬野郎が付き合うと言ってきたのでそのまま一緒になって南側のエリアに進軍の強行軍。以前潜ったダンジョンは南2-3だったが、今回の海底火山は南5-1になる。って言うか久々にエリア攻略みたいな事をしてきたけど、南の海部分って基本的に水中かダンジョンにしかモンスターが出てこない上に襲って来ないので道中はひたすら苦痛な海上移動だった。なんだったらエリアが進むごとに波の強さが上がっていって、ひたすら荒波に揉まれる酔う環境に放り込まれるとは思わなかった。

 して、そんな荒波に揉まれに揉まれてようやく海底火山ってダンジョンがある島に辿り着いて、ダンジョンアタックを開始したらしたで一般的な海鮮系モンスターよりもグロいわきもいわ強いわの3段構えモンスターが待ち構えている。ついでに言えばダンジョンのギミックも入り込んだ海水でびしょぬれになるわ、火山の地熱で熱い箇所があるわ、環境的なダメージがかなり多いときた。

「こんな所にまで来て成果無しだと運営が嫌いになるわ」
「そこまでですか……?そもそも出てくるかどうかも分からないのに来たじゃないですか」
「わかってるっての」

 減ったHPとエンチャントと装填で使いまくっているMPをポーションで回復しつつ空瓶を投げ捨てつつ、片手でのAR掃射で飛び散る魚肉を見ながら侵攻を続ける。ダンジョン攻略に関しては犬野郎が前、私が後ろなので、とにかくケツを蹴り上げて無理くりにでも強行突撃が出来るってのがいい所。
 
「此処のダンジョンってうちのクランでも完全攻略してないんですよね」
「情報クランの連中と連携してるんじゃないの?」
「してますけど、ここって手間と時間が掛かってるんですよ、道中もあんなんでしたし」
「あの荒波をよくもまあ、あのボートで突破出来たわ……」

 手漕ぎの2~3人乗りボートで来れるもんだわ、ほんと。
 
「で、時間が掛かるのは道中がきついからそうだけど、手間って何よ」
「それはですね……おっと」

 射撃と前進を続けている最中、犬野郎が急に立ち止まり私の事を抱えこむと共に盾を構える。一瞬何をやってんだ、と思った途端に壁面から溶岩が噴き出してくるので、それを盾で防ぎながら収まるのを待つ事に。

「これ?」
「そうですね、直撃すると私でもやばいんですよ、これ」
「まだ2階にも行ってないのにこんなんあるんかい」

 じわじわと熱さが伝わる中、押しのけるようにして私を抱えたままバックステップ。この高熱を耐えられる盾を持ってるってのもすげーな、こいつ。
 してバックステップで一旦距離を取って、溶岩が噴出してた所から少し離れて一息。辺りは高熱にさらされるわ、水蒸気で湿気るわ、冷えるのに時間が掛かるのでルート限定されるわ、確かに言われた通り、手間が掛かるわ。

「こういう地形トラップの出現がランダムで、ルート変化もあるので手間なんですよね」
「何で来る前に言わないかな?」
「行くぞ!船出せ!案内しろ!ってまくしたてたのは誰ですか」

 そりゃー、私だわ。

「そりゃそーだけどさあ……」

 へいへいすいませんねと言いつつ、インベントリからグレネードを出して道を塞いだ溶岩部分に投げ込むと共に犬野郎を盾にして爆破。辺りに溶岩を飛び散らせつつ、道開けさせるとさっさとそこを通る。湿気っていても高温の所に突っ込めば爆発するもんだな。

「こんな調子で前に進むんですか」
「だってこうでもしないと海鮮が迫って来るじゃないの」

 吹っ飛ばして溶岩が元に戻る間に通り過ぎ、その道が塞がると共に、追いかけて来ていた海鮮がそのまま溶岩に突っ込んで行って焼かれていく。焼き魚の臭いってあんまり好きじゃないんだよね。何て言うかどうしても生臭いって言うか、あの独特な感じよ。

「幾ら無限沸きだからって一直線に突っ込んでくるのこーわっ」
「動いてるものに突っ込んでくる感じですね……光物に突っ込んでくるダツもいますし、まあ」
「そいつは深海にはいねーだろ」

 今の所、水陸両用と言った感じに高速で這う、歩行する気持ち悪い移動方法の奴しかいないので問題ないが、これが飛んでくるってなると話が変わってくるんだが?マップ的にも洞窟だし、深い水溜まりのような所から飛び出てくるってのはあったが、壁面から流石に壁を貫通して飛んでくるのは現状ではいない。溶岩が噴き出してきたのはモンスターじゃないからノーカン。

「あー、でもこういうめんどくさい所に良い素材がある可能性は高いからなあ」
「一応2階の終わりくらいまでは進行しましたけど、物珍しい物はありませんでしたよ」
「結局深い所まで行くのは確定だって」
「いつも、こんなに行き当たりばったりなんですか?」
「そーだよ?」

 マガジンをかしゃんと音を立てて入れ替えてから先の方を眺める。
 もっと変な海鮮系がやってくると思うとちょっとげんなりするけどな。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...