最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
617 / 625
22章

581話 火力とは思い切りの良さ

しおりを挟む
「それでボス、いい加減に切り上げてくれないかな!」
「折角具合がよくわかってきたってのになあ」

 そんな事を言いながらボスが右手首を軽く捻ると薬莢が飛ぶ。それを見て、銃を構え直して突撃しながら接近戦を仕掛けるが、義体に換装し始めてるボス相手にやるのは結構大変。そもそもあのバトルジャンキーのマイカ、刀狂いのバイオレット相手に近接戦して引けを取らないくらいに強くなってる時点でげんなりする。

「あー、もうー、完全無欠になってどーすんの!」
「強すぎると面白くないってのは、縛りプレイでもしてろって話よ」

 懐に潜り込んでガンカタでの近接戦闘、どこか1発当たるだけでも固定ダメージと通常ダメージの入る一撃必殺とは言わないけど、強い通常攻撃を押し付けて攻める……のだが、そもそも向こうもガンカタを使うようになっているし、しこたま戦って見てるので、対策やら対応はお手のもの。銃口を相手に向けるため、フェイントを入れたり、銃本体を打撃武器扱いで相手の攻撃に合わせて出したり、引っ込めたりしつつ手を緩めないのだが。

「流石にずっと見てるだけあって、見切ってきた」
「そりゃそうでしょうとも!」

 何度かガチャガチャと銃同士をぶつけ合ったのち、めちゃめちゃシンプルな喧嘩キックが飛んでくるので、バックステップで飛び退きながらバシバシと連射。蹴りを出した瞬間の硬直を狙ってるので、2、3発は当たったのだが、それ以上は身を屈め、義手で防御体勢を取られると、金属音が響いて弾かれる。

「ふーふー……やっぱそれ、ずっるう!」

 息を整えつつ、撃ち切ったマガジンをこめ直しながら、ボスをしっかりと見据える。当たったところはしっかりドレスに穴が空いて、周りを黒く焦がしている。今の所直撃したのが胴体のみ、頭はしっかり防御しているし、足と腕もいじり終わってるから本当に生身の所に当てないとダメージまともに通らなさそう。

「お前も機械の体にしないか?」
「その誘い文句はやばいでしょ!」

 防御姿勢の状態を維持させるために、そのまま連射をしながら回り込んで、背面から一撃。の所、脇に回していたボスの掌から光線が飛んでくるので、上体を反らしながら滑りこみ、接近して更に連射。流石にこんなに撃ってれば防御一辺倒になるので、そこを細かく突き上げて攻めるに限る。

「そのうち空飛びそうじゃん!」
「流石にそこまでの超化学はないやろ」

 一度防御に回ると中々攻めに転じにくいのがガンナーの悪い所、そして弱点をねちねちつくのはゲーマーとしての良い所。不意打ちやらなんやらはボスのお得意芸だけど、こっちもこっちで色々使ってるというか、新しいスキルをさっき取ったりしたから最初よりもかなり肉薄できている。具体的に言えば、スローモーでじっくり動きを見てぎりぎりで避けて反撃ってだけだけど、これ凄い有能。

「スーパーでホットになれるスキルって良いね!」

 首を傾げて何を言ってるんだという顔をしているボス、流石に義手で防御を固めているとはいえ、流石にきつくなってきたのか、何処からか出したショットガンを向けてくるので、スロー状態で銃口を見てから避けるの余裕で回避。するのも結構大変だったりするけど、それくらいないとしんどい。

「さっきの休憩中になんか変なもん取ったろ、お前」
「どこぞの義体野郎がよくやる手ですぅー!」

 こっちのリロードタイミングに合わせて向こうが距離を取るのはやっぱり上手。幾らスローモーだからって使ってる本人が加速しているわけじゃないから追いかけられない時は追いかけられない。

「やっぱり知らんスキルを使ってる奴と戦いのは楽しいから、こっちも新しい物を出さんとな」

 そう言いつつ、射撃をこっちにかましながらしっかり距離を取ってじっと見つめ合う。と、思っていたら急に両手を前に出し、手首を合わせると銃口の様な形に手を縦に広げる。

「大艦巨砲主義ってのも悪くないよなあ?」

 機械音が響き、義手の展開が始まる。バキバキと嫌な音、何かしらのチャージ音、こういう時にやばいのはよくわかってるし、あの手の攻撃は攻撃までが遅い。だから発射の瞬間を狙いスローモーを使い、避けたら接近して叩きこんだら倒せるはず。大丈夫、反応は悪くない。こっちも死ぬ程Agiを上げてきたし、足回りのスキルもある。だから……掛かって来い。

「そういう、やるぞって顔、嫌いじゃないな」

 にんまりとギザ歯を見せて笑う。ああいう時のボスは危険すぎる。いつもこっちを驚かせる何かを持って、確実なものを使ってくる。
 
「そのやばいのは止めさせてもらいますけどね!」

 ああいうチャージ系の攻撃は大体発射までに時間が掛かるのが相場。しかもFWSもやたらと時間が掛かって実用性がないって言われてたし、急に土壇場で使おうってのは……あれ?

「そういうのは、もっと早く手を入れないとダメだぞ」

 瞬間、閃光が迸るのでスローモーを発動して咄嗟に避けようとするが、弾速が高すぎて避け切れない。バカでかい光線が飛んでくると思っていたのだが、発射した瞬間の閃光だけでかいだけで物自体はかなり細い。スローモーの状態で防ごうとあまり使わないガンシールドを構えつつ腕で防御しようとすると、あっという間に貫通して自分の胸を貫いていく。

「使い勝手、良し」

 倒れながら、そんな事を言っているボスの方を見れば、横に広げた手、そして義手から煙が上がり、バラバラになっているのが見える。コスパの悪いスキルばっかり使ってるよ、マジで。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...