最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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19章

508話 撃つのは撃たれる覚悟のあるやつ

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 勝負が有耶無耶になるのは確かにストレスって言うか、納得がいかなかったけど、あんな軽めの蹴りであんなふうになるとは思わなかったけど、確かにまあ、あれで終わったらあっけなさすぎる。だからってこんな状況になるとは。

「そういう事だから、私の好きなように相手してやる」
「そうやってずるいことばっかりー!」
「これが本当の決着さ、使えるものは全部使って戦うのが、私だからな」

 確かに誰かを指示して人を使ったり、人を垂らしこんだりしているのはよく見るよ?私だってボスにあこがれて付いていった上、ライバル認定みたいなことになって、私のせいで自分のクランを抜けてこうして勝負をしているわけだし?

「不服か?」
「だって最初の約束と違うしー!」
「だろうな」

 こんな喧噪の中、あの大きい盾の裏でくつくつと笑っている……ような気がする。いや、笑ってるね。なんだったらいつものように煙草を吹かして楽しそうにして、不敵に笑いながらこっちの様子を見ているはず。そして吹っ切れたボスが楽しそうに射撃してきて、こっちのメンバーが削られる。
 中距離で撃たれると無類の強さって言うか、FPSやらTPSをやっていた経験値が高いせいでこの手の射撃戦になると本気で強い。セオリー含めての基本がしっかりしてる人で、一瞬出てきて撃ちぬいて引っ込むのはベテランの動き。

「これだから射撃戦したくなかったってのに!」
「あれこれ考えて、手を尽くしてお前とやりあおうとは思ったんだが、私の性に合わないのをシステムから突き付けられたよ」
「どういう事?」
「つまり、私の頭にT2Wが追い付いてこなかったんだよ」

 また飛び出して射撃してくるので前衛で戦っているメンバーに防御指示を出し、直撃しない様に注意させるが、それでも数人やられる。ボスと違ってファンが多いのとガチ勢がそこまでいないのがネックというか、私のクランの弱い所。強い人は何人かいるけど、それでもこんな状況でポイントポイントに配置しておかないとあっという間に捲られる。

「こっちの戦力をしっかり把握してぶつけてる感あるなあ……」

 応戦の射撃をするが、前面にいるあのでかいのがまー、硬い。大盾持ちがどっしり構えて前で防御張ってるとどうにもならないのはガンナーの悪い所。多分ボスだと逆に簡単って言いそうだけど、私にはそんな器用なことは出来ない。大体跳弾の角度を目視でさくっと確認して当てるってものっそい難しいんだけど?

「ももえさん、両翼は拮抗してますし、このままあいつを倒しに行った方がいいんでは?」
「あの硬い前衛を突破するって前提なんだけどね、それ」
「最終的に勝てばいいのなら、自分たちを盾にして前に詰めればいいですよ!」

 献身的なのは良いんだけど、それはそれで危ないというか、最低限射線を自分で切れるくらいの技量がないとさくさくっと撃ち殺されてしまう。だから下手な力押しをする場合は一気に行って流れを掴むしかない。
 
「……自分で集めたメンバーを使うってのも、自分の力って言ってたね」
「やりますか?」
「やる、向こうがそうくるならこっちもする」

 ぱんぱんと頬っぺたを叩いて気合を入れて状況を改めて確認。人数が少ないとはいえ、しっかりとした連携……連携?大体ボスが集める人材ってのはどこで引っ張ってきたのかってくらい強い人が多いんだけど、両翼は好きに暴れて前線というか回り込めないような立ち回りにはなっているけど、たまに怒号が聞こえるから、ボスも制御できてない?
 たまに両翼を抜けてボスのほうに行けるのもいるけど、もう一人後ろで構えているみたいで、梅雨払いもしっかりしている。やっぱりこっちは質という部分でかなり劣っていて、数でそれを補っている感じが否めない。

「盾持ちの前衛職の人と遠距離攻撃できるのを集めて。両翼は無理な攻めはしないように、突っ込んでやられてるのを控えるように」

 指示を飛ばし、無策であれこれやっているうちのメンバーに行動指針を出しながら迎撃の準備を進めていく……んだけど、急に攻撃が飛んでこなくなった気がする。

「……なんかやばい気がする」

 喧噪の中、どっしり構えているあの大盾の人を見ながら辺りをきょろきょろと見回す。流石に結構な人数がまだこっちにはいるし、変に突っ込んできたり単独で強襲することは絶対にしないはず。いきなりグレネードを投げたとしてもボスの使っている奴は導火線方式だから目にも耳にも聞こえる。

「ボスの動向は!」
「分からないです、急に攻撃をやめたみたいで」
「大盾、多数の敵、回復役……急に攻撃をしない」

 あれこれ頭の中で考えてボスがやってきそうなことを考える。
 大体こういう時のボスは周りに任せて、自分が一番時間の掛かる事をするとしたら……。

「みんな、移動するよ!」

 そういい、正面からの移動を開始した途端、閃光が走り、正面にいたメンバーの3分の1が吹っ飛ぶ。やっぱりやってくると思ったし、こういう時にああいう無茶苦茶なスキルがあるのほんと、ボスって感じ。

「私の所にいただけあって、しっかり撃たせてはくれんか」
「ばーか、ボスのばーか!」
「そんな暴言を吐くような子に育てた覚えはないんだがなぁ」

 大盾を持った人の後ろから、バカでかい砲身をどっしり構えたボスがにんまりと笑いながらこっちを見ている。そしてほら、やっぱり煙草を咥えて楽しそうにしている。散々っぱら見てきたよ、後ろで控えてあの、このゲームにおける最悪最強のスキルをぶっ放すの……あれ、どうにかならんかな。

「さー、全部出して楽しもうじゃないか」

 ガシャンと砲身を放り出してから銃を抜いて撃ってくる。
 多分次くらいにはグレネードがばかすか投げられるんだろうなあ。
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